Waseda Weekly早稲田ウィークリー

早稲田の学問

生活における健康問題③ 睡眠時間と眠気の関係

スポーツ科学学術院教授内田 直(うちだ・すなお)

滋賀医科大学医学部医学科卒業、東京医科歯科大学博士取得。博士(医学)。専門は臨床精神医学、スポーツ精神医学、睡眠医学。著書に、『好きになる睡眠医学(第2版)』(講談社)など。

いくら寝ても眠い人もいれば、少し寝れば大丈夫な人もいる。
必要な睡眠時間の違いというのは、どこから来るのだろうか。

睡眠時間には個人差があります。この理由は、まだよく分かっていません。しかし、睡眠には、日中の「疲労」を回復させる働きがあると考えられ、この働きは物質レベルでは日中にたまった疲労物質や眠気を起こさせる睡眠物質の代謝と関連があると考えられています。こうなると、物質のたまりやすい人、あるいは代謝が遅い人は長く眠る必要があり、その逆では短時間の睡眠で済むと考えるのは妥当だと思います。

また、同じ個人でも、日中の活動によって、必要な睡眠時間は異なっています。私たちは、早稲田大学競走部の駅伝選手たちを対象にして、毎日の睡眠時間が日中のトレーニング量によってどのように変化するかを調べました。その結果、夏季合宿中1日の走行距離が約32kmのときには、1日8時間45分の睡眠時間だったのに対し、夏季合宿と翌年の夏季合宿の合間の回復期では、走行距離が約19kmに減少するとともに、睡眠時間も7時間32分と1時間以上短くなっていました。これは、非常に興味深い結果だと思います。回復期の選手は自由に睡眠を取れる環境にいました。したがって、昼寝も長くしていたにもかかわらず、特殊な装置で測定した1日の総睡眠時間は短くなっていたのです。つまり、同じ個人でも日中の過ごし方によって、必要となる睡眠時間が異なってくるということを客観的に示したものだと考えられます。

睡眠に関しては、このほかにもさまざまなことが知られています。例えば、睡眠不足のつけは、長く眠ることによって返すことができますが、先に長く寝るという寝溜めはできないと考えられています。また、睡眠不足のつけは1日では返せないということも知られています。したがって、よい睡眠習慣とは、日中の活動に応じた睡眠を毎日規則的に取るということです。個人の睡眠の長さは、日中の眠気を目安にすればよいでしょう。それでも、眠気があったり、十分に疲れが取れないときには、何らかの睡眠の問題があるのかもしれません。その場合は、睡眠医療専門医を受診しましょう。良い解決策が見つかると思います。

試験や試合の前夜に「眠れない人」へ

不眠に対しては、さまざまな対処が考えられています。例えば、交感神経を優位にさせないよう、睡眠直前まで集中した勉強をやり続けない、夕方から就寝時刻までの照明を暗めにする。また、睡眠に影響を及ぼす日中の適度な運動を心掛けるなどです。しかし、それでも眠れない場合は、いっそのことしばらくは起きていて、眠れないでベッドにいる時間を短くしたほうが、結果的には長く眠れるという研究結果もあります。睡眠によって記憶が定着することはよく知られていることですが、ただ、一晩だけ眠れないのであれば、試験にしても試合にしても、集中力が著しく損なわれることはないでしょう。

時差ぼけ(ジェットラグ症候群)の克服法

時差ぼけは、海外旅行中に体内時計がすぐには現地時間になじめないことで起こります。まず、日本を発つ数日前から起床時間を段階的に早めていき、現地時間 に体をならします。また、自覚的な時刻も生体リズムに影響を与えるため、日本の空港にいるときから現地時間に時計を合わせて過ごしましょう。飛行機では、 時差ぼけの原因の一つ、旅の疲れを軽減するためになるべく眠り、現地に到着したら光の浴び方を意識すること。実は、早朝浴びる光には生体時計を早める作用 があります。到着初日は、日本にいるときの体内時計を持っていますから、日本の早朝に当たる時刻に強い光を浴びるといいというわけです。

(『新鐘』No.81掲載記事より)

※記事の内容、教員の職位および学生の所属・学年などは取材当時のものです。

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