「ボウリングは情報戦。チームメートのため、いかに自分の投球で情報を引き出せるかが鍵」
公認サークル「ボウリングクラブ」
基幹理工学部 4年 佐古 健太郎(さこ・けんたろう)
先進理工学部 2年 山下 諄也(やました・ともや)

山下さん(左)と佐古さん(右) 談笑しながらの取材風景
関東でボウリングをやっている大学生の誰もが目標とする「関東学生レギュラーリーグ」の1部リーグで4連覇を達成した公認サークル「ボウリングクラブ」。4連覇の立役者でもある山下諄也さんと佐古健太郎さんは二人で「関東学生選手権大会 ダブルス」2連覇や、個人でも「大学オールスターゲーム」の関東代表にそれぞれ選抜されるなど、目覚ましい活躍をしています。そんなノリにノっている二人に、ボウリングの魅力や今後の目標などについて聞きました。
――ボウリングを始めたきっかけについて教えてください。
山下 小学校1年生のときに家族に付いて行き始めたのがきっかけです。父親も母親も兄もやっていて、自分は特にやりたいわけではなかったのですが(笑)、週1~2回は行っていましたね。その流れで小学校4年生からはボウリング教室にも通うようになりました。
佐古 私は家族に遊びでボウリング場に連れて行ってもらったのがきっかけで、なぜかは分かりませんが「これを続けたい」と思いました。地元の広報誌にボウリング教室の案内を見つけて興味を持ち、習い事として小学校3年生から6年生まで通っていました。中学校に進学する際にも、ボウリング部があるところに入るのを目的に学校選びをしました。
――ボウリングの魅力はどんなところにありますか?
山下 子どもの頃はボールを曲げてピンを倒し、スコアが出れば楽しい、で終わりだったのですが、今はレーンのオイル状況なども読むようになりました。 レーンの一部にはあらかじめオイルが塗ってあり、投球によってボールにオイルが付きます。 同時にレーンに付いたオイルが剥(は)がされたり延びたりもしているので、1球投げるだけでもレーンの状態が変化するんです。だから自分が毎回同じ投球精度で投げることも大事ですが、チーム戦だと自分の前に投球するメンバーとの連携や全体の作戦も同じくらい大切になってきます。これらのことは回転をかけられるぐらいの技術が身に付かないと分からないことです。

山下さんは長身を生かしたきれいな投球フォームが持ち味
佐古 そうそう、ボウリングってスポーツだけど、思っているよりも体の筋肉を必要としませんし、要は情報戦なんですよね。いろいろな情報をいかに読むかの方が大事で、読み取った情報によってこちらのやり方を変えていくことも必要です。例えばボール一つを見ても、表面の材質や、重心の位置に違いがあるため、それらによってボールの動き方、回転の仕方が全然違います。レーンのオイル状態によってボールも使い分けるので、私は1試合だけでも8個くらい持ち込むことにしています。
佐古 自分の投球精度が毎回完璧というわけにはいかないので、許容範囲といわれる、標準のオイル状況の場合との曲がり方の違いを見つけるのが難しいのですが、同じチーム内でも個人によって許容範囲の感じ方が違うため、その感じ方の違いをどう生かしていくかというのが、チーム戦の醍醐味(だいごみ)です。チーム戦は1チーム5人の形式が多く、一つのレーンで5人が順番に投げていきます。投球順番でもそれぞれ役目があって、1投目の人の投球を見て曲がり具合を確認し、その後の対策を変えることもあります。いかにレーンの情報を正しくチーム内で共有できるかが勝負に直結します。必ずしもみんながハイスコアを打たなくてもいい、誰か一人がハイスコアを打って、他はロースコアを打たないようにするという、それもチーム戦の際の立派な戦略になります。そうした戦略の下、個人ではなくチームみんなでハイスコアを出せたときは、ものすごく楽しいです。
(写真左)レーンのメンテナンス表。オイル量が多いと曲がりにくく、逆に少ないと曲がり過ぎてしまう。これを参考にゲームを組み立てる
(写真右)二人が使っているボールは15ポンド(約6.8キロ)。ある程度の重さがあると、ピンも多く倒れやすい
――「関東学生レギュラーリーグ」の1部リーグで4連覇中ということですが、どんな思いがありますか。
佐古 1部リーグは6大学のみが選ばれる狭き門なんです。自分が2年生のときまで早稲田は2部リーグだったのですが、自分たちの代で何とかしてやろうと奮起しました。春と秋で半期に1度行われるこの大会は、一度降格すると、再度昇格するのに半年かかるため、どの大学のチームも力を入れて臨みます。試合に勝つためには先ほどお話ししたチームメンバー内での役割分担や戦況を見ることが重要になってきます。そういったことをいろいろと考えながら勝ち取った4連覇は自信につながっています。
ボウリングは大学から始めた人より、それ以前にやっていた人の方が明らかにアドバンテージがあるので、他大学の体育会系の部では推薦で経験者を入学させるところもありますが、早稲田はサークルのためそれも無く、実は私の周囲の知り合いなど、経験者を早稲田大学に誘うところから頑張りました(笑)。山下も私が声を掛けた一人です。
山下 リクルートされました(笑)。早稲田でボウリングをするために頑張って勉強しました。
佐古 それでも5人全員を経験者だけでそろえるのは難しいため、大学から始めた人を育て、できるだけ楽に投げられるように技術やメンタルを鍛えることなども意識しました。そうして徐々にチーム力が付いてきて、私は現在5人目のアンカーとして投げる立場ですが、みんなの期待を背負って投げて勝利を決めたときはうれしかったですね。

