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ノーベル平和賞受賞団体のメンバーが語る「安全保障のリアル」とは

アジアにおける人間の安全保障
【文化構想学部・文学部設置科目】

政治経済学部 1年 沈 意境(ちん・いきょう)

安全保障と言うと、一般的には“国家”の安全保障のことで、軍事力や防衛を指すことが多いと思います。しかし、今日、アジア地域は従来の国家の安全保障では解決できないさまざまな課題を抱えており、紛争や環境破壊などを含んだ“人間”の安全保障も視野に入れて議論が進んでいます。私は、2020年度の春学期に履修した「アジアにおける人間の安全保障」で、国際団体のメンバーの方たちの実務経験を聞いて、安全保障への理解を深めました。

この授業は、金敬黙先生(文化構想学部教授)と、飢餓のない世界を目指して活動している国連の食糧支援機関である、「国連世界食糧計画(WFP)」の元アジア地域局長の忍足謙朗先生(非常勤講師)、そして「核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)」の国際運営委員を務める川崎哲先生(非常勤講師)がそれぞれ5回ほど担当する授業です。WFPは2020年に、ICANは2017年にノーベル平和賞を受賞した団体であることからも、とても豪華な講師陣だと言えます。今年度の授業は、動画視聴とリアルタイム配信の両方で行われました。基本的には、金先生による理論的な話を動画で視聴し、リアルタイムの授業で忍足先生と川崎先生によるケース分析や実務経験の話が展開されました。理論と実態が互いに補い合う内容で、とても充実した授業でした。

特に印象的だったのは、忍足先生が提示した1枚の写真です。その写真に写った北朝鮮に暮らす10歳ほどの子どもたちは、一般的な5、6歳児の体格で、発育阻害の深刻な様子が伝わってきました。食糧不足は子どもの学習能力だけでなく大人の労働生産性にも強く影響を及ぼし、経済発展への負の作用は私たちが想像するよりも厳しいとのことです。

また、忍足先生が紛争地で食糧支援に取り組む話を聞いて心を動かされました。フィリピンの紛争地での食糧支援を実施するため、現地のイスラム武装組織の指揮官と交渉したこともあったそうです。一方で、支援する地域がWFPの定める標準に達したら、たとえ貧困に苦しむ人たちがまだたくさんいる現場を目の当たりにしても、感情に支配されず、支援の停止を決めざるを得ないのだそうです。なぜなら、食糧問題に苦しむ人は世界中にいて、危機的な飢餓状況に陥る恐れのある他の地域にも支援を届けなければいけないからです。忍足先生の経験談を聞いて、食糧支援は決してただ「食糧を送る」ことではなく、交渉力と決断力もかなり重要になってくる事業であることを感じました。

忍足先生はWFPのアジア地域局長として多くの国・地域への食糧支援に携わりました

授業中に先生方と学生とが交流する機会もたくさん設定されています。中には国際組織への就職を希望する学生もいて、先生方にキャリアに関して質問する場面もありました。この授業はオープン科目にも設定されているので、学部や学年、国籍などが異なる多様な学生たちとのディスカッションが繰り広げられ、私自身とても勉強になりました。特に、金先生は中国人である私や韓国からの留学生に母国の視点からの感想をシェアさせることで、学生たちがアジアをより全面的、多角的に理解できるように努めていらっしゃいました。国際組織に勤めたい方、アジアにおける諸問題の実態に興味がある方など、一度履修してみませんか。

写真左:核兵器禁止条約交渉会議(2017年3月)で発言する川崎先生(手前)
写真右:2017年、ICANに贈られたノーベル平和賞の賞状とメダル

講演会「平和をつくることについて語るときに私たちの語ること」

日時 2021年1月15日(金)19時開始
場所 Zoomウェビナー形式
参加URL https://zoom.us/j/91691117707?pwd=SEpwbVJzNFUyWk9sNVhqYlUvYTZKQT09
※当日の18時50分からウェビナーサイトにアクセスできます

主催 早稲田大学文化構想学部・社会構築論系
協力 NPO法人ホロコースト教育資料センター、THE LEADS ASIA、国際交流NGOピースボート

金敬黙教授が総合司会を務め、忍足謙朗氏、川崎哲氏らがゲストとして登場します。
詳細は文化構想学部Webサイトをご確認ください。

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