Waseda Weekly早稲田ウィークリー

特集

何かと噂、マスコミ業界の働き方 出版社・新聞社・広告会社の日常とは?

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読売新聞社が中心的な役割を担って始まった野球の人気イベント「ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)」についての説明

早稲田大学の校友をお招きし、仕事や学生時代の様子などの話を聞くことを通して「生き方」「働く意味」「職業の選び方」「学生時代をどう過ごすか」などを考える、キャリアセンター主催の「先輩と考える自分の『みらい』セミナー」。11月7日(火)に大隈記念講堂小講堂で行われた「現在のマスコミ業界ってどんな働き方をしていますか?」には、株式会社講談社、株式会社読売新聞東京本社、大手広告会社で働く若手の先輩が登壇しました。講演後は質疑応答が止まらず、イベント終了後も学生が先輩を囲んで“質問攻め”にする大盛況のセミナーとなりました。

漫画編集者はマネージャーでありプロデューサー
「興味がなかったことも案外、楽しめます」

講談社モーニング編集部 寺山 晃司(てらやま・こうじ)さん
2006年 大学院先進理工学研究科 修士課程修了

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漫画が好きで出版社に入ったら

講談社に入ろうと思った理由は、好きな漫画の編集をしたかったからです。出版社の仕事について、入社前は「とにかくヤバそう」「忙しそう」「でも、給料は良さそうだし、何となく楽しそう」と想像していました。入社してみると、確かに給料は良く、その分、仕事量は多いです。少し違ったのは「興味がなかったことも案外、楽しめるんだな」と思えたことです。

最初は、入社前にはほとんど読んだことのなかった週刊誌へ配属されたのですが、著名人のインタビューや表紙になる女優さんの撮影などを通じて、たくさんの人に出会えました。好きなお酒の企画を作ることもできました。週刊誌に配属されたことで、自分は「大人」になれたと思います。

ネーム、キャッチコピー…編集者の仕事

漫画誌の編集者の役割には、まず「マネージャー」があります。漫画家さんが締め切りを守れるように、ネーム(マンガの設計図)や下描きの進捗(しんちょく)を見たり、原稿の様子を聞いたりします。次に「プロデューサー」という面もあります。個々の作家さんに「こんな作品を描いてほしいです!」と提案してみたり、内容について質問や助言をしたり、宣伝方法を発案したり、作品が良くなるため、世間に広めるためのアイデアを考えます。

一日のタイムスケジュールは、一例として仕事の始まりが午後1時ごろ、退社は夜中の2時ごろです。まずは社外で漫画家さんと打ち合わせをして、その後に編集部で作業します。社外の人とたくさん連絡を取り合うので、メールをしている時間は長いです。業務の中でも、ネームを読むのは非常に重要です。ネームを読んで漫画家さんに感想を伝えるのは、作品をより良くするうえで最も心血を注がなければならない仕事です。また、作品の入稿や校了も大切な仕事で、吹き出しの大きさやせりふの書体を決め、印刷所さんに原稿を渡します。こうして出来上がるゲラ(校正紙)を基に、最終チェックを行います。

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仕事で関わった作品を紹介

作品のキャッチコピーを考えたり、雑誌の記事原稿を書いたりすることもあります。新人賞の応募作品を読むのも仕事です。私は月刊漫画誌の編集チーフもしているので、編集部員から出された連載案を精査したりもしています。

他の企業との交渉もします。担当の連載漫画「終電ちゃん」を電車の時刻表とコラボレーションさせたいと考えたときには、「JTB時刻表」の編集部を訪ねました。そのかいもあって昨年12月号にオリジナルストーリーを掲載してもらうことができました。「JTB時刻表」に漫画が掲載されたのは創刊91年の歴史で初めてだったそうです。

自分にとって何が一番大切か

この仕事の良いところは、やろうと思ったら大概のことができる点です。入社1年目の新人も、企画が通れば会いたい人に会えるし、連載も可能です。また、出版物は実際に形になるまでが早いので、世の中の反応が早く分かります。担当企画の評判が良ければ、すごくうれしいですよ。働く上でのモチベーションになっています。

仕事を選ぶときに大事なことは、自分にとって何が一番大切かを考えることだと思います。社会貢献、いい給料、短い時間で効率よく働いて仕事とは違うことで人生をエンジョイ…。私の場合、楽しいことをしたいというのが一番でした。ですから、仕事がどんなに忙しくても苦にならず、楽しく過ごしています。

