Waseda Weekly早稲田ウィークリー

学生注目!

世界最年少で7大陸最高峰と北・南極点制覇 南谷真鈴が早稲田で学ぶ理由

2019年度入学記念号

「自分の可能性を決めるのは自分自身」

政治経済学部 5年 南谷 真鈴(みなみや・まりん)

「日本人最年少」でエベレスト登頂、「女性世界最年少」で七大陸最高峰登頂。そして2017年4月、世界でわずか50人程度しか成功者がいないと言われる七大陸最高峰登頂と北極点・南極点到達を達成する「探検家グランドスラム」を、世界最年少の20歳112日で成し遂げた政治経済学部5年の南谷真鈴さん。資金調達も含めて自力で自分の道を切り開いてきた南谷さんは今、「早稲田大学」という世界を冒険中です。弱冠二十歳で偉業を達成した大学生が今、早稲田で求めているものとは?

――「探検家グランドスラム」という壮大な冒険を達成しましたが、そもそも山に魅力を感じたのはなぜでしょうか。

ネパールのアンナプルナで撮影した13歳のときの南谷さん(右から2人目)= 公式ウェブサイトより

初めて山に登ったのは香港の中学に通っていた13歳のとき。香港中の山を登ってその後、ネパールのアンナプルナ(ヒマラヤ山脈に属する山群)を訪れたときにエベレストを見て「絶対に登りたい。登れば本当の自分になれる」と思いました。というのは、父が貿易関係の仕事をしていたため、私は幼いころからマレーシアや中国、日本を行き来して2年に一度は学校が変わる状況でした。両親の仲は良くなくて、既に離婚しています。学校でも、家の中でも、自分が何者なのかアイデンティティーを模索し続けていました。エベレストに登れば自分の成長につながるとも信じました。感じるインスピレーションは山によって違うのですが、美しい景色を仲間とシェアすること、普通は出会うことのない人と仲間になれることなど、心が洗われる体験ができます。

――具体的にエベレスト登頂計画を立てたのは17歳。「19歳でエベレスト」というゴールを決めて逆算していったそうですね。

エベレスト登頂に成功した南谷さん。ユニクロから提供された特製ダウンを着て登った

エベレストに登りたいと父に言ったら、「いいんじゃない。でも資金面でのサポートはしない。自分でやりなさい」と言われました。しかし、資金を集めるためにどうすればよいのか。エベレストはネパール政府に支払う入山料だけで100万円以上かかります。日本人最年少の登頂記録を調べたら、20歳までに登れば記録を更新できる。この計画を魅力的にPRすれば、資金を集められるのではないかと考えました。高校2年生の私がいくらアルバイトをして資金をためても、20歳のタイミングには間に合いませんので、計画達成のためにはスポンサーを見つけることが必要でした。高校3年生の夏休みから本格的に始めました。

――スポンサー探しでは、どのように自分を売り込んでいったのですか。

当時の私は高校生ですので、登山家として知名度があるわけではなく、コネクションもありません。高校の授業が終わった後、30キロのベストを着て毎日トレーニングをしていました。大学進学の勉強とトレーニングの合間に「エベレスト登頂の日本人最年少記録を打ち立てます」と、企業やメディアにひたすらメールを送りました。最初はどこも話を聞いてくれませんでした。返事もほとんど来なかったのですが、続けているうちに東京新聞と読売新聞が取材してくれたんです。

2014年12月の夕刊で「エベレストへ女子高生挑む 2年後 国内最年少目標」などと大きく紙面で取り上げてくれて、エベレスト登頂へ向けたトレーニングの一環として南米最高峰のアコンカグア(6,959m)に登ることが紹介されました。その記事を読んだ高齢の女性から「登山が好きだったが私は歳で登れません。自分の夢を託したい」と100万円の寄付をいただきました。それから次第にスポンサーがつき、資金のめどが立つようになりました。プロジェクトも「七大陸最高峰登頂を目指そう」と大きくなり、早稲田大学校友でもある柳井正さん(1971年、政治経済学部卒)が代表取締役会長兼社長を務めるユニクロのスポンサードを受けるようになり、火が付きました。その後、南極点・北極点も目指すようになりました。

――南谷さんは大学生ではありますが、既に社会人のように活躍されています。その自立心はどこから来ているのでしょうか。また、危険を伴う冒険についてお父さまから心配されませんでしたか。

父は根拠のない自信があり、大丈夫だと思っていたようです。登山のことよりも、大学をきちんと卒業することの方が心配されています(笑)。幼いころから父は放任主義で、中学2年から通っていた香港のブリティッシュ・スクールも生徒の自立を促す教育でした。学校でイベントを開催するときでも、資金は生徒自身の手で集めなければなりませんでした。そういうことが背景にあるのかもしれません。

