早稲田大学ラクロス部
2014年社会科学部卒業 柳田 諒(やなぎだ りょう)(左)
2014年スポーツ科学部卒業 忠平 裕司(ただひら ゆうじ)(中)
2014年スポーツ科学部卒業 左官 佑樹(さかん ゆうき)(右)
引退試合は、社会人王者と日本一を懸けた一世一代の大勝負だった。その一戦から数カ月がたつにもかかわらず、「今でも悔しいです。早稲田のユニホームを着てチームメイトと共に日本一になりたかった」と無念さをかみしめる左官さん。今春に卒業したばかりの元ラクロス部主将だ。全日本選手権決勝の直前に行われたゲームで学生日本一の座を手にし、満を持して社会人王者のFALCONSに挑んだが、本来の力を発揮できずに惜敗。ここ一番での経験の差を痛感させられた一戦だった。
念願の日本一にはあと一歩届かなかったものの、学生日本一に輝き、多くの選手がU-22日本代表に選出されているラクロス部。しかし驚くことに、その部員のほとんどが大学入学時までラクロス未経験者だという。「大学から始めても本気で“日本一”を狙えるのがラクロスの魅力です。僕の場合、それがラクロス部入部の決め手になりました」と、元副主将の忠平さん。また、エースとしてチームをけん引した柳田さんは「僕も高校までは野球部に所属していました。忠平も野球部でしたし、左官はサッカー部。もちろん高校時代も本気で部活動に取り組んでいましたが、エースでなければ4番でもなかった。だから大学では、自分がキープレーヤーとして試合を決められるようなスポーツをしたいと思ってラクロスを始めました」と、入部当時を懐かしそうに振り返る。
それぞれの熱い思いを胸にラクロスを始めた左官さんたちは、入部早々、先輩たちの力を借りて2年連続で学生日本一に。ところが、自分たちが主力となった3年次には、まさかの地区予選敗退に沈む。通常であれば3年次の学年リーダーがそのまま主将に繰り上がるのが部の伝統だったが、「もう一度日本一を狙えるチームにしなければ」と決意した左官さんは、一部員だったにもかかわらず、自ら主将に立候補。涙ながらにラクロスへの思いを語り、チームメイトからの信認を得た。そんな主将を副主将の立場から支えた忠平さんは、共にまとめ上げたチームをどのように見ていたのだろう。「下級生に厳しく指導するのではなく、まず4年生が模範となるように、日々の練習から真剣に取り組みました。すると徐々にチームの意識が変わり始め、本気で日本一を目指そうという雰囲気がチーム内に生まれました」。
結果、大学までラクロス未経験者だった3人の壮大な夢は、惜しくもあと一歩のところで破れてしまった。しかしその果たせなかった夢は、それぞれ社会人チームに活躍の場を変えて、今後も追い続けていくそうだ。ラクロスという一生の宝物と出合い、濃密な学生生活を過ごした左官さん。新入生へのメッセージにもその実感がこもっている。「4年間を通して本気で取り組める何かを見つけてほしいと思います。“日本一”を狙う機会なんて、ほとんどの人が人生最初で最後の経験になるはずですから。ラクロス部は、初心者はもちろん、多様なバックグラウンドを持った学生が所属しているので、その選択肢の一つとしてラクロスを選んでくれたらとてもうれしいです」。
第586回