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「生と死」 答えのない問いにどう向き合うか

左から、北村さん、山口さん

13の学部があり、多岐にわたる学問領域で学生を育成する早稲田大学。「こんな授業!どんなゼミ?」では、どんな授業やゼミがあり、どんな学びが得られるのかについて、実際に受講した学生が紹介します。

死生学と医療【人間科学部設置科目】

人間科学部 3年 北村 咲良(きたむら・さくら)
人間科学部 3年 山口 羽夏(やまぐち・わか)

「生き方や死に方は選べるのか」と問われたとき、あなたはどう感じるでしょうか。当たり前に選べるだろうと思う人もいれば、本当に選べるのかと疑問を抱く人もいるかもしれません。しかし、私たちは“選んでいるつもりでも、選ばされている”ことがあります。生まれた環境や状況によって、人生の選択肢が最初から大きく異なる人もいます。

誰にとっても生と死を考える上で冒頭の問いは避けられないものであり、その問いに私たちはどう向き合っていくのかを考える授業が、笹月桃子先生(人間科学学術院教授)の「死生学と医療」です。

この授業では、集中治療を受ける子どもたちや重度心身障がい者、人生の終末期を迎える人など、現代社会において極めて脆弱な立場に置かれている方々の現状と、それを取り巻く課題について、まず講義形式で学べます。笹月先生は小児科医として約30年間病院に勤務しており、その中で体験した医療現場のリアルな事象を知ることができる点が、この授業の最大の魅力です。その上で、私たちの考えを共有し、それに先生が応答する、というやりとりを続けていきます。

講義を通して先生が繰り返し強調していたのは、「事実」と「価値観」を区別して考えることでした。

「事実」と「価値」を見極める

例えば、印象に残っているのは、脳死について学んだ回です。医療ドラマの影響で、脳死=臓器提供という「人が救われる美談」とのイメージを持っていました。しかし講義では、脳死に至る条件や判定、臓器提供に至るまでの過程を丁寧に学び、問題の複雑さを知りました。特に驚いたのは、日本では「臓器提供を行う場合に限り脳死を人の死とみなす」という点で、脳死が“条件付きの死”であることです。

例:「脳死」概念をめぐる事実と価値

脳機能が全て失われているという事実と、それを“人の死”とみなすかどうかという価値観は別問題であり、それを分けて議論する姿勢が大切だと学びました。生命倫理の分野に限らず、世の中には価値付けされた事柄が多くあります。この講義を通じて、物事に向き合う際の新しい視点を得て、特にいのちについて、これまでより少しだけ解像度を上げて言葉にしてみることができるようになりました。

人は誰しも、生まれ、生き、そして死んでゆきます。だからこそ死生学は、特別な誰かではなく私たち全員に関わる分野です。「生きること」「死にゆくこと」を考えることは、大切な人のいのちを尊ぶだけでなく、自分自身が“今日をよりよく生きる”ことにもつながるかもしれません。

早大生のための学生部公式Webマガジン『早稲田ウィークリー』。授業期間中の平日は毎日更新!活躍している早大生・卒業生の紹介やサークル・ワセメシ情報などを発信しています。

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