最近ニュースでよく目にする「オンラインカジノ」。国内では“違法”と明確に定められていますが、スマホで簡単に利用できることから、違法と知らずに手を出してしまうこともあるかもしれません。そこで、早稲田ウィークリーレポーター(SJC学生スタッフ)が、元警察官僚、元警視庁刑事の経歴を持ち、オンラインカジノに詳しい澤井康生弁護士に、オンラインカジノの危険性や注意すべきポイントについてお話を伺いました。違法行為に巻き込まれないよう、まずは正しい知識を持ちましょう。
秋法律事務所
澤井 康生(さわい・やすお)弁護士
早稲田大学政治経済学部卒業。警察官僚・刑事を経て、企業法務や民事・刑事事件を幅広く手掛ける弁護士。早稲田大学院ファイナンス研究科MBA、公認不正検査士、金融コンプライアンス・オフィサー1級を有し、東京簡易裁判所非常勤裁判官や東京税理士会インハウスロイヤーを歴任。企業不祥事対応やメディア出演の実績も豊富。現在、早稲田大学大学院法学研究科博士後期課程(刑事法、北川研究室所属)在学中。
早稲田ウィークリーレポーター
社会科学部 3年 米田 菜々美(よねだ・ななみ)

(左から)米田さん、澤井弁護士。早稲田キャンパス 8号館法廷教室にて
INDEX
▼オンラインカジノの危険性 “海外サイトだから安全”は大間違い!
▼スマホ一つで犯罪に 学生がハマりやすいオンラインカジノ
▼1人で抱え込まずにすぐ相談を! 各種相談窓口一覧
オンラインカジノの危険性 “海外サイトだから安全”は大間違い!
「知らなかった」では済まされない オンラインカジノは違法!
オンラインカジノとは
オンライン上でゲームなどを行い、その結果に現金・暗号資産・電子マネーなどを賭けるもの。勝利した場合は配当が発生し、多くの場合獲得した利益は電子マネーや暗号資産を通じて換金される。スマホに流れてくるゲームなどの広告で誘導され、オンラインカジノと気付かずに手を出してしまうケースも増えている。
米田:国内でオンラインカジノに手を出してしまった場合、どのような罪に問われますか?
オンラインカジノで賭け事をすると、刑法上の「賭博罪(※1)」に該当します。賭博罪には単純賭博罪と常習賭博罪があり、単純賭博罪の場合は50万円以下の罰金刑、常習賭博罪の場合は3年以下の懲役刑が処されます。常習的に賭博を繰り返す行為は、より重い犯罪として扱われるということです。
弁護士会の法律相談窓口には、オンラインカジノが原因で多額の借金を負ったり、詐欺被害に遭ったりしたという相談が増えています。最近ではスマホで簡単にオンラインカジノサイトにアクセスできるため、違法であると知らずに手を出してしまうケースも少なくありません。また、「海外のサイトだから合法」という誤った情報を聞いて大丈夫だと思い込む人も多いようですが、日本から海外のオンラインカジノにアクセスして賭博をした場合でも、日本の刑法が適用されるので罪に問われます。
ここ4〜5年でオンラインカジノに関する相談件数は急増しています。日本ではカジノへの関心度が高い一方で、国内では合法的に利用できないため、海外のオンラインカジノにアクセスしてしまうのかもしれません。
(※1) 金品などを賭けて賭け事を行った場合に適用される犯罪。刑法第185条から第187条に「賭博及び富くじに関する罪」として定められている。

オンラインカジノに潜む依存症のリスク
米田:オンラインカジノを利用した賭博の危険性を教えてください。
勝てば「もっと勝てるはず」、負ければ「取り戻したい」と考えるようになり、どちらに転んでもオンラインカジノの沼から抜け出せなくなる。つまり、ギャンブル依存症に陥るリスクが非常に高い点が最大の危険です。従来の店舗型カジノであれば、実際に店へ出向く必要があることで、物理的にも心理的にも一定のハードルがありました。しかし、オンラインカジノはスマホさえあれば24時間いつでもプレイできるため、生活の中に深く入り込みやすく、依存のリスクが高くなる傾向があります。
さらに、オンラインカジノの中にはパズルゲームやスポーツの結果を予想するものなど、ゲーム感覚で遊べる形態のものもあります。そのため、違法なギャンブルという意識が希薄なまま、遊び感覚で手を出してしまうケースも見られます。結果、オンラインカジノで負った借金を返すために、闇バイトに手を出してしまったり、消費者金融や友人、家族からもお金を借りるようになり、人間関係がズタズタに壊れてしまったりするのです。

