Waseda Weekly早稲田ウィークリー

早稲田の学問

【未来予測】ジェンダーと家庭との関わりは多様化する

ジェンダーは「生まれつき」のものではない

国際学術院 教授 ロバーツ・グレンダ S

Cornell University卒業(文化人類学PhD.)。1996年から日本在住。東京大学社会科学研究所を経て1998年より現職。専門はジェンダー、労働、家族、移民政策。主な和文の著書「似たような成果だが経路は異なるジェンダー化された雇用規制の国際移転」(『知識経済をジェンダー化する―労働組織・規制・福祉国家』S.ウォルビー,H.ゴッドフリート,K.ゴットシャル,大沢真理 編著、ミネルヴァ書房、2016年)。

世界におけるジェンダーと労働の現状とこれからの見通しと課題、そしてその変化の中、国や企業だけでなく、私たち一人一人に求められることは何だろうか?

ジェンダーに求められる社会的役割は、文化だけでなく、時代によっても大きく変わる。歴史的、民俗学的記録を見ると、ジェンダーが「自然に」存在することはほとんどない。人類学の記録を見れば、育児を担うのが女性、意思決定や物づくりをするのが男性と「生まれつき」決まっているわけではないことが分かるだろう。しかし、政府や企業の政策立案者がそれを十分に認識していないようだ。そうしたことが一因となり、多くの勤労者が生活と仕事という相いれない目標のバランスを取るのに悩み続ける状況は、グローバル共通の課題となっている。

変容してきた日本の家庭
日本の歩みを振り返ると、戦後に多く誕生したホワイトカラーの家庭では、ジェンダーによる労働分担が進み、女性が「プロの主婦」として家庭を維持する一方、男性は「企業戦士」として収入を得た(Osawa, 2002)。しかしこの状況は、1986年に施行された男女雇用機会均等法によって大きく変わっていく。法律が日本の全ての家庭に反映されているとはいえないが、状況は次第に変わりつつある。

家族のモデルは家庭の数だけ増えていく
今日、多くの若い人が将来的に共働き家庭を想定しており、安倍内閣も女性のフルタイム就労を支援する議案を提出した。女性が出産後も仕事を続けるための社会インフラはいまだに整っていないが、人口減少や労働力のニーズにより、共働き家庭を支援する仕組みは整備されていくはずだ。

一方、共働きの家庭だけが将来の日本に適した家族のモデルではない。妻が働いて夫が子育てをしたり、子供が小さいうちは妻が専業主婦になり、その後復職したりするケースもあるだろう。また、未婚を貫く人、シングルマザー/ファーザー、同性のパートナーを選ぶ人、養子を取る人もいるだろう。家族はますます多様化しつつあり、個人のライフスタイルの幅はさらに広がっていく。私たちには、その多様性を恐れるのではなく、進んで対話し、受け入れる姿勢が求められる。どの道を選んでも、職場や社会で公正に扱われ、生活と仕事に前向きに取り組めれば、それは良い社会と呼べるはずだ。

【参考文献】Osawa, Mari. “Twelve Million Full-time Housewives: The Gender Consequences of Japan’s Postwar Social Contract.” In Social Contracts Under Stress: The Middle Classes of America, Europe and Japan at the Turn of the Century, edited by O. Zunz, L. Schoppa, and N. Hiwatari, 225-280. New York: Russell Sage Foundation, 2002.

(『新鐘』No.83掲載記事より)

※記事の内容、教員の職位などは取材当時(2016年)のものです。

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