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なぜ日本に来たのか? 留学生にとっての比較法研究とは

比較法は、ただの翻訳ではない

大学院法学研究科 博士後期課程 1年
蕭 丞晏(しぁお・ちぉんいぇん)

民事訴訟と言うと、ドラマ『SUITS/スーツ』や『リーガルハイ』などのイメージが浮かぶ人もいるでしょう。私はその民事訴訟法を専攻し、「法廷(裁判官の面前)で誰が当事者として訴訟を行うことができるのか」を研究しています。特に、日常生活においては法人でない団体が多く存在し、取引を行っています。こうした団体が法律上の紛争に関わる場合、どのような要件を満たすと訴訟を行う資格を持つのか。資格があるとしたら、具体的にはどのような事件の訴訟なのか。また、裁判が終わった後、誰に対して効力を及ぼすのか。団体が訴訟に負けたら、どうやって団体の財産の差し押さえを執行するのか…。これらの問題は相互に関連するため、広く分析しなければなりません。

このような問題を解決するために、私は比較法研究というアプローチを採っています。私の出身である台湾の法律-特に民事訴訟法は、昔から日本法(日本の法律)の影響を強く受けています。法人でない団体をめぐる問題が、台湾においても激しく議論されているため、日本法を研究することで台湾法上の難問をある程度解決できると考えています。しかし、もっと掘り下げていくと、日本法の制定にあたっては、ドイツ法を参考にしていたことが分かりました。つまり、ドイツ法、日本法および台湾法は垂直的継受関係にあるのです。そのため、日本法を研究する上で、ドイツ法に対する知識もあると、より理解が深まるのですが、それにはドイツ語能力を身に付けないと、研究も進められません。

そこで私は、日本語で授業を受けながら、もう一方でドイツ語の勉強もしています。ドイツ法学文献を講読するゼミにも参加しており、今ではその教材を予習することが日課になっています。時間はかなりかかりますし、特に日本語が母語ではない私には、ドイツ語を日本語に翻訳することがつらいと感じることもあります。しかし、文章を理解できたときには達成感に満ちあふれ、それがとても楽しいのです(もちろん、完全に文章の意味を間違えて、ゼミで指摘されたことも多いです)。

ドイツ法文献を読むときのデスク。単語を覚えるのが苦手なので、Excelで単語帳を作成しています

このように複数の言語を用いて研究をすることは、恐らく法学以外の分野にもあると思いますが、法学ではより顕著です。そのため、「比較法研究って翻訳研究じゃない?」との問いを受けたことも多く、実は私自身もそう思ったことが何度もあります。しかし、研究を進めるうちに、「違う、そうじゃない」と確信しました。外国語能力を習得することは、あくまで外国語で記載される文献の背後に、どのような思想あるいは目的が潜んでいるのかを探求する手段にすぎません。表面上の言葉に沿って思い込んだら、中身を看過してしまい、結局、真実を見つけられません。それは、学問の追究にとって望ましくないことでしょう。

この点について、留学も同じようなものと言えるのではないでしょうか。確かに今は昔に比べると外国語の文献は入手しやすくなっており、わざわざ海外へ行って研究する必要もなさそう、という考え方を持つ人もいます。しかし、現地に行かずに単に手元の資料のみに基づいて研究を進めれば、研究対象の全体を把握できず、「木を見て森を見ず」になってしまうでしょう。台湾で修士論文を執筆した際、日本法と台湾法を比較したのですが、日本法を理解しているようで全く理解していないと痛感しました。留学によって、例えば日本の先生たちと直接話すことができれば、日本法を正しく理解し、新たな視点や切り口を得ることもできると思っています。これこそが、私の日本に来た最大の理由といっても過言ではありません。

高田早苗記念研究図書館(2号館、右の建物)から帰るときに南門から見た早稲田キャンパス。今はコロナの関係であまり大学へ行きませんが、なかなかきれいだと思っています

今年は、新型コロナウイルス感染拡大の影響によりほとんど在宅で研究を行っています。生活のペースが変化したことで、いろいろなことに対する視点も変わってきています。物事の表面を重視しすぎて、その裏面を無視することは、速度・実用性を求めるIT社会の現代では実はよくあることなのではと思うようになりました。このような事態を避けるために、今後も物事の本質を常に意識しながら、頑張って研究を進めていきたいです。

ある日のスケジュール
  • 08:00 起床、朝食(コーヒーは絶対必要)、身支度
  • 10:40    ゼミ(ドイツ法文献を扱う)
  • 13:00 昼食(Netflixを観ながら)
  • 14:00 論文に関連する文献を読む
  • 18:00 夕食
  • 19:00 ドイツ法文献を読む
  • 22:00 散歩、食材などの買い出し
  • 23:00 入浴など
  • 24:00 就寝

    今は在宅時間が長いので、自己流が多いですがストレス解消として料理もよく作ります(写真は鶏のニンニクしょうゆ煮込み)

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