「アントレプレナーの育成」は、「起業家を育てる」「ベンチャーをつくる」であるが、「アントレプレナーシップを有した人材の育成」とは異なる。「アントレプレナーシップ」は、「自分のビジョンや信念に基づいて立てたミッション(すべきこと)を達成するために、失敗を恐れずに新しいことに挑戦する心持ち」であり、それを実行する人には、既存の企業や組織において、抵抗勢力や既得権益者に立ち向かって新しい事業の遂行に突き進む「イントレプレナー」、既存の理論や概念に異を唱えて新学説を打ち立てたり、新しい学術分野を切り開いたりする「アカデミック・アントレプレナー」(学者や大学教員のこと)、常識を覆してジレンマを含む社会課題を解決する「ソーシャル・イノベーター」などを含み、「アントレプレナーシップを有した人材」は、起業家やベンチャー経営者とは限らない。
さらに、ミッションが大きければ大きいほど、たった独りで取り組むと時間がかかったり、未達となったりする可能性が高く、チームを結成して戦略的に適材適所で取り組むことが重要となる。チーム作りのときに、自分にとってリーダーシップやフォロワーシップとは何かを徹底的に考えるきっかけとなることもある。また、いつの時代でも、企業が新事業や新商品の開発に取り組んだり、大学・公的機関で未踏の研究に取り組んだり、社会実装したりするためには、公的プログラム、投資、寄付などを通じて資金を集めることが必要となるのは当然である。
早稲田大学には、「志と心意気」「リーダーシップとフォロワーシップ」を醸成し、「資金の獲得と運用」を楽しく学び、実践できる「アントレプレナーシップ教育」があるが、さらに「アントレプレナーシップを有した人材の育成」を推し進めるべきである。そして、学生の皆さんも大学の施設・サービスを活用し、自身のアントレプレナーシップを育んでほしい。
(T.A.)
第1117回