学生のうちから展覧会に関われる 日本でも珍しい博物館
會津八一記念博物館助手の柏崎諒さんに、日々のお仕事について聞きました。
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――會津八一記念博物館は、国内総合大学にある博物館の中では収蔵品や展示が充実していますが、一般的な博物館・美術館と比べるとどんなところに違いがあるんですか?

會津八一記念博物館助手 柏崎 諒(かしわざき・りょう) 専門は日本絵画史。
当館の特徴としては、収蔵資料がほぼ全て寄贈品であることです。他の博物館のように新たに購入することもないですし、展覧会のために他館から借りてくることもほとんどありません。
ご寄贈いただくのは、卒業生や教員などの大学関係者が多いですね。また、研究成果をダイレクトに展示に結び付けることができる点も特徴です。個人や会社などからコレクションをご寄贈いただくと、まずは学芸員(助手)で調査・研究をします。専門家に話を聞いたり、文学学術院の先生方にご意見を伺ったりして、研究をまとめ、成果発表という形で企画展を立案します。企画展は3年ほど前から動き始めるので、皆さんが思っているより長い時間をかけているかもしれませんね。
――會津八一記念博物館の学芸員はどのような人がなっているのですか?
当館には設立以来「学芸室」が設けられており、現在は主任研究員1名と、学芸員資格を持つ早稲田大学大学院博士後期課程修了もしくは在籍中の若手の研究者である助手3名で学芸業務を行っています。
――普段はどのようなお仕事をしているのですか?

會津八一筆の札がかかる学芸室
主に、企画展開催に向けた準備、そして常設展の展示替えがあります。また、ご寄贈のお申し出があった場合には、まずはそれを見に行って作品を確認し、どういったものなのか調査をした上で受け入れるかどうかを決め、受け入れる場合には再度出向いて作品を受け取ります。他にも展示室内の環境整備や雑務などがあり、学芸員の仕事は多岐にわたります。
また、研究論文を執筆することも仕事の一つです。私の研究テーマは室町・江戸時代の狩野派なのですが、当館には狩野派の作品はあまりなく、所蔵作品とは別に研究テーマを持っているんです。
――會津八一記念博物館のすごいところは何ですか?

学芸室で作業中の大学院生たち
学内博物館はこの道を目指す人たちを学んで育てる場、つまり教育施設なのです。文学研究科修士課程の大学院生にアルバイトをしてもらっていますが、学生のうちから展覧会に関われる、収蔵品を手に取って触れるというのは大変貴重なことです。
――會津八一記念博物館の楽しみ方は?

奈良県・唐招提寺で陶器に絵付け中の會津八一
入館は無料ですし、気楽な感じで来てくれればと思います。よく学生から「どうやって見たらいいですか」とか「この歴史を知るには何を読んだらいいですか」とか聞かれるんですが、回数を重ねるうちに自分なりの見方ができてくるので、まずは物を見てみること。説明をあえて少なくしているので、なじみがない人には難しいと感じるかもしれませんが、物とじっくり向き合い、そして、興味を持った物については、図書館などで自分で調べてみてほしい。それは會津八一先生が願っていたことでもあります。
詳しく調べたいものがあったら、監視や受付の方に尋ねてみてください。そうしたらわれわれ学芸員が、参考となる本や調べ方をお教えします。また、館内の10作品をめぐると漏れなくポストカードがもらえる「探して見よう」という企画などもやっていますので、ぜひ自分の楽しみ方を見つけてください。
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