Waseda Weekly早稲田ウィークリー

学生注目!

中国からやって来た武術研究者 剣術・槍術で全日本選手権連覇を経験

「武術の存在意義を明確にし、健康増進、国際交流などの面で貢献したい」

大学院スポーツ科学研究科 博士後期課程 3年 劉 暢(りゅう・ちょう)

出場者が1,500人を超える「全日本武術太極拳選手権大会」(日本武術太極拳連盟主催)は、太極拳をはじめとした武術を競う大会です。同大会の「剣術」と「槍術(そうじゅつ)」の2種目において2016年から2年連続優勝を達成した劉暢さんは、中国からの留学生。現在、大学院スポーツ科学研究科の博士後期課程に在籍し、競技者としてだけでなく、研究者としても武術に向き合う劉さんに、日本での競技生活や研究について話を聞きました。

――まず、「武術太極拳」とは何でしょうか?

太極拳だけでなく、長拳、南拳(なんけん)といった中国の拳法も含めたものを総称して「武術太極拳」と呼んでいます。日本では太極拳愛好者が多いこともあり、普及のために付けられた名称です。「武術」と言っても動作がそれぞれ異なり、剣、刀、槍(やり)、棒などを使用する武器術もあります。その中で、私は主に「長拳」、「剣術」そして「槍術」を専攻しています。

太極拳のようなゆっくりとした動作は健康にいいと言われているので、競技スポーツとしてだけでなく生涯スポーツとしての側面もあり、大会でも太極拳には80代の人も出場しています。子どもから高齢の方まで幅広い世代が一堂に会するスポーツはあまりないと思うので、会場にいると不思議な感じがします。

7月に開催された第35回全日本武術太極拳選手権大会(槍術)。惜しくも2位

――では、武術を始めた年齢やきっかけ、日本での競技生活について教えてください。

5歳のとき、暴れん坊だった私を見かねた父が地元の武術チームに入れました。小学校5年から3年半ほど、父の仕事の関係で島根県松江市に住んでいたのですが、その間も松江武術隊に参加していました。中国帰国後、高校・大学生のときに都大会レベルの北京の大会に出場して1位になったり、全国大会の剣術で3位になったこともあります。現在は埼玉県和光市にあるNPO法人太極拳友好協会(TFA)で週3回、小中高校生に武術を教えながら練習しています。太極拳は日本でも有名ですが、武術太極拳となるとまだまだマイナーで練習設備が整っていないため、試合前になると、近くの公園で練習することもあります。

中国では先生も練習も厳しかったので我慢強くなりましたし、プレッシャーに耐えられるようになりました。武術を通して学んだことが今の留学生活や学生生活にも役立っていると思います。

――日本の大会にも出場し、好成績を収めていると聞きました。

第35回全日本武術太極拳選手権大会(剣術)。表演服は中国でのオーダーメード

「全日本武術太極拳選手権大会」は5部門34種目あり、私は2016年から「槍術」と「剣術」の2種目に出場しています。2016年、2017年と両種目で2連覇を達成し、2017年度には「早稲田学生文化賞」を受賞しました。3連覇を目指し今年も出場したのですが、残念ながらどちらも2位でした。1位になったのは自分より若い世代の選手で、日本の競技レベルが上がっている実感があります。それに今大会に出場した教え子たちの中に1位をとった子も何人かいて、これからは自分が出場しなくても、彼らを1位にしていけばいいと思うようになりましたね。

――留学先に早稲田大学を選んだ理由を教えてください。

ヨーロッパやアメリカへ留学する友達がいたので、自分もどこかへ留学しようかという漠然とした考えはありました。武術をテーマにした卒業論文執筆にあたり文献を探していたとき、現在の指導教員である志々田文明先生(スポーツ科学学術院教授)の論文に出合いました。先生にメールで質問をしたところ、丁寧なお返事をいただきました。先生からは学問だけでなく、人間性などの面においても教わることが多く、その学識と人格に惚(ほ)れ、4年前に修士課程からの留学を決意しました。研究者である父を超えたいという気持ちもあり、現在は博士課程まで進んでいます。

(写真左)2016年8月、中国で開催された第2回全国武術運動大会および武術科学大会にて
(写真右)2014年10月、ポーランドでの第3回格闘技・武術世界科学会議)にて若手研究者賞を受賞

――研究内容について教えてください。また、学生生活はいかがですか。

2017年9月、日本武道学会第50回大会にて

中国ではスポーツ心理学、運動心理学を専攻していました。心理学を選んだのは、実際に大会に出場して、1位と2位の差は実力よりも心理的なものなのでは、と考えたためです。武術太極拳は幅広い年齢層の方々に親しまれ、従来の人を殺傷する技術から心身を健康にする技術へと変容しています。現在の私の研究ではその変容過程と今後のあり方について注目しており、社会に役立つため武術太極拳は何ができるのかを考えていきたいです。博士号取得後もしばらくは日本で研究を続けたいと考えています。

来日当初は寮に住んでいて、そこで文学や国際関係など専門分野の異なる友達ができ、関心のある事柄について議論することもありました。研究をしていると物事への視点や考えが偏りがちになるのですが、国外に出たからこそ見えた部分もあります。今は時間が足りなくて1日30時間あればいいなと思いますね。そして増えた6時間分を睡眠に充てたいです(笑)。

――将来の夢を教えてください。

武術にずっと関わっている中で、もう少し広い視野や考えで、スポーツや人のためになることをしたいなと思うようになりました。日本では武術、特に太極拳をする人は増えていますが、研究をしている人はまだ多くありません。まずは研究で武術の存在意義について明確にした上で、健康増進、子供の体力増強、さらには地域活性化や国際交流などの面で貢献していきたいです。

第712回

【プロフィール】中国・河南省洛陽市出身。北京体育大学運動人体科学学院卒業。武術だけでなくスポーツ全般が好きで、大学時代にはサッカーチームに所属していた。小学校5年から3年半ほど島根県に住んでいたため日本語が堪能。夏目漱石や川端康成、村上春樹といった小説も日本語で読んでいる。現在、国際武道大学では非常勤講師として「東洋の武術」を担当している。

早稲田学生文化賞について

早稲田学生文化賞は、2001年5月に制定され、学生の課外活動を奨励するために、 特に優れた成果を挙げたものを表彰の対象としております。2018年度の応募受け付けは12月上旬に開始する予定です。自薦・他薦を問いませんので、ふるってご応募ください。なお、表彰は2019年3月中旬に行い、受賞者に賞状を授与し、授賞理由を戸山キャンパス学生会館内のプレートに刻み、永く栄誉を称えます。

【参考】2018年度早稲田学生文化賞について

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