藝術空間基礎
基幹理工学部2年 山中 悠勢(ゆうせい)
画家でもある藪野健教授と作家の井上明久先生が担当している“藝術空間基礎”は、美術・映画・文学・都市などを題材に、さまざまな視点から空間表現の多様性を立体的に捉える授業です。毎回の授業では、まず、題材とする作品に込められた作り手のメッセージの表現方法についてお二人の先生が解説されます。続いて作品を鑑賞し、最後に作品の重要なキーとなる項目について感じたことや思ったことを自由にレポートに書きます。
私はこれまでさまざまな視点で映画を立体的に見たことがありませんでした。ただの娯楽と思っていた映画も、実は作り手のメッセージを表現するための技術や手法のかたまりだと知って、変な表現ではありますが“感心”しました。また、授業のテーマである“場”について考えるところがありました。車や部屋、家屋など、映画の中で一つの場を構成している何気ない要素が、作り手のメッセージを伝えるための重要な役割を果たしているのだと思いました。例えば映画の1シーンを構成しているさまざまなもの一つ一つに“恐ろしさ”を感じさせる作り手の“仕掛け”が込められていて、それらが空間表現として効果的・立体的に受け手の記憶に作用するならば、見ている方もそれなりに恐ろしいものを感じる可能性が高いでしょう。
“芸術”とは、表現者や表現物と鑑賞者が相互に作用し合うことで精神的・感覚的な変動を得ようとする活動を意味しますが、それに関して私は先日の授業での“作品をどう感じるかは受け手に委ねる”という山田洋次監督の言葉が強く印象に残っています。私は、鑑賞者が自由に無限の解釈ができることの重要性を感じましたが、それ以上に“作り手は何を感じさせる作品を作りたいのかを明確にした上で、最後は鑑賞者に委ねること”、つまり作品の“軸”を定めておくことが大事だと思いました。