医療経済学の手法とエビデンスが導く 医療制度の適正化
大学院経済学研究科 博士後期課程 4年 富 蓉(ふ・よう)

データ整理
私は、経済学の応用分野である「ミクロ応用計量経済学」の研究をしています。ミクロ応用計量経済学は、さまざまな仮説を検証するため、計量経済学モデルを用いて個人データを分析します。その中で、「医療経済学」と呼ばれる分野が私の専攻です。
私が日本で医療経済学を研究しているのは、少子高齢化における社会問題を解決・緩和するための公共政策が、日本は世界の中でも進んでおり、少子高齢化が急速に進んでいる中国や他国において、良い参考になると思ったからです。
医療経済学では、医療・介護保険など、医療に関わるさまざまな制度が適正に、効果的かつ効率的に実施されているかを上記の手法を用いて検証します。近年、医療政策立案や改定の際に、「エビデンスに基づいた議論を行うべきだ」と考えられているのは、医療経済学の重要性が認識された証拠だと思います。

プログラミングと論文執筆中のデスク
医療経済学の魅力は、分析で得たエビデンスで国際比較ができることです。例えば、日本の公的医療保険のコスト・ベネフィット分析結果を、アメリカやイギリスなどの研究で得た結果と比較しながら、日本の医療制度の優れた点と、不十分な点を導くことができます。その国際比較は、日本だけでなく、海外の国々にとっても重要です。
このように、日本の医療・介護制度の研究は、世界を舞台に進んでいます。私は今までに4回、海外の学会やワークショップで研究報告をしました。そのような場で海外の研究者たちと交流する機会を得られることも、研究者としての喜びの一つです。
私の将来の目標は、医療経済学の研究者になることです。国の経済状況により、医療・介護保険制度の財政は厳しい状況にありますが、医療・介護サービスの質を保つことを前提に、いかにコストを抑えるかということも、私の研究テーマの一つです。医療経済学の研究を継続し、日本の医療・介護の素晴らしさを世界に発信していきたいと思っています。
ある日のスケジュール

ワークショップで、海外の研究者たちと交流(一番左が筆者)
- 06:30 起床
- 09:30 登校 論文執筆
- 12:00 昼食
- 13:00 研究室でデータ分析
- 16:30 ゼミに出席
- 18:30 下校 夕食
- 22:30 入浴 就寝