Waseda Weekly早稲田ウィークリー

早稲田の学問

独立を果たした東ティモール 復興と発展の歩みを追う

社会と戦う同世代の姿に影響を受けて

 大学院社会科学研究科 修士課程 1年 中澤 誠人(なかざわ・まさと)

プロフィール用(自然の中)1493655565648皆さんは東ティモール(※)という国をご存じでしょうか? 2002年に独立したアジアで最も新しい国で、日本の真南に位置する小さな島国です。日本では独立紛争などのイメージが強く、危険な国と思っている人もいるかもしれません。しかし、すでに平和を取り戻し、急速な発展を遂げようとしています。

※東ティモール民主共和国、通称東ティモールは、アジア(東南アジア)地域に位置する共和制国家。1999年に国連主導で独立に対する住民投票を実施し、2002年、インドネシアの占領から独立し、21世紀最初の独立国となった。

この東ティモールという若い国で、私たちと同世代の若者たちがどのように国づくりに参加していくのか、急激に変化する東ティモール社会にどう立ち向かっていくのかを、学生組織やギャング集団の政治的な行動分析を通じて明らかにするというのが私の研究の大きなテーマです。

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街の中心部で行われた大規模デモ。東ティモールの若者の政治への関心や、国に貢献したいという気持ちは非常に高い

私は長野の片田舎で生まれたのですが、非常に閉鎖的で、抑圧的で、希望が持てない環境に育ちました。そのことがきっかけになって、どうすれば私のような若者や社会的弱者がこの社会で自由になることができるのかということを、高校生のころからずっと考えていました。そんな自分がまさか大学に行くとは予想もしていませんでしたが、学校や教師というものが大嫌いだったことから教育にも強い問題意識を持ち、早稲田大学教育学部に入学しました。その後、さらに大学院に進むことになるとは、これもまた想定外でした。

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地方での滞在中にお世話になっている元独立派ゲリラ兵のお父さんと。過酷な戦いの経験を穏やかな口調で語っていた姿が忘れられない

初めて東ティモールに行ったのは教育学部2年生の夏です。現在の私の指導教授である山田満先生(社会科学総合学術院)が設立したNGO LoRoSHIP(現:学生NGO HaLuz)の活動に関わったことがきっかけでした。戦争を経験してどんなに荒廃してることだろうと思っていましたが、その予想はいい意味で裏切られました。紛争の跡は全く見られず、つらい経験をしてきたはずの人々は、優しくて底抜けに明るく、その姿に逆に衝撃を受け、東ティモールという国が本当はどのような国なのか、もっと知りたいと考えるようになりました。

そして、一年後に「トビタテ留学ジャパン」の支援を受け、東ティモールへ長期滞在することができました。滞在中は教育機関で働いていたので、子どもたちに勉強を教えたり、教材を作ったり、先生へ教育のトレーニングなどを行いました。また、できる限り東ティモールがどんな国なのか、国民がどのような暮らしをしているのか知りたいと考え、ホームステイを選択しました。このホームスティ先はいわゆるスラムの中の山の上にあり、水道もない、トイレもない、私にとって非常に刺激的な場所でした。しかし、そこでの生活を通じて本当の東ティモールの姿が見えてくるようになり、急速な発展の中で翻弄(ほんろう)される人々の、生々しい現実を身をもって知りました。

左:スラムの中に建てられた巨大な財務省のビル。この光景は東ティモールの格差の大きさを象徴している 右:いつも本当の家族のように迎えてくれるホームステイ先の子供たちと

滞在中に私と同世代の若者と交流を持ったのですが、彼らとの毎日の交流、そしてホームステイや教育機関での経験で、この国の若者を取り巻く状況の深刻さを目の当たりにしました。そのことが今の私の研究における問題意識につながりました。仕事がない、学校にも行けない、情報も手に入らない、家に帰ると邪魔者扱いされる、ストレスのはけ口もない、これを受け入れるしかないのか…。こういった若者の現状が、かつての私の状況と非常に重なって見えてました。また、このころ私は大学で地域振興という観点で、私の生まれた小さな町がこのグローバル化の中でどう生き残るかということを研究していたのですが、それもまた国際社会の中における弱小国、東ティモールの構造と非常に重なって見えました。

東ティモールは、当時は絶対不可能と言われた独立を勝ち取った戦いの歴史を持っています。そして、今も若者たちは、混乱した社会で弱者が強者に勝ち、自由を手にするために必死に戦っています。私は、その精神に強く引かれました。現状に決して屈するのではなく、デモを起こしたり、非政府組織(NGO)や会社を立ち上げたり、必死で勉強に打ち込んだり、中には反社会勢力に入って暴力的手段に出ようとする若者もいたりと、あらゆる手段で社会に立ち向かおうとしています。日本人である私も含めて、若い世代がこれからの世界でどのような行動をしていかなければならないのかということを、この東ティモールに生きる若者の姿から学んでいかなければならないと思うようになりました。

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近所の友人たちと。仕事にも学校にも行けない彼らの複雑な思いを、夜な夜な酒とタバコと共に語り合った。私の研究は彼らのためと考えている

私は早く自立したいとの思いから、当初大学卒業後は就職を予定していましたが、卒業する予定であった2017年は東ティモールで国政選挙があり、国家が大変動する年でもあったため、山田先生にも相談して急きょ進路を大学院に変更しました。

この夏約1カ月、大学から助成を受けて現地へ情報収集に行ってきました。大学院に入って、今はまだ資料集めや研究のベースづくりをしているところですが、社会と戦う若者の姿を追いかけることで、今まさに開国期といえる東ティモールの変化を分析していきたいと考えています。

【ある日のタイムスケジュール】
  • 7:00 起床・家事

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    大学への通学途中に通る「甘泉園公園」。勉強に疲れたときは気分転換に散歩をすることも

  • 9:00  TA (ティーチング・アシスタント)or 勉強 or ジム
    何もない日でも朝はできる限り早く大学に行くようにしています。
  • 13:00 昼食
  • 14:00 東ティモール人留学生のサポート
    東ティモール滞在中に教えていた学生が早稲田に留学しているので、勉強などのサポートをしています。
  • 16:00 授業
  • 20:00 勉強
    自宅では絶対に勉強はしないと決めているので、全ての勉強が終わるまでは帰宅しません。
  • 24:00 帰宅・夕食
  • 25:00 就寝
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東ティモールでの活動の「三種の神器」。活動の記録のために使用するのはもちろん、お世話になった人たちのために写真を撮ってプレゼントしている

 

 

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