「本質」を捉えることの大切さや気付きを、他分野につなげていく
大学院アジア太平洋研究科 修士課程 2年 大木 結(おおき・ゆい)
皆さんは、「ノンコグニティブスキル」という言葉を聞いたことがありますか? 日本では「非認知スキル」(※1)と訳され、ソーシャルスキルやソフトスキルと表現されることが多い言葉ですが、私は「自分らしく生きる力」のことを指すと考えています。貧困や高齢化、若者の心の病など多くの問題を抱え、自分がしたいように表現することが難しい現代社会では、このスキルの必要性がますます高くなると感じています。
(※1)学力テストやIQテストなどで測定できる「認知スキル」とは違う、我慢強さ、忍耐力、思いやり、自信など人間の内面の力。
ノンコグニティブスキルを教育政策の中で学力と同じように伸ばしていくべきだと考える私は、ノンコグニティブスキル教育が経済効果につながることを実証できれば、政策のメインストリームの中で扱われることが可能になる、と仮説を立てました。そこで、ノンコグニティブスキルが学力を高めるために必要であり、ひいては社会に存在する機会の格差を根本から縮めていくことに貢献する、ということを証明するために、大学院で研究をしています。
私自身がこの「目に見えない」能力に関心を持つようになったのは、人間科学部の学部生時代の障がい者施設での就労経験と、オーストラリアへの留学に起因します。この二つの経験は多くの「自分と異なる他者」と出会い、どのように他者と関わっていけばいいのかを考える機会となりました。それと同時に、その過程において、慣れない環境で自分らしく振る舞えず、悩み、自分のことについて考える、いわば自分自身と向き合う時間を多く持ちました。
また、他者との距離を縮める際に外見やステータス、語学能力などの外面ばかりを意識していた自分にとって、寛容性やレジリエンス(※2)、そしてどう自分自身を捉えていけばいいのかなど、自分の内面こそが重要であると気付かされたときでもありました。こうした経験を通して、これからますます複雑になっていく社会の中では、人の内面的な力、強さを育てていくことが重要だと感じ、学部生時代には「異文化理解における寛容性育成の意義」について研究を行い、自分と他者との違いを理解する機会を持つことが育成において重要であると結論付けました。
(※2)「回復力、弾力、復元力」などと訳される言葉で、特に「困難な状況において、しなやかに適応して生き延びる力」という意味で使われる。
今こうして、大学院アジア太平洋研究科に進学し専攻を変えて学んでいるのは、自分が学んできたことを異なる分野の中で考えることで、分野横断的政策としてノンコグニティブスキル育成の可能性を探るためです。研究半ばであり、社会問題解決にこのスキルの獲得がどのような意味を持つのか、まだ結論は出せていません。しかし、国際関係学の中でも異文化理解や他者を尊重する姿勢は大きな課題であると同時に、良好な国際関係を築いていく基盤でもあります。それゆえ、ノンコグニティブスキル育成の必要性をより強く感じています。
私は2019年4月から、戦略コンサルタントとして働くことになります。これまでに学んだ「本質」を捉えることの大切さや、その気付きを他分野につなげていく経験は、社会に出て問題解決に携わる多くの場面で生かすことができると考えています。現在の研究内容とは一見すると関係がないような業界に就職しますが、教育政策について学んだ経験を、自分が進んだ場所でも必ずやつなげてみせる、という気持ちでいっぱいです。
ある日のスケジュール
- 07:00 起床・登校
- 09:00 論文執筆や課題など(朝の早稲田キャンパス19号館ラウンジが好きです)
- 10:00 日本語チューター
- 12:00 友人と昼食(その日大学に来ている友人と食べているので、毎回違います)
- 13:00 勉強
- 15:00 ゼミ
- 19:00 勉強
- 21:00 下校(歩くことが好きなので、バスはあまり使いません)
- 25:00 就寝