Waseda Weekly早稲田ウィークリー

特集

学生時代に読んでおきたい名著・名作読書のススメ

豊かな教養を身に付けるためにも、また、学問を深めるためにも、古典的名著・名作はジャンルを問わず読んでおきたいものです。とはいえ、「あらすじは知っているから…」「何から読めば分からない」と、何となく敬遠してしまうこともあるのではないでしょうか。そこで、今回の特集では教授や学生に名著・名作といわれる作品の魅力を語っていただきました。読書に最適なこの季節、皆さんも名著・名作の読書にチャレンジしてみませんか。

『源氏物語』に魅せられた教授に聞く
別世界へいざなう古典文学

プロフィール オーストラリア生まれ。1984年、オーストラリア国立大学アジア研究学部日本研究学科卒業。1987年、日本女子大学日本文学研究科博士課程前期課程を修了。英国ケンブリッジ大学東洋学部博士号取得後、2001年に早稲田大学法学部助教授を経て現職。専門は日本文学、特に『源氏物語』の受容史、与謝野晶子など。

プロフィール
オーストラリア生まれ。1984年、オーストラリア国立大学アジア研究学部日本研究学科卒業。1987年、日本女子大学日本文学研究科博士課程前期課程を修了。英国ケンブリッジ大学東洋学部博士号取得後、2001年に早稲田大学法学部助教授を経て現職。専門は日本文学、特に『源氏物語』の受容史、与謝野晶子など。

図書館副館長
ゲイ・ローリー法学学術院教授

私が日本の古典文学に出合ったのは大学2年生のときです。万葉集から江戸文学までを英訳で読むクラスに所属し、1年かけて数々の作品に触れました。その一つが『源氏物語』です。イギリスの東洋学者、アーサー・ウェイリーによる翻訳版を手にした私は、講義が終わった後もキャンパス内の芝生に横たわって読書を続けたことを今でも覚えています。

私が『源氏物語』に夢中になった理由は主に二つあります。一つは小説として圧倒的に面白かったこと。光源氏の華麗な恋愛遍歴は男女関係に敏感な20歳前後の人間にとって非常に刺激的でした。読者層を選ぶ作品ではありませんが、感性が豊かな学生時代ほど感情移入しやすいと思います。

続いてもう一つの理由ですが、それは読者を別世界にいざなってくれること。歴史的な文化や社会構造は現代の価値観では理解できないことばかりです。『源氏物語』を最初に読んだときは、一夫多妻制や和歌の交換、女性の多くが屋敷の中で一生を過ごす社会文化など、驚きの連続でした。

歴史の積み重ねが現代社会に通じるわけですから、日本の古典文学は皆さんのルーツの一端といえます。皆さんが海外を訪れたとき、基本的には日本の代表者として見られます。やはり自国の文化は教養として知っておくべきではないでしょうか。特にアーサー・ウェイリーの訳書は欧州全般で孫訳され、戦前・戦後の知識人の間では非常に有名です。少し上の年代の方と話す際には良い話題になることでしょう。深い歴史に裏打ちされた日本の古典文学の魅力は世界中に広がっているのです。

ただ、今の学生の中には中学・高校時代に文法の勉強に嫌気が差して、古典に抵抗を感じる人がいるかもしれません。そういう場合は現代語訳でも漫画でもいいので、親しみやすい作品から読んでみてください。『源氏物語』に限らず古典文学には小説として高いエンターテインメント性を誇る作品が数多くあることがお分かりいただけると思います。ぜひ日常的に古典作品を持ち歩き、電車での移動中やちょっとした空き時間に、日本が誇る豊かな文化に触れてみましょう。

●先生のおススメ
『与謝野晶子の「新訳源氏物語」』ひかる源氏編薫・浮舟編 与謝野晶子/角川書店/3,284円(税別)

『与謝野晶子の「新訳源氏物語」』ひかる源氏編薫・浮舟編 与謝野晶子/角川書店/3,284円(税別)

『与謝野晶子の「新訳源氏物語」』ひかる源氏編薫・浮舟編

明治時代を代表する歌人、与謝野晶子が王朝恋愛物語の傑作『源氏物語』を自身の言葉に置き換え、コンパクトな形に読み解いた、日本初の口語訳。『源氏物語』が国民文学として定着する契機となったといわれる作品。全体がダイジェスト的にまとめられているほか、主語が明確にしてあるため初心者にも読みやすい。

■文芸・読書サークル他、愛読家学生に聞く
おススメ名著・名作6選

●その友情、味わい直してみませんか
『友情について』キケロー著/中務哲郎訳/岩波文庫

『友情について』キケロー著/中務哲郎訳/岩波文庫

人間科学部3年 遠藤 若奈(えんどう わかな)
(早稲田大学図書館ボランティアスタッフLIVS)
『友情について』キケロー著

例えば大切な友人が死んだとき、あなたはどう思いますか?キケローは、悲しまない。そんな人が描いた友情から、あなたの友情を見直してみませんか?一人の知識人の描く友情も、あなたの友情も、形は違えど色は同じではないでしょうか。大切な友人と背中合わせで読んでみてください。

 

 

●“ハイド”とは一体何者なのか?

