中元 日芽香(なかもと・ひめか)
2023年早稲田大学人間科学部eスクール(通信教育部門)健康福祉科学科を卒業。2011年に誕生した「乃木坂46」の1期生。7作目のシングル『バレッタ』では選抜メンバーに選ばれ、以降も脚光を浴び続ける。2017年12月にアイドルとしての活動を終え、2018年には心理カウンセラーへ転身し、カウンセリングサロン「モニカと私」を運営。自叙伝やカウンセリング本を出版するなど、自身の経歴を生かした独自の活動に注目が集まる。
自分が好きな人やものを応援する活動を指す「推し活」という言葉。昨今はさまざまなメディアで見聞きするようになり、気付けばいつの間にか「推し活」をしていたという人もいるでしょう。そんな中で、「好きの熱量をどう扱えばいいの?」「推しにどこまで投資すればいいの?」と迷う人も多いのではないでしょうか?
そこで今回は、異なる立場から「推し活」と向き合い続けてきた3人の校友を招き、「推し活」について思う存分語っていただくことに。
「乃木坂46」の1期生として“推される側”を経験し、現在は心理カウンセラーとして活躍する中元日芽香さん。お笑いへの情熱を原動力に、吉本興業でのマネージャー職やアイドルグループ「吉本坂46」のメンバーとして現場を駆け抜け、今はインフルエンサーとして話題を呼ぶ樺澤まどかさん。そして、「推し活」をビジネスとカルチャーの両面から捉え、「推し活」を支援する会社を起業した多田夏帆さん。
三者三様の視点から、「推し活」の現在地と健やかに楽しむためのヒントを語り合います。
2023年早稲田大学人間科学部eスクール(通信教育部門)健康福祉科学科を卒業。2011年に誕生した「乃木坂46」の1期生。7作目のシングル『バレッタ』では選抜メンバーに選ばれ、以降も脚光を浴び続ける。2017年12月にアイドルとしての活動を終え、2018年には心理カウンセラーへ転身し、カウンセリングサロン「モニカと私」を運営。自叙伝やカウンセリング本を出版するなど、自身の経歴を生かした独自の活動に注目が集まる。
2017年早稲田大学先進理工学部応用物理学科を卒業、2019年同大学大学院基幹理工学研究科表現工学専攻修士課程を修了。吉本興業に入社し、「かまいたち」や「とろサーモン」などの人気芸人のマネージャーを担当した経歴を持つ。また、吉本興業グループに所属するタレントで構成されたグループ「吉本坂46」に加入し、アイドルとしても活躍した。退社後の現在はインフルエンサーとして活動しており、英語力ゼロでオーストラリアに滞在し、1年7カ月の記録を公開したYouTubeチャンネルが話題を呼んでいる。
2021年早稲田大学文化構想学部を卒業。2022年、推し活に関する企業のマーケティング支援とグッズ販売を行う株式会社Oshicocoを創業。エンタメ企業の企画コンサルティングを多数務める中で、自社メディアが2年でSNSフォロワー10万人を突破し注目を集める。全国でPOPUPを開催するたび、Z世代を中心に1万人を集客するなどの実績を持つ。推し活文化の解説者として多数のメディアに出演し、現在も活躍の場を広げている。
「乃木坂46」のメンバーとして活動していたので、“推される側”として推し活に関わってきました。
現在は心理カウンセラーの仕事をしているのですが、元アイドルである私の経歴を見て推し活に関連した悩みを相談される方もいます。「握手会であんなこと言っちゃったけど、推しは気にしているかな?」「いつまで推し続けるべき?」「推し仲間の行動がいちいち気になってしまう」といった、真剣だからこその悩みを聞きながら「推し活って何だろう?」と考える立場でもあります。
私は中学生の頃からお笑いが大好きで、お笑いコンビのCOWCOWさんに心を奪われていました。単独ライブのたびに出待ちをし、COWCOWさんのブログに毎日「多田(健二)くん大好きです」とコメントをしていたほどで…。当時は「推し」という言葉がなかったのですが、間違いなくあれは推し活でした。
推しへの愛が強すぎたがゆえに、吉本興業のマネージャーとして就職し、「吉本坂46」というアイドルも経験しました(笑)。なので、多様な側面で推し活に関わっていると思います。
私は小さい頃から好きなものにのめり込むタイプだったのですが、熱狂的に推し活を始めたのは、大学生の頃にタイの俳優にハマってからですね。タイの映像作品は、日本と異なる文化を象徴するように展開される衝撃かつ新鮮なストーリーが面白く、いつしか自然と演者に興味を持つようになりました。
