社会科学部3年 山田 虎太朗
「夢は世界に出て戦うこと!」。少し照れながらも自信に満ちた瞳で自身最大の目標を語ってくれたのは、早稲田大学スケート部ホッケー部門でDFを務める山田さん。学生から唯一選出された日本代表選手として2012年11月に行われたソチ五輪第一次予選を戦い、続く関東大学アイスホッケーリーグ戦(秋季リーグ戦)で、早稲田勢3年振りとなる優勝に大きく貢献する活躍を見せた山田さんに、アイスホッケーに懸けた日々を振り返ってもらった。
父親はアイスホッケーの元実業団選手。王子製紙アイスホッケー部(当時)の社宅で生まれ育った山田さんが、アイスホッケーを始めたのはごく自然な流れだった。友達と競い合うように練習に打ち込んだ少年時代。父親の指導で、山田さんはその才能を開花させていく。「チームの練習でうまくいかないことがあるたび、自宅で父にアドバイスを求めていました」と当時を振り返る山田さん。試合に出れば、観客席で見守る父親の表情を見ないと落ち着かなかった。「父は、『もう日本代表なんだから、おれの顔をいちいち見んなよ』って苦笑い(笑)」。父親への信頼がここまで強固なものになったのは、現役時代、体を張ったガッツのあるプレーでチームを盛り上げていた父親を、一人の選手として誰よりも尊敬していたからだ。
憧れていた早稲田へ入学し、アイスホッケーでも日常生活でも独り立ちした山田さん。「意外に一人で何でもできることが分かって、うれしかったですよ」。自分のことを寂しがり屋だと話す山田さんを支えているのは、大学で出会った仲間たち。特に、ホッケー部門のメンバーとは強い絆で結ばれているという。上下関係に捉われることなく、チームメイト同士がお互いの欠点を指摘し合い、チームとして成長していこうという風土が築かれているそうだ。
そんな環境下で成長を続けてきた山田さんは、今季、日本代表選手としてソチ五輪第一次予選に臨むことに。イギリスに2-1で惜敗を喫し、結果、ソチ五輪への出場権を獲得できなかった日本代表チーム。「情けないと思いました」。山田さんには、プレッシャーに負けて、自分のプレーができなかったことへの悔しさが残った。
ソチ五輪予選が終わると、息つく暇もなく秋季リーグ戦が待っている。もう悔しい思いだけはしたくなかった。最終戦の相手は昨季のインカレで敗戦した中央大学。試合の流れから早稲田の優勝はすでに確定的だったが、山田さんはじめ早稲田メンバーは最後まで気を緩めなかった。結果、早稲田は3年ぶりのリーグ優勝に輝く。観客席の父親を見ると、自分の成長を認めてくれたように満足そうな表情だったそうだ。
2013年1月7日〜9日に行われたインカレは、明治大学を5対3でくだし、見事3位入賞に輝いた。新年度はチームの副将として、まずは春の関東大学選手権に向け、さらなる練習に励む山田さん。彼が父親譲りのガッツあるプレーで世界のトップ選手を相手に対等に渡り合う日はそう遠くないだろう。
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■やまだ・こたろう
北海道出身。社会科学部3年。駒澤大学附属苫小牧高等学校卒業。趣味はゲーム。特技はものまね。「ものまねに欠かせない能力は観察力! 普段から人のことをよく観察して、特徴を再現しています(笑)」。