レギュラーリーグ4連覇目の表彰式(後列右端が佐古さん、後列右から2人目が山下さん)
佐古 早稲田のチームとしての強みは、山下が司令塔の役割を担って、レーンの状況、対戦相手の途中経過をうまく分析して、統制がとれているところです。私はそれに従ってひたすら投球するのみです。
山下 個人の能力だけ見ると早稲田より上の大学もありますが、チームとしてのまとまりという面で早稲田は強いのだと思います。
――ボウリングで培ったことが生活の他の場面で生きることはありますか?
佐古 もしかしたら前よりも他人のことを考えるようになったかもしれません。これをやったら次の人にどんな影響があるか、前後の影響を想像する力はボウリングを通して学んだことです。
山下 自分はメンタル面が強化され、集中力が増したと思いますね。自分が集中できているときとできていないときではスコアがまるで違うという経験があるため、自分が集中できている状態かどうかを自分で分かるようになったと思います。

佐古さんのダイナミックな投球にはファンも多い
――今後の目標について教えてください。
山下 11月の全日本大学選手権で優勝したいです。昨年は3位、一昨年は2位でまだ優勝できていないので…。また、今年も9月から10月にかけて行われる関東学生レギュラーリーグ大会で5連覇を目指したいです。佐古さんと一緒にできる最後のレギュラーリーグなので結果を残したいですね。
また、今年から始まった「大学オールスターゲーム」の関東選抜選手にも、佐古さんはファン投票で、僕はボウリング連盟の推薦で、選抜12人のメンバーの1人としてそれぞれ選ばれました。いずれも一生懸命頑張りたいです。
佐古 ボウリングに関しては山下と同じです。大学院修了後の就職に関しては、まだ先の話ですが、安定した仕事に就きたい堅実派です。できれば現在の研究を生かした仕事をして、趣味でボウリングを続けられたら最高ですね。
第710回
【プロフィール】
佐古 健太郎
神奈川県出身。青稜高等学校卒業。ゼミでは仮想通貨に使われるブロックチェーン技術をそれ以外の分野に応用する研究をしており、今後大学院へ進学して研究を継続することを予定している。好きなアーティストはAAA(トリプルエー)。好きな食べ物はラーメン。

そろいのチームウェアでダブルスの試合に臨む
山下 諄也
東京都出身。拓殖大学第一高等学校卒業。ボウリングの試合中はチームの司令塔として戦況を読む頭脳派だが、ボウリング以外の時間は「暇さえあれば寝ていたい」と、あくまでマイペース。将来の夢は、全国各地のおいしいそばの食べ歩き。