早稲田大学第一文学部出身の俳優・藤村俊二さんが1月25日(水)、お亡くなりになられた事が報道されました。82歳でした。さまざまなテレビ番組、ドラマや映画で活躍され、最近では『ぶらり途中下車の旅』(日本テレビ系)のナレーターを担当していましたが、2015年12月に降板し、療養されていました。哀悼の意をささげるとともに、2002年5月に早稲田大学で講演された、学生たちに残していただいた言葉を当時の『早稲田ウィークリー』から振り返ります。
ワセダ・カルチャー・トーク2002ダイジェスト(5月22日) 俳優 藤村俊二氏
「僕はズルイ生き方をして、ズルイじじいになった」と、力の抜けた自然体のトークに観客は魅了され、笑いの絶えない一時間であった。「他人と比べて物事を考えずに、自分がどれだけ満足できるかが大事」とおっしゃる藤村さんの生きるヒントとは?
水面下ではジタバタしても、すまし顔の水鳥は美しい
僕の世代は人前で努力している姿を見せるのが恥ずかしいの。ミュージカルで、5回転ターンして、「どうだ」ってキメるより、何事もなかったかのように2回転で終わる方が好き。水面ではすましている鳥の美しさが好きなんです。けれど、5回転回れるまでの下地をつけるのは大事なことです。
三谷幸喜さんのドラマに出演したときに、彼にすっかり見抜かれていて、ずっと寝てる役だったんです(笑)。せりふが一つ、「もう、これ以上みっともないことは良そうよ」って。このせりふは強烈で、今でも毎晩自分に言い聞かせてます。「これ以上」だから、毎日みっともないことしてていいんですよ。
なりたい自分には消去法で
最近、大人になりたくない若者がいるそうですが、僕が子どものころはカッコイイ大人がたくさんいたので、早く大人になりたかったんです。でも、魅力的な人の真似をして、自分もそうなれないと惨めでしょう。だから、なりたくない奴のイヤな部分を自分から削っていく。そうすると楽になりたい自分になってくる。消去法の技術とでも申しましょうか。ズルイですかね。
一生懸命が美徳とされがちですけど、ずーっと力入れているとそれがエライと思い始め、頭が固くなってしまう。時にはボーッと静止する駆け足しない人生態度も大事だと思うんです。
3つの「き」、元気、陽気、勇気があれば、たいがいのことができます。それでも駄目なら時という「き」があります。焦らないでゆっくりと進んでください。
2002年6月13日発行『早稲田ウィークリー』第966号より