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【校友インタビュー】障害者と家族の今、そしてこれから

バリアフリー化が進んでいる現代社会。しかし、それでも障害者※1たちは生活の中で人の手を必要とする場面があり、多くの場合、家族がその役割を担っている。そうした現状を変えようと、自らも病と戦いながら訪問介護サービスを提供している社会福祉士の渡邊惟大さんにお話を伺った。

※1「 障害」の表記について、この記事では渡邊さんの意向により「障害」と表記しています。

アクセスデザイニング訪問介護事業所代表 渡邊 惟大(わたなべ・ただひろ)さん

1987年大分県生まれ、千葉県育ち。2009年社会科学部卒業、11年政治学研究科修士課程修了。幼少期に筋ジストロフィーを発症。徐々に歩行が困難になり、高校と大学・大学院は電動車椅子で通学。12年に、障害者の人が障害があっても自分らしく、したいことにアクセスするための道を開きたいとNPO法人ユニバーサル・アクセス・デザイニングを設立し、障害者のための進学相談支援を開始。13年社会福祉士取得、14年合同会社アクセスデザイニングを設立し、障害者に訪問介護を提供している。

「 家族が支援するのが当たり前」という考え方

――現代の日本における障害者の生活支援は、誰がどのような形で担っていることが多いのでしょうか?

家族が支援しているケースが圧倒的に多いです。もちろん公的な障害者支援制度もありますが、その利用者はいまだ障害者全体の約2割にとどまっています。そもそも制度自体の認知度が低く、その内容も変化していることから、障害者同士のコミュニティーで交流をしたり、インターネットを利用することができたり、障害者自らが情報を手に入れられるような環境に身を置いていないと、なかなか情報にたどりつけないというのが現状です。また、地方自治体の職員の方々は制度については十分理解されているものの、制度をまだ使っていない障害者への情報提供に積極的ではないように感じます。

私自身、筋肉が徐々に衰えていく「筋ジストロフィー」という病気を抱えています。実家にいた時は、家族の介助を必要とする場面はとても多くありました。父が仕事に行く前に起床・トイレ・食事を介助してもらい、帰宅後には入浴、また夜中に起きて寝返りをさせてもらう。これを毎日です。両親も年齢を重ねていきますし、負担を掛けているなと感じ、一人で生活する練習を始めました。現在は自宅兼事務所で一人暮らしを始めて3年目。どうしても必要な時だけ家族の力を借り、日常的にはヘルパーさんのサポートを受けながら生活しています。

――日本における障害者支援の課題は何だと思いますか?

日本では障害者と社会が切り離されているように感じます。例えば、教育においては本人の意志にかかわらず、特別支援学校への入学が決められてしまったり、就職では業務の範囲があらかじめ決められている障害者雇用に限定されていたりと、とても狭い世界の中で生活せざるを得ないのが現状です。

また、日本の障害者の家族は「周りに迷惑を掛けないようにしなければ」「家族が介護するのが当たり前」といった意識がとても強いです。私の家族もそうでしたし、これがより社会と障害者の距離を遠ざけている要因の一つだと思います。実際、義務教育期間中でも自らの子を学校に通わせず、自宅で面倒を見る家族や、障害者手帳すら持たない障害者が存在するのも事実です。こうした意識を根底から変えていくことが必要だと考えています。

――海外における障害者の生活支援はどのようなものなのでしょうか?

海外では、障害者の家族が介助を行う場合は、家族に対して給付金が交付されることも珍しくありません。また、事業所を通してしかヘルパーを雇えない日本とは違って、個人でヘルパーを雇用することもできるため、障害者やその家族に対する支援制度が整っていると思います。

2015年にパリへ行ったのですが、日本ほどバリアフリーが広まっていないにもかかわらず、街中では障害者をよく見掛けました。段差のある場所で車椅子に乗った人が困っていると、自然と誰かが手を差し伸べ、去っていくのです。私も助けてもらい、お礼を言おうとしたらその人はもういませんでした。それだけ当たり前に行われていて、「だから一人でも安心して出掛けられるんだ」と日本との違いを感じた瞬間でしたね。

障害者がより暮らしやすい環境をつくるために

――NPO法人ユニバーサル・アクセス・デザイニング、合同会社アクセスデザイニングを設立された背景と現在の活動について教えてください。

NPO法人の設立を考え始めたのは大学4年生の時でした。当時の大学の障がい学生支援室では、聴覚障害を持つ学生に対するサポートはあったものの、その他の障害を持つ学生への支援体制は十分には整っていませんでした。その時、支援室のスタッフの方と話をする中で、そもそも大学・短大・高等専門学校における障害を持つ学生の割合が全体の0.22%※2と、非常に進学率が低いということを知ったのです。そこで、身体障害のある方の大学進学相談を行うNPOを立ち上げようと思い立ちました。

※2『 平成21年度(2009年度)大学、短期大学及び高等専門学校における障害のある学生の修学支援に関する実態調査結果報告書』(日本学生支援機構)より

その後NPOでの活動を続けていくうちに、そもそも日常生活で介護を受けられる環境が整っていないことから、進学の機会を得られない方が多いということに気付き、その環境づくりの手助けをしたいと思うようになりました。そこで大学卒業後、専門学校に1年間通って社会福祉士の資格を取得。2014年に千葉市で障害者のための訪問介護サービスを提供する会社を立ち上げました。現在は相談支援事業所などと連携して利用者の皆さんの相談に乗り、ヘルパー派遣の手配をしています。

――今後の目標を教えてください。また、学生の皆さんへメッセージをお願いします。

まずは地域で障害を持つ方々が生活をしやすくなるようなサポートを今後も続けていきたいです。そして、皆さんがより社会活動に参加しやすくなるような環境づくりに貢献したいですね。

学生の皆さんは、ぜひ気軽に大学の障がい学生支援室に登録して、障害のある方への支援に関わってみてください。経験がなくても支援の仕方を学ぶ講座が受けられますし、学内で支援活動を行うこともできます。きっと社会に出てからも、その経験は役に立つはずです。

(『新鐘』No.84掲載記事より)

※本書の記事の内容は取材当時(2017年度)のものです。

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