――若くして偉業を達成して、なお早稲田大学で求めていることは何なのでしょうか。

2018年6月、南谷さんは早稲田大学総長賞を受賞(左は鎌田薫前総長)

大学で学ばなくても、自分で本を読めば知識は身に付けられる、と考えていた時期もありました。私の周りには大学に行かずに起業した人も多く、「大学で学んだことは社会では使わないよ」と言う人もいました。行かなくてもいいか、と思ったことも。しかし、他の学生と一緒に切磋琢磨(せっさたくま)し合う環境は、社会に出てしまうとあまりないな、ということに気が付きました。1年、2年、3年と休学を挟んだことで、そう思うようになったのです。今の環境を大切にして、こつこつ勉強して行くことも私にとってのチャレンジだと。

――大学ではどのように過ごしているのですか。

必修科目が残っていて、毎日授業に出ています。中国に住んでいたので、本野英一教授(政治経済学術院:中国近代史・アジア経済史)の授業が好きで、英語で行われる大学院生向けの世界の経済史を学ぶ授業にも出席させてもらっています。古い資料を読み解くセッションで、本野教授の情熱的な講義に引かれました。卒業していく友人も多いのですが、留学していた友人、大学院に進学する友人は早稲田に残っているので一緒に勉強していきます。大学は4年で卒業しなければいけない訳ではないので、そんなに焦ってはいません。残りの学生生活をエンジョイして、家族との時間も大切にしながら過ごしていきたいと思っています。

――では、挑戦しようとしている新入生に向けてアドバイスを。南谷さんは高校生のとき、ある登山家の方から「君みたいな女の子がエベレストに登るなんて無理だ」と言われ、その反骨心もあって山に登ったそうですね。挑戦を否定してくる人には、どのように対処していくべきだと考えますか。

最終的に可能性を広げるのも、つぶすのも自分自身です。そのような言葉を聞いて、自分で挑戦を諦めてしまうことだけは避けてほしいですね。自分の力を信じて絶対にできると思い、何事にも前向きに取り組んで、自分に対してポジティブなことを言ってくる人を周りに置くことが大事です。ネガティブが1、ポジティブが9という割合にして、サポートしてくれる人が常にそばにいる環境を自ら作っていくことも、挑戦を成し遂げる秘訣(ひけつ)だと思っています。

北極点を目指して歩く南谷さん

自分の心のコンパスに従うことも大事。「おいしい」とか「きれい」とか、私は日常でいいなと思ったことや感じたことを声に出して言っています。最後の七大陸最高峰となったデナリ(アラスカ)では、テントが吹き飛ばされるほど強い吹雪が9日間も続く中で「死ぬ」と思い、衛星メッセンジャーのSNSで父に「愛している」と投稿しました。そんな経験をすると、空気を吸っているだけでも「なんて幸せなのだろう」と思えます。例えば天気がよく、友人と楽しい恵まれた時間を過ごしていたとしても、そのありがたさを見過ごしてしまいがちですが、日常からあえて幸せを意識するようにしています。

撮影=石垣星児

第723回

南極点での南谷さん

【プロフィール】
神奈川県出身。東京学芸大学附属国際中等教育学校卒業。今後は海の冒険にも挑戦する予定で、現在はセイリングのトレーニングを行っている。幼いころから楽器を習い、ピアノが趣味。最も好きな山は「富士山」。秋に登ると頂上のこま犬を雪や氷が覆い、ダイヤモンドのようにきらめく情景が幻想的とのこと。南谷真鈴公式サイト http://marinminamiya.com/

2015年 1月  18歳。アコンカグア登頂(南アメリカ大陸)※
2015年 3月  阿弥陀岳(長野県)
◆250mの滑落事故。死を覚悟したが無傷の生還。
2015年 4月  早稲田大学政治経済学部入学
2015年 8月  キリマンジャロ登頂(アフリカ大陸)※
2015年 8月  モンブラン(西ヨーロッパ最高峰)
2015年 12月  コジオスコ登頂(オーストラリア大陸)
2015年 10月  マナスル登頂(ネパール)女性世界最年少
2015年 12月  ヴィンソン・マシフ登頂(南極大陸)※
2016年 1月  19歳。南極点踏破 ※
2016年 2月  カルステンツ・ピラミッド(オセアニア最高峰)※
2016年 3月  エルブルス登頂(ヨーロッパ大陸)※
2016年 5月  エベレスト登頂(アジア大陸)※
2016年 7月  デナリ登頂(北アメリカ大陸)※
◆強い吹雪で命の危険にさらされる。
2017年 4月  20歳。北極点踏破 ※

※は探検家グランドスラム

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