Waseda Weekly早稲田ウィークリー

学生注目!

歌舞伎役者・中村鶴松 亡き勘三郎「3人目のせがれ」 

歌舞伎界をリードする存在になりたい

文学部 4年 中村 鶴松(なかむら・つるまつ)

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子役時代の中村さん(舞台制作:松竹株式会社)

伝統を重んじる歌舞伎界。子どものころから厳しい稽古を重ねた名門の出身だけが活躍できると思われがちですが、中村鶴松さんは一般家庭からその世界に足を踏み入れ、「中村屋」の部屋子(※)として、今では人気の若手役者になりました。故・18代目中村勘三郎さんに「3人目のせがれ」と呼ばれるほど目をかけられていた中村さんは、公演で全国を飛び回る日々の中、どんな学生生活を送っているのでしょうか。

※部屋子…子役として一般家庭から歌舞伎役者の下に入門し、芝居や踊り、礼儀作法などを学ぶ。有名な部屋子出身の役者に、片岡愛之助さんなど。

――まず、どのように歌舞伎役者の道へ進んだのでしょうか?

親の意向で3歳のときに児童劇団に入り、5歳で歌舞伎の子役オーディションを受けてみたら、すごく楽しかったんです。親が歌舞伎好きだったわけでもなく、舞台を見たこともなかった。でも、何かの魅力に取りつかれて、のめり込んでしまったんですよ。主役のせりふを覚えて、家でずっと成りきっていたりして(笑)。そして歌舞伎の舞台に出演するようになり、勘三郎さんと共演する機会が増えてきて、『鼠小僧』に出たときに「おまえはうちの子になったらいいね」と言ってもらいました。それ以来、役者としての道を考え始め、小学5年のときに「中村鶴松」という名前をいただきました。

――部屋子として、苦労も多かったのでは?

今も師として仰ぐ中村勘三郎さんと

「鶴松」となってからは、稽古がとても厳しかったです。でも、怒られたことも全て芸につながっていくし、楽しいので、大変だと思ったことはあまりないですね。それはやっぱり勘三郎さんの存在が大きいです。歌舞伎の家には堅苦しいイメージがあるようですが、芝居さえしっかりやっていれば、プライベートのことはあれこれ言われなかったですね。公演に出ながら、中学・高校と普通に通っていました。

印象に残っているのは、中学1年のころ、勘三郎さんに「役者やめちまえ」と一喝されたとき。女形だったのですが、声変わりの時期で声が出ず、うまく芝居ができなくてすごく怒られました。勘三郎さんは、舞台の上でも容赦なく駄目出しをしてくるんですよ(笑)。でも、そうして怒鳴ってくれる存在がいることは、いい歌舞伎役者になるためにすごく大切なんじゃないかと思うんです。

――地方公演で学校を数カ月休むことも珍しくなかった中村さんですが、一般受験で早稲田大学文学部に入学。歌舞伎役者は大学に進まない方も多いですが…。

僕は歌舞伎の家の出身ではないし、将来は歌舞伎役者になるとしても、それ以外の知識も得たかったんです。勘三郎さんは大学進学には反対だったのですが、せっかく進学するなら、しっかり勉強できる大学が良かった。早稲田大学は演劇コースや演劇博物館がありますし、図書館などの施設も充実している。それに、早稲田ってなんかかっこいいじゃないですか(笑)。

公演にも出ながらだったので、受験勉強はとても苦労しましたね。また、高校3年の12月5日に勘三郎さんが亡くなったんです。そのころは中村家に入り浸りで、勉強どころではなく、精神的にも大変苦しかったですが、何とか乗り越え、晴れて第一志望に合格しました。

――かねての志望通り、演劇コースに所属。早稲田大学での学生生活はいかがですか?

最近は女形を演じることも多い

最近は女形を演じることも多い

舞台があると大学に全く来られない時期もあるのですが、やっぱり楽しいです。歌舞伎について知らないことがまだまだありますし、能や狂言、西洋演劇やバレエなど、舞台芸術について幅広く学べるので、入学して本当に良かったです。

今は、歌舞伎評論家でもある児玉竜一文学学術院教授の下で卒業論文を執筆中です(※2016年12月取材当時)。女形について文献を調べているところで、四苦八苦しつつも勉強になっています。でも、周りの歌舞伎関係者から、「卒論ができたら見せて」と言われるのが少しプレッシャーですね(笑)。

また、演劇コースには将来演劇の道に進む友人もいるので、いつか共演もしてみたいです。

――歌舞伎役者としてのやりがいは何ですか?

隈取(くまどり)と呼ばれる化粧は自身で

老人、娘、お化けや妖怪…一人の人間が、何にでも変身できるところでしょうか。最近は女形を演じることが多いので、見た目だけではない、内面からにじみ出る美しさを表現したいですね。また、舞台に上がると、ただただ気持ちがいいんですよ。わくわくしますし、大勢のお客さんに拍手をいただくことが爽快で。以前、勘三郎さんに「鶴松の先祖は歌舞伎役者だったんじゃない」と言われたのがうれしかったです。

――同世代では、歌舞伎になじみがない人も多いのでは?

確かに敷居が高いと思われがちなのですが、数百円から数千円で見られる「幕見席(まくみせき)」などもありますし、意外と気軽に入れますよ。また、最初にどの演目を見るかも大事ですね。歌舞伎の演目には「時代物」と「世話物」という2種類があります。時代物だと、舞台の派手さや衣装の豪華さだけでも楽しめますし、世話物もストーリーを追っていけば面白いはずです。ぜひ生の舞台を見て、その迫力を体感してほしいです。

――卒業後は?

もちろん歌舞伎役者です! 「就職活動はしないの?」と聞かれることもありますが(笑)。また、同世代にもっと見てもらえるように、歌舞伎の魅力を伝えていきたいですね。目標としている勘三郎さんのように、歌舞伎界を引っ張っていく存在となれるよう、これからも頑張ります。

第663回

【プロフィール】

本名、清水大希。東京都出身。東京都立白鴎高等学校卒業。中村屋18世中村勘三郎の部屋子。2000年、歌舞伎座『源氏物語』茜の上弟竹麿で、本名で初舞台。以来、子役として数多くの舞台に出演。2005年、歌舞伎座『菅原伝授手習鑑』車引の杉王丸で二代目中村鶴松を名乗り、部屋子披露。次回公演予定は、2017年2月、歌舞伎座。趣味は旅行で、昨年9月には2回も遊びに行ったほど、沖縄がお気に入り。

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