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特集

障がい学生支援室レポート 支援を通して見えてくるもの

早稲田大学に「障がい学生支援室」というサポート機関が設置されていることをご存じですか?知らない、知ってはいるけれど自分とは接点がないと思っている人が大半ではないでしょうか。今まで目を向けていなかったことに目を向けること、それはすなわち「気づき」を得るチャンスです。そこで今回は、「障がい学生支援室」と深い関わりを持つ教授と学生をご紹介します。

障がい学生支援室(以下、支援室)について

障がい学生支援室

障がい学生支援室

身体に障がいのある学生が他の学生と同じ履修環境を得られるようにサポートを行う一方、そのサポートを担当する支援ボランティア学生の養成も行っています。支援ボランティア学生の登録は随時受け付けています。今回の特集で得た「気づき」を行動に移そうという学生は、ぜひお問い合わせください。
障がい学生支援室 (早稲田キャンパス7号館105)
[email protected]

 

 

●教授の目
障がいは、誰にでも起こり得ること。支え合うことが当たり前のように溶け込んだ社会に

人間科学学術院教授 畠山卓朗

支援室が運営するオープン科目「障がいの理解と支援」で指導に当たられている畠山卓朗教授。生活支援工学の専門家として見続けてきた支援の現場で本当に求められているものとは?
人間科学学術院教授
畠山卓朗 (はたけやま たくろう)

2011年度にスタートしたオープン科目「障がいの理解と支援」は、今年で3年目を迎えました。土曜日の午後という時間帯にもかかわらず、定員の50名を超える学生が履修してくれています。毎年初めのうちは、障がいがある人に同情を寄せる学生の姿も目立ちますが、授業を通じて実際に障がいがある人との出会いを重ねることで、そうした状況に変化が現れます。例えば、交通事故の後遺症で肩から下の身体部位にまひがあるゲスト講師の方が、顎の動きで操作する電動車いすで教室を訪れて講義してくださるだけで、学生たちの目の色が変わります。障がいの程度が千差万別であることや、自分たちと何ら変わらないということを目の当たりにし、学生はさまざまな「気づき」を得るのです。
また、教室の外にも障がいがある人への理解を深めるチャンスは転がっています。仮に、電車で視覚に障がいがある人に会ったらどうしますか?席を譲ろうと声を掛けたものの、断られてしまったとしましょう。すると以後、大概の人は声を掛けるのをためらいます。しかし、そこで一度立ち止まり、「なぜ断られたか」ということを考えてほしいのです。その方は、次の停車駅を知ろうと車内放送に耳を傾けていたかもしれません。はたまた、出口の場所が分からなくならないように、その場所に立ち続けていたのかもしれません。あなたの手助けを断ったのには理由があり、その「気づき」こそが個人にとっても、社会にとってもとても大切なことなのです。
日本は今、公共交通機関を中心にバリアフリー化を推進しており、早稲田大学も例外ではありません。ただ果たしてそれだけでよいのでしょうか。むしろ、教員や職員や学生、大学を利用する全ての人々の意識を変えていくことの方が重要だと考えています。例えば欧米の場合、車いすユーザーが段差で立ち往生していたら、近くを通りかかった人々が自然と手を差し伸べます。それで解決です。障がいがある学生が疎外感を感じることなく、そういった光景が当たり前のように溶け込んでいる生活の在り方を、ここ早稲田から発信していければうれしく思います。
最後に、「障がいの理解と支援」の講義の中でもよく学生に話していることですが、障がいは、事故や病気などの後天的なきっかけで誰にでも起こり得ることです。他人事ではなく自分自身の身近なテーマとして、障がい、そしてその支援に目を向けることから始めてみてください。

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■畠山卓朗  1949年生まれ。横浜市総合リハビリテーションセンター企画研究室などを経て、2007年より現職。学生時代、脳性まひがある方との出会いをきっかけにリハビリテーションにまつわる機器の開発に携わる。現在は、障がいのある人や高齢者に対する生活支援機器の研究開発に従事。

