「学生三大駅伝3冠」(※)を目指して2021年度のシーズンをスタートした早稲田大学競走部。しかし、10月の「第33回出雲全日本大学選抜駅伝競走(以下、出雲駅伝)」、11月の「第53回全日本大学駅伝対校選手権大会(以下、全日本大学駅伝)」はともに6位という結果に終わり、残るは2022年1月2、3日開催の「第98回東京箱根間往復大学駅伝競走(以下、箱根駅伝)」に。今回の箱根駅伝特集では、駅伝主将の千明龍之佑選手を皮切りに、中谷雄飛選手、太田直希選手(いずれもスポーツ科学部4年)へインタビュー。これまでのレースを振り返ってもらうとともに、箱根駅伝への思いを聞きました。さらに、次期エース候補とされる井川龍人選手(スポーツ科学部3年)と菖蒲敦司選手(スポーツ科学部2年)の対談もお届けします。
(※)出雲駅伝、全日本大学駅伝、箱根駅伝の3大会を学生三大駅伝という
「箱根は『1年の集大成』、そして『4年間の集大成』」
駅伝主将 スポーツ科学部 4年 千明 龍之佑(ちぎら・りゅうのすけ)

群馬県出身、東京農業大学第二高等学校卒業
――今シーズンのチームカラーや強みを教えてください。
トラックシーズンでは、2020年に同期の太田(直希)と中谷(雄飛)が大学生ランナーでは希少な1万メートル27分台という記録を出した中、2021年の春に3年の井川(龍人)も27分台ランナーに。また、僕自身も5月に5,000メートルで13分31秒52の自己ベストを出して6月の日本選手権(第105回日本陸上競技選手権大会)に出場できたり、2年の菖蒲(敦司)が5月の関東インカレ(第100回関東学生陸上競技対校選手権大会)の3,000メートル障害で優勝したりと、個人としての好成績が続きました。
スピード強化という部分では例年よりも進めることができ、平均タイムでも他大学と比べてトップを狙える位置に。この流れをうまく駅伝シーズンにつなげることができれば、という状態でした。
しかし、駅伝シーズンになると、出雲駅伝は僕自身がけがにより離脱し、全日本大学駅伝は自分以外にも太田の負傷、中谷の不調が重なってしまい、どちらも6位という悔しい結果に。最後の箱根駅伝で取り返したいという思いは強いです。
――ただ、けがをする前は日本選手権5,000メートルで8位入賞(学生1位)と好成績も。トラックで記録が出せた要因は?
前回の箱根駅伝が終わってから、トラックシーズンに向けてスピード強化に取り組めたことが要因だと思います。まず1,500メートルで自己ベストを更新でき、いい流れで5,000メートルにつなげることができました。
その後のけがにより、まだ駅伝では走ることができていませんが、既に練習は再開しています。箱根駅伝までの残り期間、しっかり準備できれば十分間に合います。箱根駅伝には万全の状態で、優勝を狙える布陣に持っていけるはずです。

2021年6月の日本選手権。男子5,000メートルで13分39秒04を記録し、学生トップの8位入賞を果たした(写真提供:早稲田スポーツ新聞会)
――最後の箱根駅伝に向けて、個人として取り組みたいこと、チームとして意識したいことは?
個人としてはブランクがある以上、しっかり土台を作り直したいですね。まずは走るボリュームを増やしていき、そこから実戦的なスピードに移行していければと考えています。チームとしては例年よりも準備期間を早めているので、もう一段階レベルアップして、そして、けが人を出さずに乗り越えていきたいです。
箱根駅伝は、「1年の集大成」として毎年大事な位置付けのレースです。さらに今回は、自分にとって「4年間の集大成」の意味も含まれます。終わり良ければ全て良し、ではないですが、箱根駅伝で良い結果を残すことで、4年間を最高の形で締めくくりたいです。
「守りに入るのではなく、もっと攻める」
スポーツ科学部 4年 中谷 雄飛(なかや・ゆうひ)

長野県出身、佐久長聖高等学校卒業
――2020年のコロナ禍では、「地元・長野県にある諏訪湖の周りを走りながら自分を見つめ直した」と語っていました。今シーズンは昨シーズンよりも「チーム」として走れる環境にあるかと思います。あらためて、早稲田で走る意味をどう捉えていますか?
新しいメンバーも増えましたし、その分、刺激も多くて走っていて毎日が新鮮です。また、今年のチームは一人一人の個性がしっかりあって、いい意味でチームに染まりすぎていない印象です。それぞれ独自の強みを持った選手が多いチームかなと思います。
――出雲駅伝、全日本大学駅伝はともに6位。ここまでの駅伝2大会をどう振り返りますか?

