
時代祭の行列巡行中の一枚(写真提供:John Norris)
早稲田大学には、さまざまな趣味や特技を持つ先生がいます。「教員のオフタイム」では、授業中は見せない、先生の意外な一面を紹介します。
文学学術院准教授 笹山 尚子(ささやま・しょうこ)

京都府京都市生まれ。フルブライト奨学生としてハワイ大学大学院第二言語研究科で2年間学ぶ。米国ジョージタウン大学言語学研究科博士課程修了、Ph.D(言語学)取得。東京大学教養学部特任助教・特任講師、米国ETS研究員を経て、2022年より現職。専門は第二言語習得研究、外国語教授法、第二言語テスティング
10月22日は京都にとって特別な日です。平安京(今の京都市)に都が移された日で、それを記念して毎年この日に京都三大祭りの一つである平安神宮の大祭「時代祭」が行われます。時代祭は平安遷都1100年を記念して1895年に始まったお祭りで、明治維新から延暦時代まで時をさかのぼり、それぞれの時代を代表する歴史的人物に扮した行列が、京のまちを練り歩きます。
時代祭が始まって130年目の節目の2025年、江戸時代の名妓(※1)吉野太夫(よしの・だゆう)として行列に参加する機会に恵まれました。京都市地域女性連合会の役員を務める母が結んでくれた縁で、時代祭に江戸婦人列の一員として出るのは3回目でしたが、これまでは皇女和宮(かずのみや)の女嬬(※2)役での参加だったため、新しい役柄に心躍りました。
※1 めいぎ。高い人気と知名度を誇る芸者。
※2 にょじゅ。後宮において内侍司(ないしのつかさ)に属し、雑事に従事した下級女官。

吉野太夫に扮して(写真提供:ハヤシフォート)
吉野太夫はその美貌もさることながら、教養あふれる女性で、歌や踊り、お琴、茶道などの芸事に秀でていたそうです。また、彼女の命日を意味する「吉野(太夫)忌」は俳句で秋の季語にもなっており、敬愛される存在だったことがうかがえます。
時代祭の一週間前には、平安神宮にて「宣状祭」が行われ、参列者約500名と共に行列の無事執行を祈願した後、宣状(任命書)を受け取り、正式に吉野太夫のお役目を授かりました。
江戸婦人列はかつらを使用せず、この日のために長く伸ばした自分の髪を結ってもらい参列します(写真提供:John Norris)
当日の行列巡行は正午からですが、江戸婦人列参列者の準備は早朝から始まります。役柄によってさまざまですが、約3時間から4時間掛けて、結髪、化粧、着付けの順番で支度をします。この年、吉野太夫役の打掛(※3)が新たに補修されたと知り、新しい歴史の始まりを感じると共に、この役を演じることへの喜びがいっそう大きくなりました。支度を終え行列の出発地である京都御所に着くと、すぐにカメラに囲まれ、新聞社の取材(記事はこちら)も待っていました。
※3 うちかけ。着物の上に羽織る、裾の長い豪華な礼装。
この日はあいにくの小雨にもかかわらず、沿道は観客であふれかえっていました。これまでは台車に乗っての参加だったため、今回御所から平安神宮まで約5キロの道のりを慣れない草履で無事歩けるか少し心配でしたが、実際に行列が始まると高揚感も相まって、あっという間の2時間半でした。
伝統を誇りとし、地域全体で歴史を次世代に継承しようとする姿勢。私がそんな京都の魅力に気付いたのは、学部時代に交換留学で海外に出てからだったように思います。物事を別の視点から見ることで、今まで当たり前だと思っていたことが、実は特別な価値を持っていることに気付けるかもしれません。いろいろな文化に触れ、自国の文化を新たな視点から見つめ直す。皆さんには、大学生の間にそんな経験をたくさんしてほしいと思います。

2007年と2019年に務めた皇女和宮の女嬬役。右が筆者(写真提供:John Norris)