『ジーキル博士とハイド氏』 スティーヴンソン著/田中西二郎訳/新潮文庫

『ジーキル博士とハイド氏』 スティーヴンソン著/田中西二郎訳/新潮文庫

文学部2年 鎌倉 夏美 (かまくら なつみ)
(読書企画委員会Book Portal)
『ジーキル博士とハイド氏』

ハイドを追う弁護士の目線で読めば推理小説、ハイドを恐れるジーキルの目線で読めばホラー小説、人の姿を変える薬品に焦点を当てればSF小説。短いのにさまざまな面を持つこの作品はどの角度から読んでも面白く、背筋のゾクッとする読後感は癖になります。敬遠しがちなイギリス近代文学の入り口にいかがですか?

●ニーチェが神を殺した理由(わけ)

『道徳の系譜学』ニーチェ著/中山元訳/光文社古典新訳文庫

『道徳の系譜学』ニーチェ著/中山元訳/光文社古典新訳文庫


先進理工学部3年 上手 裕紀子 (かみて ゆきこ)
(Arts&Books)
『道徳の系譜学』

道徳とは弱者の復讐 (ふくしゅう)である。創造する力のない彼らは、幸福な強者を悪、比べて自らを善とした。そして生じた道徳は宗教につながり、西洋の絶対的な価値観を決定した。ニーチェはそれを徹底的に見つめ直し、無力から真の価値は得られぬと叫ぶ。常識を覆された私たちは、きっと生を問わずにいられなくなる。

 

 

 

●緑あふれる初夏の高原と麦わら帽子の女の子

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教育学部3年 森 晨祐 (もり しんすけ)
(教育学部国語国文学会)

『風立ちぬ・美しい村』
『美しい村』は『風立ちぬ』の前作となる作品です。音楽のように流麗な文体や、奥手な青年の恋の心理描写の巧みな表現、鮮やかな色彩で描き出される風景描写にも注目してみてください。続けて『風立ちぬ』も読むと、よりすてきな読書体験になると思います。初夏の高原の清々しい空気を感じながら読んでください!

●今もなお問われ続ける、生命の仕組みに迫る

『生命とは何か─物理的にみた生細胞』シュレーディンガー著/岡小天、鎮目恭夫訳/岩波文庫

『生命とは何か─物理的にみた生細胞』シュレーディンガー著/岡小天、鎮目恭夫訳/岩波文庫


商学部2年 野村 拓也 (のむら たくや)
(読書企画委員会Book Portal)
『生命とは何か─物理的にみた生細胞』

量子力学の礎である物理学者の著者が、物理的・化学的視点から“生物”の種の存続や進化、遺伝の仕組みを解き明かす。近代以降発展を続けてきた科学はついに生命の謎をも暴き出すのだろうか?農業や工業、環境や医療などの幅広い分野から注目される分子生物学の根幹を理解する上で、現代人必読の書。

 

 

 

●「平等」を捉え直すための、センからの招待状

『不平等の再検討─潜在能力と自由』アマルティア・セン著/池本幸生、野上裕生、佐藤仁訳/岩波書店

『不平等の再検討─潜在能力と自由』アマルティア・セン著/池本幸生、野上裕生、佐藤仁訳/岩波書店

政治経済学部2年 斉田 育気 (さいだ いっき)
(政治経済攻究会)
『不平等の再検討─潜在能力と自由』

 

人間が達成し得る「生き方」や「在り方」─《機能》の多様性から出発する彼の議論において、《効用》や《所得》は、個人の《福祉》を評価する基準としての強度を保ち得ない。彼が編み出した《潜在能力》という概念を用いたアプローチにより、従来の理論では捉えられなかった「F平等」Fを観察する視点を養う名著。

『早稲田ウィークリー』読書モニターに聞く心に残った名著・名作

『春琴抄』(谷崎潤一郎)
愛情が狂気と変わる、人間のその瞬間を垣間見ることができる。(文2・男)

『源氏物語』(紫式部)
平安時代の人たちの恋愛の理想を知ることができて面白い。(政経3・女)

『ファウスト』(ゲーテ)
訳者によって文言が少しずつ違うが、「時よ止まれ」に至るまでの冒険が楽しい。(教4・女)

『古事記』
大和王朝がどうやって自らを歴史の中に正当化しようとしたかが垣間見える。(教4・女)

『雇用・利子および貨幣の一般理論』(J.M.ケインズ)
非常に難解な著として有名だが、マクロ経済学のルーツとなっている。1929年の大恐慌にあえぐイギリスを救おうとした、ケインズの優しさが時折垣間見える。(政経3・男)

『とりかへばや物語』(作者不詳)
古文でありながら読みやすく、平安時代当時の作者の創造力は今に通じるものがある。男女の性別を逆に育てられて…という設定はジェンダーの問題を感じさせて興味深い。(社4・女)

早大生のための学生部公式Webマガジン『早稲田ウィークリー』。授業期間中の平日は毎日更新!活躍している早大生・卒業生の紹介やサークル・ワセメシ情報などを発信しています。

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