「観客の喜ぶ顔を見るのがうれしくて続けることができた」
大学院基幹理工学研究科 修士課程1年 西村 政輝(にしむら・まさき)
昨年8月に開催されたチアリーディング日本一を決める「JAPAN CUP2017日本選手権大会」(※1)社会人部門に、「チアリーディングチームREGULUS」のメンバーとして出場し、チームとして10年ぶりに優勝を果たした西村政輝さん。この春から大学院に進んだ西村さんが学部生のときに所属していたのは「早稲田大学男子チアリーディングチームSHOCKERS」(公認サークル)でした。世界的にも珍しい男子チアリーディングチームから、男女混成チームREGULUSへ活動の場を移した理由や大会優勝とSHOCKERSへの思いなどを聞きました。
※1 チアリーディング日本選手権大会、通称「JAPAN CUP」。公益財団法人日本チアリーディング協会が主催するチアリーディングの全国大会で、例年8月下旬の金曜日から日曜日までの3日間に行われる。チアリーディングのみの大会では日本最大の規模。
――チアリーディングチームREGULUSに入ったのはなぜですか。
3年生のときの早稲田祭2016を最後にSHOCKERSを引退したのですが、もっとチアリーディングを続けたいと思っていました。また、SHOCKERSは男子チアならではの力強く迫力のあるパフォーマンスが魅力ですが、全国的に男子チアのチーム数は非常に少なく、競技として大会に出場することはできませんでした。僕は大学院に進む予定で就職活動もしていませんでしたし、競技スポーツとしてチアリーディングを続け、大会に出たいと考えていたところ、OBの先輩が所属していたREGULUSを紹介していただき、昨年4月に入りました。
――REGULUSは男女混成チームですが、SHOCKERSとの違いはありましたか?
チアリーディングには、「トップ」「ベース」「スポット」の三つのポジションがあります。一番上で空中を舞うトップを下で支えるのがベースで、司令塔的な役割をするのがスポットです。通常1人を持ち上げるには3人必要で、ベースの2人がトップの足をそれぞれ支え、スポットが後ろから支えます。僕はSHOCKERSではスポットだったのですが、REGULUSではベースになり、新しいポジションに慣れるために後輩を相手に練習を繰り返しました(笑)。
また、男女混成チームのトップは女子です。「トス(※2)」の際にベースはスクワットのような動作を入れるのですが、その深さやトップが上に乗るときのステップの数が男子のときとは異なります。そこで、周囲と合わせられるようになるまで少し時間が掛かりました。
※2 トップを飛ばして空中でアクロバディックなことをする技
左:決勝での演技。チアリーディングの技の一つ「パートナースタンツ」(前列の一番右が西村さん) 右:優勝の瞬間。ガッツポーズをする西村さん(中央)
――JAPAN CUPにはどのように臨まれたのでしょうか。
社会人部門には強豪が2チームいて毎年どちらかが優勝していましたが、REGULUSは準決勝で1位通過することができ、今回は優勝の可能性がありました。ただ、準決勝では唯一僕のところでトップの前宙が回転不足になり、きれいなキャッチができなかったために減点されてしまったんです。試合後泣いてしまったトップの方のためにも、翌日の決勝では絶対に成功させて必ず優勝するんだという気持ちで、準決勝の試合や練習のときの動画を何度も何度も繰り返し見て、演技のイメージ作りをしました。
決勝当日はプレッシャーもありましたが、動画を見たおかげで練習通りに全ての技を成功させることができました。優勝した瞬間はすごくうれしかったです。
この大会では、チームスポーツとして1点を競い合う独特の緊張感なども味わうことができました。僕にとっては、SHOCKERSがあったことでREGULUSと出会うことができたので、本当に良かったと思いました。
――ところで、西村さんはなぜSHOCKERSに入ったのですか?
新歓のときに11号館前で見たステージに感動したからです。迫力に圧倒されましたし、どういう原理であんな風に人が飛んでいるんだろうと、純粋に感動しました。高校からやっていたバスケットボールのサークルも考えていたので悩みましたが、どうせなら大学では熱いことをしたいと思ってSHOCKERSに入りました。
想像はしていたものの、練習量の多さにくじけそうになりました。入った当時は筋力がなかったので、タンブリングやシングル(トップ1人をベース1人で持ち上げるスタンツ)を繰り返し練習しました。週4日の練習と自主練習、週末にはイベントが入るのでほぼ毎日がSHOCKERSの活動で…。僕は基幹理工学部だったので文系より授業数も課題も多かったですし、一人暮らしでアルバイトもしていたので、練習に向かう電車の中では課題をするか、寝るか、でした(笑)。
――辞めたいと思ったことはなかったのですか?
最初は何度もありました。でもやはりメンバーと一緒にステージに上がるのが楽しかったですね。チアリーディングは息が合わないと失敗しますし、一つのミスが大けがにつながる危険性もあります。本番で最高のパフォーマンスができるよう、練習は120%の力でやっていましたし、ステージで技が決まったときの高揚感や観客の方の喜ぶ顔を見るのがうれしくて続けることができました。
一番感動したのは最後のステージとなった2016年の早稲田祭です。1万人くらい見に来てくれたとも聞きましたが、大勢の方が集まってくれた中で演技ができ、引退を迎えることができたので幸せでした。あのときは号泣しましたね。最後までみんなとやってきてよかったと思った瞬間でした。
――今後の目標は何ですか?
今年もJAPAN CUPに出て連覇を狙いたいです。昨年は10年ぶりに優勝しましたが、勝ち続けることの方が難しいので挑戦したいです。大学院での研究ももちろん頑張ります。
将来の夢は、できれば海外で仕事をしたいと考えています。中学生まで住んでいた米国・デトロイトでの生活が楽しかったのと、その頃の友人もいるので“故郷”に戻りたいと思っています。日本の満員電車や渋滞が苦手というのも理由ですが(笑)。
撮影=笹津敏暉(2018年3月 商学部卒)
第699回
【プロフィール】愛知県出身。早稲田大学本庄高等学院卒業。小学5年生から中学3年生の1月まで、米国・デトロイトで過ごす。自立心が強かったことと東京の上位校に行きたいとの思いから、寮がある本庄高等学院へ進学。筋力アップのための練習とプロテイン摂取、そしてラーメン好きのおかげで体重が15キロくらい増えたのだとか。2018年3月に早稲田大学基幹理工学部を卒業し、4月から大学院基幹理工学研究科へ進学。光通信ネットワークの研究に励む。