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「選択」について

私が麦茶を飲んでいたとする。このとき、私が「麦茶を飲みたくて飲んだ」のか、本当はビールを飲みたかったのに、そこには麦茶とコーラしかなくて「仕方なく麦茶を選んだ」のか、はた目からは分からない。

現代社会において、選択できることは本来良いことである。モノでも、人でも、進路でも、就職先でも、複数の選択肢からこれぞと思うものを選ぶことで、理想的なものを手に入れることができる。個々人の意向や嗜好(しこう)を尊重するという意味において複数の選択肢が準備されていることの意義も大きい。

一方で、前述のように、周囲の状況や前後の文脈上、そのように選ばざるを得ない、ということがあることを見過ごしてはいけない。社会に既存の仕組みや価値観の中から提示された選択肢から選んだことが、即そのまま、その人の自発的/内発的な意思であるとは限らない。例えば、中絶、自死、安楽死などさまざまな苦しい選択を巡っても、特に社会的に脆弱(ぜいじゃく)な立場に置かれた人々の選択の余地はあまりに狭い。他者の、その「ままならなさ」に目を向けることこそが重要である。その人が選んだことだから、と距離を置くと、ままならなさにその人を放置することになり得る。

いま声高にうたわれる多様性の尊重とは、自己決定の尊重と同義ではない。強者が弱者に共感して承認することでもない。選択の限界を据え置いたまま「あなたの選択/決定を尊重する」のではなく、「あなたの意思/願いをかなえる選択肢を保証する」ために、社会の問題構造を解体せんとする態度が求められているのである。

(M.S.)

第1183回

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