Waseda Weekly早稲田ウィークリー

早稲田の学問

”脱力系”教員に学ぶ 寄席の魅力

話芸と文芸(入門)【グローバルエデュケーションセンター設置科目】

文学部 3年 髙木 咲良(たかぎ・さら)

誰にでも学校に行きたくない日があると思います。雨が降っていたり、寒かったり、そういうことで私たちのやる気は常に奪われ続けています。でも、逆に教員にだって教壇に立ちたくない日があってもおかしくないはずです。雨も寒さも学生だけのものではありません。むしろ、そんなやる気のない学生に何かを教えなければならない先生方こそ、よりつらいものがあるのではないでしょうか?

「今日、二日酔いなんですよ」開口一番、いかにもけだるそうに授業を始める宮 信明先生(講師)はその筆頭で、彼はその姿勢を崩さないまま、見事に90分を乗り切ってみせます。

筋肉痛やらギックリ腰やらで、宮先生のやる気はいつも底をつきかけています。それでも、先生の授業はシンプルで分かりやすく、そして何より面白いのです。

講義は16号館で行われる。教室はたくさんの受講生で満席

柳亭左龍出演の寄席ビラ(明治30年代) 初代柳亭左龍は「早替り元祖」の怪談師。「宇都谷峠」「四谷怪談」などを道具入りで演じた 所蔵:早稲田大学演劇博物館 27609-028

グローバルエデュケーションセンター設置科目「話芸と文芸(入門)」では、毎回一席、落語の映像が流されます。春風亭一之輔の「初天神」、柳家喬太郎(きょうたろう)の「ハンバーグができるまで」など、落語を見るのが初めての人にも、その面白さが分かりやすいチョイスになっており、興味を持つ強いきっかけになります。全ての授業が終わるころには、自分でも調べて面白そうな会に行ってみようかなくらいには思うはずです。

実際私もその一人で、1年のころに「話芸と文芸」の授業を受けて以来、寄席をはじめとして、興味のある落語家を生で見に行くようになりました。今の時代、いろいろな形で落語に触れることはできますが、やはり高座にいる噺家(はなしか)と同じ空気を吸うことで、カメラを通してでは伝わらなかった一面が見えてくるものです。また、ただ客としているだけでは分からない、落語家の仕草や、噺の時代背景など、宮先生がポツリとこぼす有名落語家の裏話を知ると、より一層落語を楽しめるようになります。

「新作咄面白双六」(明治16年)神田連雀亭にあった白梅亭を舞台とした双六。白梅亭は正岡子規がよく通った寄席 所蔵:早稲田大学演劇博物館 130-0077

さらにこの授業では、文豪がどのように落語に親しんだのかを学ぶことができます。夏目漱石も森鴎外も無類の落語好きで、足しげく寄席に通ったそうです。彼らがなぜそんなにも落語に引かれたのか、知ってみるのもまた一興です。

三代目柳家小さん(大正初期)夏目漱石に「小さんは天才である。あんな芸術家は滅多にでるものじゃない」と言わしめた名人 所蔵:早稲田大学演劇博物館 FA1-04193

でも、大学で落語を学んで一体何になるのか、疑問に思われる方も多いのではないでしょうか。実際、落語を知っていて役に立ったという経験は、普通なかなか起こりません。就職活動の助けになることもないでしょう。しかし皮肉なことに、無駄なものこそ面白いのです。

宮先生に紹介していただいた落語会にて。落語会は最後まで演目がわからず、終了後にその日の演目を会場のラウンジに張り出す

ただ息を吸って吐くだけの一生は、あまりにも長いと思いませんか。実際的な学びで固められた時間割の中、一週間に一度くらい寄り道しても、きっとバチは当たりません。笑いに来るだけの、ただ楽しいだけの授業は、必ずやあなたに心踊る発見をもたらしてくれるはずです。

 

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