Waseda Weekly早稲田ウィークリー

News

ニュース

スランプを脱した自転車部 小泉夢菜 目指すは全日本優勝と五輪出場

「ナショナルチーム入りして東京オリンピック出場を目指す」

スポーツ科学部 3年 小泉 夢菜(こいずみ・ゆめな)

高校時代に自転車競技で好成績を収め、トップアスリート入試で早稲田大学に進学した、スポーツ科学部3年の小泉夢菜さん。昨夏行われた「第74回全日本大学対抗選手権自転車競技大会」(インカレ)では女子500mタイムトライアルで初優勝を遂げましたが、入学してからの1年間は新生活に戸惑いを覚え、記録が伸び悩む日々が続きました。そんなスランプを、小泉さんはどのように乗り越えたのでしょうか?

――自転車競技を始めたのはいつからですか?

今年5月の「第21回全日本学生選手権クリテリウム大会」では準優勝(右から2人目が小泉さん) 写真提供:早稲田スポーツ新聞会

小学校6年生のときです。5歳下の弟が小学校1年生から自転車競技を始めて間もなく、試合で賞状をもらっているのを見て、「そんなに簡単に取れるならやろうかな」と思って始めました。父親が自転車競技をしていたので、小さい頃から週末に試合観戦に行ったり、レース用の自転車が家にあったりと身近な環境だったものの、それまでは自分でやろうとは思っていなかったですね。

中学生までは父親や弟と一緒に練習をしていましたが、高校からは「日本代表になりたい」と思い、自転車部に所属して本格的に始めました。実際、高校1年のときに育成選手として日本代表に入って、世界選手権にも出場することができました。

――自転車競技の魅力と、身長150.6cmと小柄な小泉さんの強みを教えてください。

練習はすごくつらいですが、風を切って走れるところが楽しいですね。私の強みは、最後のゴール前勝負で生かせるスプリント力です。スプリント力だけで見ると、大きい選手の方が筋肉量も多くて有利かもしれませんが、私は体が小さい分、他の選手より風の抵抗を受けにくいので、誰かの後ろについて力を温存し、ゴール前で一気に駆け抜けることができます。

(写真左)この日練習していた部員たちと一緒にWピース
(写真右)少数精鋭ながら昨夏のインカレでも総合3位と表彰台に上った男子選手と一緒に練習(右端が小泉さん)

――高校卒業後、プロにつながる競輪学校ではなく、早稲田大学への進学を決めた理由は?

高校3年の夏、スイスで行われた各国代表の合同合宿がきっかけです。英語ができないこともあって最初は大変でしたが友達もでき、競技以外にもいろいろなことを経験しました。

合同合宿を通して、プロになったら競輪場で走ってお金をもらうことしかできないけれど、その前にもっといろいろな世界のことを知るために大学に行きたいと思い始めたんです。その頃には大学のスカウトや推薦はほぼ終わってしまっていましたが、大学に行くつもりのなかった時期から早稲田の自転車部の鈴木監督が声を掛けてくれていて出願はしていたので、トップアスリート入試を受験することができました。本当に有り難かったです。

同じくトップアスリート入試で入学し、体操競技でリオオリンピックにも出場した内山由綺さん(スポーツ科学部3年、写真左)は大学で一番の仲良し。彼女の考え方にも刺激を受けているという

――しかし、大学入学後はなかなか結果が出ない時期がありました。その原因は何だったのでしょうか。

昨春の自転車部合宿中、19歳の誕生日をサプライズで祝ってもらったそう

高校時代はオフがほとんどなく、監督の指示に従って練習していましたが、早稲田の場合は自分で考えてトレーニングするため、初めの頃は何をしていいか分かりませんでした。

また、一人暮らしになり、大きく環境が変わったことも原因の一つだと思います。それまでは実家で何でも親にやってもらっていたので、ほとんど家事をしたことがなかったんです。大学に入ってからはご飯を食べない日もあり、試合で結果も出ない悪循環な日々を過ごしていました。

――新生活での戸惑いが競技にも影響していたのですね。スランプのような状況をどのように乗り越えたのでしょうか?