●学生の目
障がい学生と支援ボランティア学生は、成長し合う双方向の関係

支援室で全盲の障がい学生の付き添い支援に携わる、文化構想学部 大木香菜江(おおき かなえ)さんと、利用学生の文化構想学部 藤島 正法 (ふじしま まさのり)さんによる対談をお届けします。
大木  私が行っている主な支援活動は、教室間の移動を補助するガイドヘルプです。また、藤島さんと文化構想学部の同じ論系なので、ゼミのお手伝いなどもしています。

藤島  事前の準備で文献を読んでもらったり、ディスカッションをする中で理解を深めたり、プレゼンのサポートをしてもらったり、まさに「戦友」という感じですね。

大木  藤島さんは、私よりも深く物事を感じ取れる方なので、つい目が見えないことを忘れてしまいます。例えば、ゼミの硬いムードをいち早く察知して、明るい話題で場を和ませることもしばしば。支援者、利用学生という立場を超えて、いい先輩が一人できたと思っています。

藤島  実は、支援を受ける側は、支援者に負い目を感じてしまうことが多々あるんです。だから、自分と関わる人には、何かしらプラスの要素を感じてもらいたい。さっき大木さんに「いい先輩」と言われ、本当にうれしかったです。

大木  こちらこそ!新たな人間関係を作れたことで、支援活動を通じて自分の世界が広がったという確信が持てました。

藤島  一方で、こうした支援は、特定の方ばかりに負担が集中してしまうと、せっかくの人間関係も消耗してしまいかねません。支援者に義務感を抱かせていないか…などとつい考えてしまう。今以上に多くの学生に支援者登録をしていただくことで、広く人と関わっていけたらうれしいです。

大木  私もノートテイクやパソコン通訳など、他の支援活動にもどんどんチャレンジしていきますね。

藤島  障がい者支援のコツは、お互いやりながらつかんでいくもの。僕が言うのも変ですが、気楽にいきましょう!
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●学生の目
ユーザー目線に立つことで、信頼される支援活動を形づくる

現在, 支援室では有志の支援ボランティア学生が中心となって、バリアフリーマップの製作に取り組んでいます。中心メンバーである商学部 池川貴裕 (いけがわ たかひろ)さんに話を聞きました。

そもそも、私が支援室の支援者登録を行ったきっかけは「ノートテイク」です。謝金が出ることを聞いて、最初はアルバイト感覚で始めました。その後、バリアフリーマップを製作する当プロジェクトのメンバー募集を知り、「将来の仕事に向け、チームを一から作り、チームで目標を目指す経験を積みたい」という思いから参加を決意しました。現在、所属する早稲田大学交響楽団のサークル練習の合間を縫って、バリアフリーマップの製作を続けています。

製作にあたり、「初めて早稲田大学を訪れた方にも使いやすい地図であること」「なるべく多くの情報が詰まっていること」「地図をアップデートできること」をコンセプトに掲げていますが、前提としてあるべきことは「ユーザー目線」だと考えています。車いすユーザーの方へのヒアリングを積極的に行い、また、自らも車いすに乗ってキャンパスを回り、危険な場所を一つ一つリサーチしました。車いすから校内を見渡すと、見慣れたはずの景色が一変。普段は気付かない校門のレールの溝など、ちょっとした段差が車いすユーザーの方にとってはバリアになってしまうのです。

完成した地図は、支援室のWebサイトで一般公開します。ドアの画像や建物内部の状況といった、車いすユーザーの方が必要とする追加情報をポップアップウィンドウに表示できる仕様にする計画で、正確で信頼される地図を作っていきます。

このバリアフリーマップをきっかけに、早稲田大学の障がい学生支援に対する積極的な取り組みが、学内外に広く知られることを心から期待し、活動していきます。

早大生のための学生部公式Webマガジン『早稲田ウィークリー』。授業期間中の平日は毎日更新!活躍している早大生・卒業生の紹介やサークル・ワセメシ情報などを発信しています。

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