また、私自身がコロナ・パンデミックで推し活に救われるという経験をし、さらに日本が世界に誇れる領域だと感じたこともあり、推し活をマーケティング視点で探求する「株式会社Oshicoco」を立ち上げました。現在は、日々ビジネスの観点で「推し」という概念と向き合い続けています。
私がアイドルを続けてこられたのは、ファンの方からエネルギーをもらったおかげです。ブログにコメントをもらったり、握手会で優しい言葉をかけてもらったり、私が活動する日々の原動力が“推される”ことだったのは間違いありません。
どんなに熱いパフォーマンスをしても、反応してくれる人がいなければ自己満足になってしまうのがアイドルです。ファンからの声援が、推しをスターにしているのだと思います。
その言葉を聞くだけで、あらためて「推していいんだ」と心が軽くなりますね。お笑い芸人のマネージャーをしていた私の気付きは、「ファンのエネルギーは伝播する」ということです。
番組出演や単独ライブ開催などを発表した際、ファンの方たちが喜びのリアクションをしてくれるだけで、裏方スタッフの心も一緒に高揚します。推しを盛り上げようとする熱を感じるたび、もっと良い仕事を取りたいというモチベーションが生まれているんです。
私の場合、推し活がアイデンティティーの形成につながったと思っています。私は中学生の頃から、作文や1分間スピーチなどで、大好きなCOWCOWさんのことを必ず話題にしていました。そして気付けば、人生の目標が吉本興業で働くことになっていたんです。
“自分の好き”を外に出していたら、どんどん私という人間が形作られていったのだと思います。そんな私の背中を、自然と周囲も押してくれるようになっていました。私の人生は、推し活によって決まったと言っても過言ではありません。
とてもほほ笑ましくて、すてきなエピソードですね! 推し活で樺澤さんの心が前向きになったことについて、実は客観的なデータが存在します。
Oshicoco運営の、推し活の実態を調べる調査機関「推し活総研」で「推し活を通してどんな変化がありましたか?」というアンケートを実施した際、「人生に目標ができた」「生きるのが楽しくなった」など、精神的にプラスに転じた回答が多く寄せられました。
推し活が精神的に良い影響を与えるということには、私も共感します。心理カウンセラーの立場から言えば「自分のご機嫌を取るカード」を一つでも多く持っていた方が人生は豊かになると思っています。
「今日嫌なことあったな…。でも、週末に推しのライブがあるから頑張ろう」「今日の仕事しんどいな…。でも、乗り越えたら推しとの握手会に参加できるんだ」など、つらい状況にいる自分を奮い立たせるきっかけを作れるのは、推し活がもたらすプラスの効果ですね。
推し活で人生が豊かになるのは、若年層だけではありません。40~60代の方々からのアンケート回答では「推しに会うため、自分の体調に注意を払うようになった」「長時間のライブにも付いていけるようになることをモチベーションに、体力作りにいそしむことができた」など、健康に関する答えが集まりました。世代によって異なる効果が表れる点にも、推し活の面白さがあると感じています。
共通の推しを持つ人たちだけのコミュニティーでさまざまな世代の人が出会い、一緒にライブを楽しみ、その後友達になるケースがあります。推しが軸になっているので、居住地や職業、年齢すらも関係ありません。そんな出会いを果たせるのは、推し活ならではの魅力であり、すてきだなと思います。
実は今、家族で推し活をしている人がとても多くなっているんです。例えば、おばあちゃん・お母さん・娘の3世代で宝塚歌劇団の観劇を楽しむほほ笑ましい姿も見受けられます。
私自身、父と共通の推しアーティストがいることが発覚してからは、話す機会が一気に増えたのを実感していて。世代を超えたコミュニケーションが増えるのは、推し活が私たちにもたらすプラスの効果だと言えますね。
「見なきゃ、買わなきゃ、行かなきゃ」など、熱量が高まってきたからこその「〇〇しなきゃ」という感情が、推し疲れにつながると感じています。
「推しの活躍=自分の人生」という依存に近い捉え方をしてしまうことが、自らの心をどんどん疲弊させているのかもしれません。いま一度推し活が楽しいコンテンツであることを思い出し、自分の精神状態と向き合う時間を作ってみるのはいかがでしょうか?
