教育学部4年 文月 悠光 (ふづき ゆみ)
詩と聞いてどんなイメージを抱くだろうか?小学校の授業で朗読した思い出。はたまた一人で没頭する文学作品……。多少なりとも“堅い”イメージを持つ人が多いのではないだろうか。
「もっと身近な存在としての詩や言葉に携わっていきたい」と話す文月さんは、高校在学中から史上最年少で現代詩手帖賞や中原中也賞を受賞するなど、すでに華々しい活躍を収めている注目の若手詩人である。文芸誌への詩や書評の寄稿、朗読会への参加など、いわゆる“詩人”らしい取り組みの他、FMラジオの番組に毎週新作を書き下ろしたり、タイツブランドとコラボレーションして自作の詩をプリントしたタイツを発表したりと、その活動は紙媒体だけにとどまらない。
その中でも、文月さんの詩がより多くの人の目に触れたのは、昨年、作詞を手掛けたNHK全国学校音楽コンクール(Nコン)だろう。高校生の部の課題 曲「こ こにいる」の作詞家に大抜擢されたのだ。「Nコンに参加した全国の高校生が私の書いた詩を歌ってくれたのですが、その数は、詩集を読んでくださった方の比 ではありません。また、音楽というフィルターを通すことで、言葉をより身近に感じてもらえたという手応えがありました」。
文月さんが詩 の魅力をより多くの人に伝えようと活動するその背景には、詩を書き始めたころの行き場のない思いが見え隠れしている。小学生のころ、周りの友人たちがダンスやサッカーを楽しんでいたのと同じように、言葉を紡ぎ出すことに熱中していた。しかし、「文学は難しい」といった周囲の先入観から、なかなかその個性を 認めてもらえなかったという。「詩を文学的に捉える人もいますが、私は小学生の時、高校生が書いた詩を読んで、その真似をしたのが始まりなんです。だか ら、私にとって詩や言葉というのは、すごく身近なもの。自分の詩もなるべく、日常の風景になじむような言葉でありたいと思っています」。
そんな文月さんは、詩の新しい可能性を探るべく、早稲田大学でも積極的に活動を行っている。短歌サークルに所属するのもその一環だ。「正直、詩より も難し いです」と苦笑するが、詩を推敲する際、言葉のリズムや音数を操作するのが以前よりも上達したという。その他にも繊維研究会とのコラボレーションで、文月 さんの詩からインスピレーションを受けて制作されたシャツと詩を展示する企画展を開催したことも。「写真や絵とのコラボはこれまでにもありますが、詩から シャツという、言葉を立体化させる経験はものすごく新鮮でした」。今後は詩のワークショップ企画など、詩との新しい出会いの形を模索していきたいと話す。
最後に、詩にあまりなじみのない学生のために、その楽しみ方を聞いてみた。「最初に触れるきっかけとしてはやはり朗読会がお薦めです。言葉の意味にとらわ れず、音やイメージを自由に楽しんでもらいたいですね。私の詩がきっかけになって、皆さんそれぞれにとってのかけがえのない詩や言葉と出会ってほしい。自 分の詩がその“入り口”になればうれしく思います」。
第582回