第53回全日本大学駅伝で、中谷選手は前年に続き3区を走った(写真提供:共同通信社)
チームとしても優勝を求めていただけに、中途半端な結果に終わってしまったのは悔しいですね。僕はやるからには「0か100か」の結果しかないと考えていて、正直、6位になるくらいなら、シード落ちも覚悟するくらいの気持ちで臨むべきだったのではないかと。守りに入るのではなく、もっと攻めることができた部分もあったのでは、と考えています。
また、二つの駅伝はどちらも4年生の主力を欠き、ベストメンバーで走れていません。「もっともっと4年生がしっかりしなければ」と主将の千明や太田とも話をしています。箱根駅伝は、ベストメンバーでやって、ダメだったらしょうがない。そのくらい割り切れるように悔いのない大会にしたいです。
――箱根駅伝までの残り期間、個人としての課題、チームとして伸ばしていきたい点は?
個人としては、まずは故障なく練習を積むことです。チームとしても、ここからけが人を出さないこと。まずは基本的な練習がしっかりできる状態にして、チームが足並みをそろえて箱根駅伝に向かっていくことが一番重要かなと考えています。
――最後の箱根駅伝に向けての決意を教えてください。
1年生から出場させてもらって、自分の弱い部分を知ることができた大会でもありますし、僕自身が「もっと勝ちたい」と思えた大会です。だからこそ、最後に良い結果で終えたいですね。
また、高校時代から大切にしてきたことの一つが、しっかり人に感謝すること。三大駅伝はたくさんの人から応援をいただく機会なので、「皆さんの応援のおかげで優勝できました」と報告できるようにしたいです。そのためにも、自分の任された区間で結果を残したいですし、チームで総合優勝を目指していきます。
「全てを出し尽くして、最後に笑おう」
スポーツ科学部 4年 太田 直希(おおた・なおき)

静岡県出身、浜松日体高等学校卒業
――自身の今シーズンのテーマを教えてください。
「4年生として結果でチームを引っ張る」をテーマにしていましたが、なかなかそれがうまくかみ合わず、ここまで来てしまったと感じています。結果を出さなければ…と焦りすぎてしまい、周りを見る余裕や、自分のコンディションと相談して練習することがうまくできなかったのが反省点です。
「4年生として」ということにこだわりすぎず、まずは「個人」として結果を出す。そうすればおのずとチームも良くなるはず、と意識を変化させて夏以降はやってきました。
――箱根駅伝までの残された時間で取り組みたいことは?
自分の長所は「安定感」なのでそこを磨きつつ、課題である「爆発力」を出せるように、練習から井川や中谷といった主力級の選手と競り合って走りたいですね。僕らがさらに力を伸ばせば、チームが楽になるはずです。
チームとしては、二つの駅伝の結果を真摯(しんし)に受け止めて、もっと「勝つ気持ち」や「日本一良い練習をするチーム」という部分を共有していく。優勝するために残り少ない日数を全力で戦っていきたいです。
――太田選手にとって箱根駅伝はどんな存在でしょうか?
あまり特別視しないように、と思いつつ、やはり他の大会とは沿道で応援する人の数も注目度も圧倒的に違います。そこで良い結果を残せば、より多くの人に見てもらえる機会にもなります。地元の友達やお世話になった人たちに自分の活躍を見てもらうためにも、しっかりと走りたいですね。

第97回箱根駅伝(2021年1月)では2区を担当した太田選手(右)。1区の井川選手からタスキを受け取った(写真提供:日刊スポーツ/アフロ)
最後の箱根駅伝になるので、今までお世話になった方々への感謝の気持ちを、自分の走りを通して見せていきたいです。個人的には、大学に入ってまだ経験のない区間賞をとることが目標です。チームとしても優勝を掲げているので、最後こそ4年生である自分たちが引っ張って勝つんだ! という思いで臨みます。
――「自分たちが引っ張って」という意味で、4年間主力として走ってきた同期の中谷選手、千明選手に掛けたい言葉は?
4年間ずっと切磋琢磨(せっさたくま)してきて、本当にいい仲間に恵まれたなと思います。僕もそうですけど、最後は全力で頑張ってくれるはず。「全てを出し尽くして、最後に笑おう」と言いたいですね。
第98回東京箱根間往復大学駅伝競走
【往路】2022年1月2日(日)午前8時スタート
【復路】2022年1月3日(月)午前8時スタート
※新型コロナウイルス感染症感染防止対策として、テレビなどでの応援、観戦をお願いします。詳細はこちら
箱根駅伝公式Webサイト
取材・文:オグマナオト(2002年、第二文学部卒業)
Twitter:@oguman1977
撮影:石垣星児
【次回フォーカス予告】2022年1月11日(火)公開「奨学金特集」