WBCを企画した総合メディア企業
「同期の妻は育児休暇中、ワークライフバランスを実践」

読売新聞東京本社人事部 宮本 純平(みやもと・じゅんぺい)さん
2013年 大学院会計研究科 専門職学位課程修了

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社会に作用する三つのコト

総合メディアの読売新聞が行う「社会に作用する三つのコト」から紹介します。一つ目は「社会の課題を解決するコト」です。月末の金曜日に仕事を早く切り上げ消費を楽しむ「プレミアムフライデー」ですが、実は読売新聞の広告局が持ちかけて経済産業省に旗振り役となってもらった企画です。背景には消費喚起や働き方改革という、日本にとって喫緊の課題があります。

二つ目は「社会をワクワクさせるコト」です。ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)は読売新聞の主催です。読売新聞が持つプロ野球球団、読売巨人軍の約80年の歴史で培った、米国メジャーリーグとの強いつながりが野球の世界大会実現をかなえました。三つ目は「社会に提案するコト」です。新聞社は社会の課題を解決する方法について、時には紙面で社としての意見を提言します。「新聞は社会の公器」「知的インフラ」とも言われます。

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約100年前の読売新聞を紹介する宮本さん。箱根駅伝の原型「東海道駅伝徒歩競走」について書かれている

箱根駅伝は100年前から

読売新聞は約900万部の発行部数を誇り、大きな影響力を持っています。読売新聞には多彩なグループ企業・団体があります。公正中立な言論報道には、経営の多角化による安定的な収益が必要です。

2016年度の売上高は、読売新聞グループが6,450億円、関連の日本テレビホールディングスが4,167億円で、計1兆円超の規模。これほどの売上高を誇るメディア企業は、世界にそうはありません。箱根駅伝を毎年、開催しているのも読売新聞です。原型の「東海道駅伝徒歩競走」からは100年の歴史があります。現在はお正月の風物詩として、約100万人が沿道で声援を送り、テレビの視聴率も約30%を誇る巨大なイベントです。

コラボレーションもしています。今年8月31日付朝刊の1面にバーチャルアイドル、初音ミクの見開き広告が、読売新聞だけに掲載されました。初音ミク生誕10周年の記念です。デジタル制作企業の(株)ナディアとの資本・業務提携も結びました。創立140年以上の伝統がある読売新聞が2004年設立の若い企業と提携することで、新しい価値を生み出そうとしています。

女性育児休暇取得率100%

私は昨年、同期入社の記者と結婚しました。先日、子供が生まれ、妻は育児休暇中です。会社の女性育児休暇取得率は100%。東京本社内には保育園もあります。ワークライフバランスについては、今年から「さっとかえる日」も設けられました。毎月第3金曜に定時退社を促す取り組みです。一方、支局の勤務ダイヤの一例を見てもらうと、入社1年目の新人記者も7日連続で夏休みを取れていることが分かります。

私は経理の仕事がしたくて入社しました。大学時代に会計の勉強をしていたからです。入社して5年目。お金の動きを見ると、会社がしていることがよく分かります。この仕事の面白いところです。コミュニケーションを取ることの重要性も痛感しました。皆さんも就職活動では人からいろいろな話を聞き、企業研究をしてほしいと思います。

広告の世界は、面白いことが起きる真ん中にある
「誰かの心が動いて、少しでも笑顔になる夢のような仕事」

広告代理店営業局勤務 丸橋 俊介(まるばし・しゅんすけ)さん
2013年 文化構想学部卒業

 

広告会社の営業職には、ターゲットや予算に合わせてテレビやラジオの最適な番組スポンサーをクライアントに提案する仕事があります。情報番組で企業の商品を紹介するパブリシティーもします。CMの企画・制作やイベントの運営に参加したり、購買プレゼントの企画を考えたりもするのも仕事です。要するに、クライアントのパートナーとして何でもするのが広告会社。特に予算、クオリティー、スケジュールの3点に責任を持ち、全うします。

「未来予想人」との出会い

広告会社との出会いは大学3年です。それまで電通も博報堂も全く知りませんでしたが、就職活動で運命的な出会いを広告会社の方としました。自分が「面白いなあ」と感じていた世の中のことは、この人たちが作っていたのだということを電通の会社説明会で知りました。こういう人たちと仕事がしたいと思いましたね。自分がなりたい「未来予想人」が、そこにいました。そこから広告業界で働きたいという気持ちが芽生えました。