普段利用している所沢キャンパスのトレーニング室では、主に上半身の筋力アップに励む

マネージャーだった2歳上の山本綾香さん(2019年スポーツ科学部卒)が「一緒に頑張ろう」と言ってくれて、私生活の面でもお母さんのようにいろいろサポートしてくれたことが大きかったです。お料理や掃除など、小さなことを一つ一つやり始めて、徐々にできるようになっていきました。

競技面では、今年3月から自転車部OBの岩田宗也さん(大学院スポーツ科学研究科修士課程1年)に練習メニューを1カ月単位で組んでもらい、科学的に考えられたトレーニングを積むことができるようになりました。また、埼玉県から「ドリームアスリート」に選ばれて、ウエイトトレーニング指導や心理サポート、栄養サポートを受けています。さまざまな人に支えていただきながら、状況が改善していきました。

――そうして、昨年8月の「第74回全日本大学対抗選手権自転車競技大会」(インカレ)で初優勝できたんですね。今後の目標はインカレ2連覇ですか?

昨夏のインカレでは、女子500mタイムトライアルで優勝、女子チームスプリントで準優勝を飾った

高校生の頃は何の試合に出てもほとんど勝てていましたが、大学に来ていきなり勝てなくなってしまったので、昨年インカレで初優勝できたときは「やっとか」とホッとしました。

今年は8月のインカレ2連覇も目標ですが、その後の9月に行われる「全日本選手権自転車競技大会トラック」で優勝したいと思っています。その大会には、大学生だけでなく日本代表選手も出場します。速いタイムでゴールできれば、ナショナルチームのコーチの目に留まり、東京オリンピック出場も夢ではありません。このまま練習を続けていけば可能性はあるので、とにかくいいタイムを出せるように頑張りたいです。

――卒業後の進路と将来の夢を教えてください。

家族で旅行したフィリピンのボホール島

卒業後は競輪学校に入って1年間学び、競輪選手になりたいと思っています。高校卒業後に入る人が多いため遅いスタートになりますが、大学に来て本当によかったと思っているので、後悔はしていません。競輪学校卒業後、無事に選手になれたら、3年以上は活躍したいです。

その後は自転車競技から離れ、海外で起業したいと思っています。場所は、今年家族で旅行して魅了されたフィリピンのボホール島です。雨が降るとWi-Fiが途切れたり、飛行機の出発も3時間遅れが普通だったりと、まだ開発されていない島ですが、海がきれいで景色がすごくいいところです。そこで輸出入や観光の仕事をしたいと考えています。

撮影:石垣 星児
第735回

【プロフィール】
埼玉県出身。県立浦和工業高等学校卒業。2016年全国高校選抜大会で3冠達成、世界ジュニア自転車競技選手権大会チームスプリント9位。第74回全日本大学対抗選手権自転車競技大会(インカレ)では女子500mタイムトライアルで初優勝(36秒700)。専門はトラックの短距離だが、気分転換にロードのクリテリウム大会に参加することもあるという。部活動の推薦で進学した工業高校では機械科で学び、つなぎ服を着て作業することもあったそう。現在は栄養学や睡眠に関する授業、コーチングのゼミなど、競技にも生かせる内容を学んでいるので、「先生の話を聞くとわくわくして、勉強することが楽しい」と語る。

早大生のための学生部公式Webマガジン『早稲田ウィークリー』。授業期間中の平日はほぼ毎日更新!活躍している早大生・卒業生の紹介やサークル・ワセメシ情報などを発信しています。

Page Top
WASEDA University

早稲田大学オフィシャルサイト(https://www.waseda.jp/inst/weekly/)は、以下のWebブラウザでご覧いただくことを推奨いたします。

推奨環境以外でのご利用や、推奨環境であっても設定によっては、ご利用できない場合や正しく表示されない場合がございます。より快適にご利用いただくため、お使いのブラウザを最新版に更新してご覧ください。

このままご覧いただく方は、「このまま進む」ボタンをクリックし、次ページに進んでください。

このまま進む

対応ブラウザについて

閉じる