オーソドックスな答えではありますが、推しのスキャンダルが発覚してしまうと、「こんなに応援してきたのに、なんで?」と落ち込み、もはや「推し病み」へと感情が変化してしまうことも珍しくありません。そんな状況に陥るのを少しでも回避する方法として、「推しはコントロールできない」という前提を持っておくことが重要です。
推しにだって、調子の良いときもあれば、うまくいかないときだってある。その考えを頭に入れておくことは、健康に推し続ける秘訣ではないかと思います。
推す側もライフスタイルが変化するときがありますよね。私は大学生になって授業やアルバイトに忙殺された結果、いつの間にか推しに熱中する心を忘れてしまった時期がありました。推す側でもこのようなことがあるのだから、「いつでも目の前に完璧な推しがいるわけではない」ことを理解しておくのは、推し活を長く楽しむ上で大切なことですね。
推される側にいた者としては、推し活がただただ楽しいものであってほしいと心から願っていました。例えば、推しにお金を使うために睡眠時間を削ってアルバイトをするような状況を、推される側は望んでいないと思います。推す人と推される人、双方が幸せでなくては「推し活」とは言えないのではないでしょうか。
中元さんの言葉に共感します。私からは、「推し活=お金をかけること」ではないというメッセージをぜひ伝えたいです。もちろんお金をたくさん使うことで推しが売れ、貢献できた喜びを得られるのも推し活の醍醐味かもしれません。ですが私は、推しに“時間”をかけることこそ「愛」だと思っています。
例えば、公開されたコンテンツをしっかり視聴して温かいコメントを残すなど、お金をかけなくても推しを応援する方法はたくさんあるんです。社会人よりもいろんなことができる時間があって選択肢の多い大学生だからこそ、時間をかけて推しへの愛をささげられる“今”を楽しんでほしいですね。
私はSNSのDMを開放しているのですが、フォローしてくれている方からひどい言葉が送られてくることもあり、戸惑うことがあります。SNSにより距離感をつかめなくなってしまったのか、はたまた愛情表現と捉えればいいのか…。
それはあまりにもつらいですね。私がアイドルをしていた頃はブログが主流で、マイナスなメッセージがダイレクトに届くことはありませんでしたが…。
私が“何を言われても大丈夫な人”と思われているのかもしれませんが、いざ文章になって届くマイナスな言葉は、心に刺さってなかなか抜けてくれません。
推しに直接メッセージを届けられる時代の中で、「画面の奥には生身の人間がいる」という事実を心に留めておいてほしいなと思います。
SNSを使う際は、感情のままに書き込もうとしたその言葉を「本人を目の前にしても言えるかどうか?」と常に立ち止まらなくてはなりません。推しとの距離が近く感じられるSNSでも、お互い礼儀やリスペクトを持って交流する心持ちが必要だと思います。
確かに、SNSにおける推しとの距離感については、近くなりすぎないことを推奨したいです。もちろん発信に対する前向きなコメントは推しのモチベーションになりますし、立派な応援の一種です。ただ、推し活の醍醐味は楽しく続けられることだと思うので、コメントが義務になってしまうことは避けなければなりませんね。
その通りだと思います。SNSと距離を取るとか、スマホをいったん置くだけでも気持ちの整理につながります。自分だけでなく、推しを守るための手段だと思って、少しでも自分の心に違和感を覚えた場合は実践してみてください。
20歳前後だった私にとって、乃木坂46での日々はまさに「青春」でした。そんな青春を支えてくれたのは、紛れもなく私を推してくれたファンの方たちです。あらためて、推し活はすてきな活動であることを伝えられたらと思っています。
大学生の皆さんに対しては、推しと一緒に自分も成長していけるような、そんな尊い学生生活が送れることを願ってやみません。そして、勉強やサークル、アルバイトなど、いろいろ頑張りすぎてしまったときこそ、推しにたっぷりと癒やされてもらいたいです。
繰り返しますが、私は推し活によって人生が決定した人間です。一つでも好きなことに熱中するだけで、将来が変わる可能性が推し活にはあると思います。この言葉が大げさに聞こえてしまう場合は、「生活に少しでもプラスになるのが推し活」と捉えても問題ありません。
とにかく、“推し”という言葉にとらわれすぎず、「好きなことは好きでいいから、貫きましょう!」とメッセージを届けたいです。ちなみに私が最近している推し活は、大好きな飼い猫のステッカーを作ること。そんな推し活の仕方もあるんですよね。
私からは、推し活は「自分が幸せになるための一つの手段」というメッセージを届けたいです。推し活自体が目的になってしまうと、推しとの距離感を失ってしまったり、楽しむ気持ちを忘れたりして、自らの心が病んでしまうことになりかねません。自分が幸せになるために推し活をしている感覚を大事にすれば、きっと楽しい推し活ライフを送れるはずです。
学生時代に推し活をすると、自分の大切にしたい価値観を発見できる可能性も。自らの将来を考えるときにもきっと役立つので、推し活を通してさまざまな経験をしてもらえたらうれしいです。