広告会社の営業職は基本的にポジティブな仕事です。自分が携わった仕事で世の中が反応して、誰かの心が動いて少しでも笑顔になる。それって夢のような仕事だと思いました。僕もそちら側へ行きたいと考え、今に至っています。

思えば、「面白いことが起きる真ん中にいたい」という気持ちが、僕にはあります。「真ん中」にいるには、人との出会いがチャンスです。積極的に人と出会おうとする姿勢は、学生時代からも意識すれば身に付くはずです。会いたい人に自分から会いに行くだけで、世界は広がって見えますよ。

チームで成し遂げていく仕事

広告業界では、何をしても仕事の成長につながります。飲み会での雑談が広告コピーに生きることもあります。日々のあらゆる行動が仕事の糧となるのです。特に企画会議では、人生経験の幅が広い人ほどアイデアに幅があると感じます。

広告の仕事は、働くほどに自分という人間の世界も広げられます。クライアントを担当するごとに、その業界を勉強して詳しくなれます。一般の人が入れない所に入れるし、世に出ていないものにも触れられます。

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スクリーンに映し出された丸橋さんのメッセージ

チームで成し遂げていく快感もあります。例えるなら、毎日が文化祭の前日。社内にいるさまざまなプロフェッショナルと喜びやつらさを分け合いながら、どうしたら課題を解決できるか、どうしたら面白いことができるかを考え、自分にない部分を埋め合えます。広告会社は黒子ですが、自分が携わった物や広告がCMで流れたり、ポスターで貼られていたり、SNSでつぶやかれたりシェアされたりしているのを見たときは、すごくうれしいですね。自分が関係して世の中が動いたんだという喜びを実感できる瞬間です。

広告に携わる人は皆、少しでも面白いことがしたくて日々、アイデアを振り絞っています。自分のアイデアを形にして、日本が、経済が動くという、やりがいのある仕事です。将来、皆さんともお仕事ができることを楽しみにしています。

広告業界について知りたい学生へ-丸橋さんのおすすめ
・広告とマーケティングの資料館「アド・ミュージアム東京」(港区東新橋、カレッタ汐留内)
・書籍『ディズニーランドが日本に来た!「エンタメ」の夜明け』(馬場康夫著、講談社+α文庫)
・書籍『気まぐれコンセプト 完全版』(ホイチョイ・プロダクションズ著、小学館)
・映画『ジャッジ!』(2013年制作、松竹)

セミナー修了後、先輩を囲む学生たち。質問は尽きることがなかった

2017年度「先輩と考える自分の『みらい』セミナー」今後の予定

20171107_キャリア_マスコミの働き方 (17)「先輩と考える自分の『みらい』セミナー」は、今後もさまざまな業界の先輩をお呼びします。1・2年生は将来の進路選択、職業選択を考えるきっかけとして、3年生以上は仕事、働き方、企業の視野を広げる機会として、就職先が内定している方は社会人生活の参考として、活用してください。また、昨年度に開催したセミナーは「Course N@vi」で公開しています。以下の方法でぜひご覧ください。

※Course N@vi→キャリア・就職支援講座→「みらい設計」支援行事 →進路・仕事を考えるセミナー→先輩と考える自分の「みらい」セミナー

◆11月29日(水)
【時間】18:15~19:45
【場所】】キャリアセンター・セミナールーム(戸山キャンパス学生会館3階)
【テーマ】「転勤ってありますか? たいへんなことって何ですか?」
【講演者所属】日本政策金融公庫、マキタ、ニチレイ

◆12月6日(水)
【時間】15:00~17:00
【場所】C Space(早稲田キャンパス6号館1階)
【テーマ】「若手の先輩と一緒に『地域で働く』を考えよう」
【講演者所属】群馬県庁(Uターン)、会計事務所(島根県Iターン)、NPO法人(広島県Jターン)

講演者続々決定 OB・OGの仕事の話を聞こう!2017年度『先輩と考える自分の「みらい」セミナー』開催

早大生のための学生部公式Webマガジン『早稲田ウィークリー』。授業期間中の平日は毎日更新!活躍している早大生・卒業生の紹介やサークル・ワセメシ情報などを発信しています。

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