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あなたはもう行った?大型複合商業施設のビジネスモデル

社会科学総合学術院 教授 野口 智雄

東京スカイツリーの開業に合わせた東京ソラマチや、東急文化会館跡地に建った渋谷ヒカリエ、東京臨海地区のダイバーシティ東京など、ショッピング施設だけでなくオフィスやシネコン(複数スクリーンの映画館)、劇場などを併設した複合型商業施設が増えています。なぜこれほどつくられるのか? 世界や日本の状況はどうなのか? 気になるところを社会科学総合学術院の野口智雄教授に解説していただきました。

 

 

 

東急文化会館跡地に建った渋谷ヒカリエ

Q1 大型複合商業施設をつくる理由は?
A この種の施設が増えた理由は、長期化する不況によりモノを売るだけでは消費者を誘引できにくくなったことが挙げられます。消費者の感度は鋭くなり、価値感は多様化しています。1カ所で“買い物プラスアルファ”を満喫したいという消費者が増えているのです。また、インターネット上での商品販売が増えることにより、それとの差別化のために、リアルな商業施設でしか味わうことのできない“経験価値”を提供していこうという意図から大型複合商業施設がつくられるようになりました。

Q2 世界初の大型複合商業施設は?
A
計画的な集合商業施設の起源に関してはいくつかの説がありますが、米国ミズーリ州カンザスシティーの「カントリー・クラブ・プラザ」が一般にパイオニアと考えられています。1922年に開業したこの施設は、スペイン風の建築様式をとり、アートや噴水なども配備したアメニティ性の非常に高い施設でした。ただし、今日注目されるような、住宅やオフィスなどが一体化した大型複合商業施設の最初のものは、1967年にカリフォルニア州ニューポートに開業した「ファッションアイランド・ニューポートセンター」です。

Q3 世界ではどんな大型複合商業施設が話題を集めているの?
A
米国で人気のライフスタイルセンターの一形態として複合利用(mixed-use)というものがあります。2004年にロサンゼルス北東郊外につくられた「ビクトリア・ガーデンズ」が有名です。ここには、小売テナントはもちろんのこと、上質なレストランやシネコン、カルチャーセンター、オフィス、銀行に加えて、警察の派出所まで併設されています。中でもカルチャーセンターが充実しているのが特徴で、演劇やミュージカルを行うためのプレイハウス、レセプションに使えるホール、さらには図書館などまで設置されています。

英国にも、ヨーロッパ最大級といわれる巨大な複合商業施設があります。2011年にロンドンの北東部ストラトフォードに開業した「ウェストフィールド・ストラトフォード・シティ」です。ここのユニークな点はレジャー施設の充実で、17スクリーンのシネコン、英国最大のカジノ、ボウリング場などを内包しています。その他にも住宅、オフィス、ホテルなどが併設されており、まさに“シティ”の様相を呈しています。

世界最大級の規模を誇るドバイ・モール

世界最大級の規模を誇るドバイ・モール

また近年、アジアにおいては、サウジアラビアの「アブラージュ・アル・ベイト・モール」や、中国の「金源時代ショッピングセンター」などの巨大な複合商業施設が続々開業していますが、ここで紹介したいのは、アラブ首長国連邦のドバイにある「ドバイ・モール」です。2008年に開業したこの施設はエンターテインメントに力を入れていて、巨大水族館、全天候型の大規模スケートリンク、22スクリーンを擁するシネコン、さらにセガリパブリック、キッザニアなどのアミューズメント施設も備えています。

Q4 日本で初めてつくられたのはいつ? どこで?

A わが国で大規模な複合商業施設としてエポックメイキングとなったのは、「玉川高島屋S・C」です。1969年に世田谷区の二子玉川駅前に開業したこのショッピングセンターでは、128のテナントとイベントに使用できるセンターコートを併設しました。また、今日盛んにみられる地域の活性化と結びついた大型複合商業施設の開発例には、1992年に豊島区池袋に開業した「メトロポリタンプラザ」があります。この施設では、小売テナントの他に劇場、オフィス、ホテルを一体開発しました。2000年代になると、都市型の複合商業施設が続々と誕生しました。丸ビル(2002年開業)、六本木ヒルズ(2003年開業)、東京ミッドタウン(2007年開業)などです。これらは商業施設に加えて、オフィスやコンベンション施設、美術館、住宅、さらには公園といった多様な機能を内包しています。2012年は多くの大型複合商業施設の開業が話題になっていますが、これらの大型複合商業施設のある地域が注目され、大勢の人が訪れてお金を落とすことにより、施設や周辺の地域が経済的に潤うことが期待されています。

 

 

 

 

 

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■のぐち・ともお
一橋大学大学院修了。(社)日本ショッピングセンター協会顧問。2006年3月から2008年3月まで、客員研究員としてスタンフォード大学経済学部で米国のショッピングセンターの研究を行う。著書は、『流通 メガ・バトル』(日本経済新聞社)、『I型流通革命』(講談社)、『価格破壊時代のPB戦略』(日本経済新聞社)、『新価格論』(時事通信社)、『水平思考で市場をつくるマトリックス・マーケティング』(日本経済新聞社)など多数。

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