米田:約100名の『早稲田ウィークリー』読者モニターに聞いたところ、「オンラインカジノ、またはオンラインカジノらしい怪しい広告を目にしたことがある」と答えた人は、3割にも上りました。
ギャンブル等依存症対策基本法(※2)が改正され、オンラインカジノに関連するアプリの掲載、SNSでの広告・宣伝、まとめサイトによる誘導行為が禁止されました。ただし、現時点で罰則規定はなく、今後の運用状況を通じて実効性が検証される見通しです。広告を掲載する各企業やWebサイト運営者にとっては、法的罰則がなくてもコンプライアンスの姿勢が問われるため、自主的な遵守が求められます。施行されたばかりのため、今後の動向には注視が必要で、学生の皆さんも引き続き怪しい広告をクリックしないなどの対策をしてください。特に、「稼げる」「勝ちやすい」「まずは無料でプレイできる」などの言葉で勧誘している広告には、注意が必要です。
(※2)2025年6月に改正法が成立し、同年9月25日に施行。今回の改正では、インターネットを通じた違法オンラインカジノの広告・宣伝や誘導行為が禁止された。あわせて国や自治体には、こうした違法行為を広く周知し、被害拡大を防ぐ責務が課された。
スマホ一つで犯罪に 学生がハマりやすいオンラインカジノ
自身をコントロール! 違法な賭博には手を出さない
米田:オンラインカジノは20代の利用者が最も多いですが、なぜでしょうか?
大きな理由の一つは、スマホで手軽にアクセスできること。社会人よりもスマホに触れている時間が長い学生の方が、手を出しやすいという側面もあります。また、一部の若者の間では、楽して大金を稼ぎたいという意識や、オンラインカジノに対してファッショナブルな魅力を感じる人もいるのでしょう。学生はアルバイトで稼げる金額に限界があるため、一発で大金を得られる可能性のあるギャンブルに惹かれやすいのかもしれません。

一般社団法人日本暗号資産等取引業協会(JVCEA)作成資料より。(出典『警察庁 オンラインカジノの実態把握のための調査研究』」)
米田:一方で、大学生の間ではポーカーや麻雀が流行しているようです。お金を賭けなければ違法ではないのでしょうか?
お金やお金以外の財物を賭けなければ単なるゲームとして違法にはなりませんが、賭けてしまうと賭博罪にあたります。特に、賭博の勝ち負けの結果が出てから成立するのではなく、お金を賭けて賭博を開始した時点で成立してしまうので注意が必要です。また、暗号資産や電子マネーを使用して賭けた場合も賭博罪になります。

米田:もしオンラインカジノに関わってしまった場合、どこに相談すればよいですか?
刑事責任が問われる可能性があるので、まず弁護士に相談してください。また、ギャンブル依存症に陥るリスクがある場合は、専門の治療機関に相談し、適切な支援を受けることが重要です。
米田:学生がオンラインカジノに手を出さないために意識すべきことを教えてください。
まず大切なのは、オンラインカジノを含む賭博行為が日本では違法であり、「グレーゾーン」はないという正しい認識を持つことです。「海外サイトだから合法」という誤った情報は決して信じないでください。
また、一人一人がスマホの使い方を見直し、誘惑を減らす環境を整えることも重要です。ギャンブル関連のアプリや広告に触れないように注意する、スマホの利用時間を決めるなど、自分の行動をコントロールする意識を持ちましょう。
インタビューを終えて、どんなことを感じましたか?
米田
オンラインカジノは自分とは縁遠いものという印象があったのですが、予想外にも身近に存在していることを実感しました。少額から簡単に賭けられるものや、一見カジノとは思えない形態をとるものなど、若年層をターゲットにしたオンラインカジノの手口も巧妙化しています。日本では”オンラインカジノは全て犯罪である”と認識し、「知らぬ間に自分が違法行為に手を染めてしまうかもしれない」という意識を持ち、自分事として捉えることが重要だと思いました。
取材・文:桑本 薫平
撮影:小野 奈那子
1人で抱え込まずにすぐ相談を! 各種相談窓口一覧
困ったことがあったら、1人で解決しようとせず、すぐに相談窓口に駆け込んでください。学内の一番身近な相談窓口としては所属学部・研究科の事務所がありますが、その他の窓口として以下を紹介します。
学生生活課(学生生活110番)
学生生活上のさまざまなトラブル・事件・事故などで悩みを抱えたら、ささいなことでも相談してください。
スチューデント・ダイバーシティ・センター 学生相談センター(法律相談)
月に2回、早稲田キャンパスの学生相談センター(25-2号館保健センター6階)にて弁護士による無料法律相談を受け付けています。事前の申し込みが必要です。
弁護士法人 早稲田大学リーガル・クリニック(早稲田キャンパス28号館)
早稲田大学に併設された法律事務所。早稲田大学関係者であれば、無料で相談が可能で、事前の申し込みが必要です。
【次回フォーカス予告】12月1日(月)公開「ワセメシ・中華料理特集」






