Waseda Weekly早稲田ウィークリー

早稲田の学問

生活における健康問題② サプリメント・トクホ使用の心構え

無題

研究戦略センター教授枝川 義邦(えだがわ・よしくに)

東京大学大学院薬学系研究科博士課程修了。博士(薬学)。早稲田大学ビジネススクール修了。MBA。研究分野は脳神経科学、薬理学、経営学、研究マネジメント。著書に『身近なクスリの効くしくみ』(技術評論社)など。

サプリメントやトクホは使用法を誤ると逆効果にもなりかねない。正しい使用法を知って、健康増進に結びつけよう。

サプリメントは、文字通り「補うもの」のことであり、基本的な食生活や休息・睡眠を充分に取ってもなお、不足している場合に使用するものだ。サプリメントに含まれる成分の多くは、食材からも摂ることが可能。では、同じ栄養素を食事で摂る場合との違いはなんだろうか。

サプリメントの利点は、有効成分を効率よく摂取できることだろう。食材選びや料理の手間もなく、小さな錠剤を口に入れれば、健康管理の手助けをしてくれる。実に便利なものだ。

とはいえ、翻って、私たちが食事をしたときの身体の仕組みを考えてみよう。口に入れた食べ物を噛んで、飲み込み、消化して、栄養を吸収する。そして不要分は体外へ出してしまう。食事を摂るという作業には、このような一連の身体の仕組みがきちんと働くことにより、栄養を身体に活かしていくことまでが含まれるのだ。

身体の機能は、よく使うものは強化され、あまり使わないものは弱化される。つまり、サプリメントは便利だからと、きちんとした食事もせずにいると、食事によって働くはずの身体の機能が弱まることにもつながりかねない。身体の健康とは、元来備わった機能をきちんと発揮できるということなので、サボらず働かせるように意識を向けたいもの。

サプリメントや特定保健用食品(トクホ)は「食品」に分類されているからか、医薬品に向けるような注意なしに、漠然と口にする人が散見される。しかし、過量に摂ったり、安全性に不安があるものを使用したりすることで、健康を害する例は少なくない。日常よく目にするビタミン剤であっても、過不足による障害が知られているくらいだ。

不足しないように、とはいえ濫用は避ける。食品といえども、バランスよく、性質をよく知ったうえでの使用が望まれるのだ。

トクホが効くメカニズム

“飲むと痩せる”と期待が集まるトクホ飲料の中に、「カテキン」を成分に含んだものがある。カテキンは緑茶に多く含まれ、脂肪燃焼作用を持つ物質だ。

身体に“脂肪が付く”のは、脂肪細胞に油滴が溜まるから。ダイエットでは、それをエネルギーに転換させて、脂肪細胞を小さくしたいところ。

エクササイズで痩せるのは、運動で交感神経が活動し、そこから分泌されたノルアドレナリンが脂肪細胞に情報を送り、油滴のエネルギーが熱に変わることで、脂肪細胞が小さくなるからだ。しかし、軽度の運動では充分な情報が送られない。しっかりとした強度と長さの運動が必要だ。

カテキンは、ノルアドレナリンを分解するCOMTという酵素の働きを抑制する。これにより、軽度の運動をしただけでも、ノルアドレナリンが分解されずに充分な量の情報が脂肪細胞に送られるようになる。身体が、しっかり運動をしたときの状態になるわけだ。 とはいえ、カテキンの効果を発揮させるには、ある程度の運動が必要。トクホ飲料でカテキンを摂ったからといって、全く運動をせずにゴロゴロしていては、残念ながらその効果は望めないのだ。

 

(『新鐘』No.81掲載記事より)

※記事の内容、教員の職位および学生の所属・学年などは取材当時のものです。

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