Waseda Weekly早稲田ウィークリー

早稲田の学問

〈保険論〉積極的に生きていくために不可欠な 生活保障設計の必要性

家族を守るお金と保険の話

商学学術院 教授 江澤 雅彦(えざわ・まさひこ)

1983年早稲田大学商学部卒業、1991年同大学院商学研究科博士後期課程満期退学、1992年八戸大学商学部専任講師、1995年同助教授、2001年博士(商学)早稲田大学、2004年早稲田大学商学学術院教授(今日に至る)、2010年~ 2014年日本保険学会理事長、主な研究領域は生命保険論、協同組合保険論(共済論)。ezawa@waseda.jp

生命保険、火災保険、自動車保険など、さまざまな保険が人々の暮らしを守るために存在する。生活リスクを保障するために、私たちが知るべき保険の知識とは。

保険の3つの機能

「保険は種類がたくさんあって、またそれぞれに『特約』が付くなどして、複雑で分かりづらい」。そうした話をよく聞く。しかしながら、保険の持つ機能はつまるところ次の3つに集約され、それぞれの保険を見るときに、いずれの機能を発揮するものであるかを考えれば、かなり頭の中が整理されるはずである。その3つの機能とは、ある特定の偶然事故の発生により、①失われた財産を復活させる機能、②減少あるいは途絶した収入を提供する機能、③発生した想定外の費用を補塡(ほてん)する機能、である。

例えば、「生命保険」といった場合、その保障内容としては、一家における賃金の稼ぎ手が死亡した場合に保険金が支払われ、またそうした者が病気などで入院・手術した場合に給付金が支払われるものもある。これは前述の②および③の機能を果たしている。

また、例えば「店舗用火災保険」であれば、火災により失われた店舗を再建するための保険金が支払われ、また店舗が再建されるまで火災によって失われた収入分の保険金が支払われる場合、あるいは、店舗再建までの間、営業するための仮店舗の賃借料を補償するものもある。これらは、前述①、②、③全ての機能を果たしている。

多様化する世帯

われわれ一般の消費者は、保険について十分な知識を持つことが難しい。そうした中でわれわれは自分たちの生活をめぐるリスクに対処するために保険を選択しなければならない。そこで重要なことは、単に保険の名称にとらわれることなく、自分が欲しているのは、上述3つのうちどの機能であるかを明確に認識し、保険を積極的に選択・購入していくことである。その際、自らの生活が置かれている状態を確認する必要がある。

まず、自分が単独世帯であるなら、自分の死亡リスクについては、葬儀費用、遺品などの処理費用を考える程度で良いかもしれない。ただ、病気やけがによる治療費、入院費などは自分の受けられる社会保障給付(高額療養費支給制度に基づく給付)などを勘案しつつ、自ら準備しておくべき金額のうちの一部または全部を民間保険で賄う必要があるかもしれない。また、病気やけがが原因で長期間就労不能状態に陥った場合も、その際の上述②の機能を求めつつ、社会保障における障害年金などを補完するものとして民間の就労不能保険を検討する必要も生じてくる。ただ民間保険の場合、メンタルな理由による就労不能状態については保険事故の範囲外(=免責)としているものが多い点は注意を要する。50歳まで一度も結婚しない人の割合が、男性で4人に1人、女性で7人に1人に達する現在、単独世帯の保険選択はいかにあるべきか、重要な課題である。

また、夫婦のみの世帯も増えつつある。彼らが「ダブル・インカム」であれば、お互いが現職中は経済的な扶養・被扶養関係は弱いかもしれない。夫婦の年齢差にもよるが、一方が退職した後、その者が受け取る公的年金(そしてもしあるとすれば企業年金)ともう一方の配偶者の賃金で老後の家計がどのような規模になるか、事前に推定し、個人年金の用意をしておく必要も生じるであろう。

各世帯に適合した生活保障設計の必要性

出典:水島一也『生活設計』千倉書房、p.119、127-129参照

以上、「単独世帯」と「夫婦のみの世帯」を取り上げたが、これらの比率は、最近の調査では、これまで家族のモデルと考えられてきた「夫婦と未婚の子のみの世帯」と同様、20%台に増えている(「平成28年 国民生活基礎調査の概況」より)。このように世帯あるいは家族の形が多様化し、各世帯が自らの状況を踏まえた生活設計、とりわけ自分たちの生活リスクの保障を将来にわたっていかに行っていくかという生活保障設計を行おうとする場合、画一的な「解」はなく、それぞれが各世帯に適合した生活保障設計を行う必要がある。

生活保障設計は、具体的には、生活リスクの保障のために上図の各種「生活保障資源」を組み合わせていく作業である。本稿で考察した保険は、「私的保障資源」のうち、「市場取引型保障資源」の一部を構成するものとされる(上図参照)。各世帯は、自らの社会、地域、職場、そして上述した世帯の状況に応じて、これら「生活保障資源」を適宜組み合わせて、生活保障設計を行う必要がある。それは、世帯を構成する者として、単に「生きている」のではなく、自らの生活目的のもと、日々、生活課題を解決しつつ積極的に「生きていく」ために不可欠な行動といえる。

(『新鐘』No.84掲載記事より)
※記事の内容、登場する教員の職位などは取材当時(2017年度)のものです。

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