「求めているのは特別なことではなく、ありのままを受け入れてもらうこと」
国際教養学部 4年 深瀬 スティワート(ふかせ・すてぃわーと)

早稲田キャンパスにて。大隈記念講堂をバックに
フィリピンで生まれ育ち、フィリピン人の父と日本人の母を持つ深瀬さん。LGBTQ+当事者でもあり、2022年からSNSを通して、日常生活の様子や独学で習得したダンスを発信し、多くの人から注目と共感を集めています。Instagram は23万人、TikTokは 13万人、YouTubeは4万人のフォロワー数! そんな深瀬さんに、SNSでの発信を始めたきっかけや、LGBTQ+の現状に対する思い、今後挑戦したいことなどを聞きました。
――YouTubeやTikTokで自身について発信し始めたきっかけを教えてください。
元々同じLGBTQ+当事者でドラァグクイーンの兄・深瀬スタン( 2020年国際教養学部卒)がYouTubeをやっていて、コロナ・パンデミックの頃からYouTuberとして本格的に動画投稿を始めたんです。その様子を見て、僕自身もLGBTQ+当事者として、日常生活を発信したいと思うようになりました。

スタンさんとのツーショット。2024年3月、インフルエンサーとして、韓国のブランドであるGENTLE MONSTER x TAMBURINS のオープニングイベントに招待された時の一枚。右が深瀬さん
またYouTubeだけでなく、TikTokやInstagramも開設し、さまざまな角度から自分を表現するようになりました。ドラァグクイーンに扮して配信する企画をしたり、大好きなダンスを披露したり、LGBTQ+に対する自分の考えを表明したりしています。
深瀬さんお薦めの動画。スタンさんになりきり一日を過ごす、という企画を行った
――発信によってどのような反応がありましたか?
初めの頃はLGBTQ+に対する嫌悪感をあらわにするコメントが届くことも多く、思っていた以上にショックを受けました。しかし、LGBTQ+への理解が乏しい人がまだまだいるからこそ、発信を続けることに意味があるとも考え、そういったネガティブな反応をむしろ原動力にしてきました。
今では、以前よりもさらに自信を持って活動できるようになったのですが、その姿を見続けて「成長した姿が自分の弟を見ているかのようでうれしい」とコメントしてくれる人もいます。これまでセクシュアリティーの悩みを抱えたこともあったものの、SNSでの発信を通して、ありのままの自分を受け入れてくれる人たちがいることを知り、胸が熱くなりました。自分が求めているのは特別なことではなく、ありのままを受け入れてもらうことなのだと実感しました。
こうした活動が実を結び、フォロワー数が増えたことでインフルエンサーとして認められ、LE SSERAFIMやBTSなどのアーティストが登壇するイベントで得意のダンスを披露する機会を頂くこともでき、大きなやりがいを感じています。
写真左:Calvin Klein のイベントで、スタンさん(左)と。BTSのメンバーのジョングクが登場した時には、とても驚いたそう
写真右:2023年5月、渋谷でダンスのイベントに参加した時の写真。左下が深瀬さん
――日本のLGBTQ+の現状について、どのように考えていますか?
小学生までフィリピンで過ごしたのですが、当時の現地では直接的にLGBTQ+への嫌悪感を表す人が多いと感じていました。一方で、日本では言動を通して危害を受けることはあまりないですが、当事者である僕と、距離を取ろうとしているのは伝わってくることがあります。
LGBTQ+が社会に受け入れられるためには、日本でも学校の保健の授業などで、異性同士のみでなく同性同士が好きになることも至って普通のことなのだと教えるなど、教育を変えていく必要があると考えています。LGBTQ+の当事者だって、他の人たちと同じ一人の人間です。たまたま性的指向がマイノリティーであるというだけで、それ以外は何も変わりません。多くの人がそのように捉えるようになれば、LGBTQ+当事者も胸を張って生きていける社会が築けると思います。
実際に、早稲田大学にはジェンダー・セクシュアリティ・センター(GSセンター)が設置されていてLGBTQ+について知る機会が豊富なので、周囲の友人は僕を当たり前のように受け入れてくれています。このような環境が社会全体で広がれば、僕たちのような存在が特別ではなくなるのではないかと考えています。

取材中の深瀬さんの様子
――早稲田大学国際教養学部に進学した理由と、どのようなことを学んでいるかを教えてください。
12歳まで住んでいたフィリピンでは、学校の授業は全て英語で行われていました。中学校に進学するタイミングで日本に移住し、日本語で学生生活を送りましたが、日常的に英語を使う環境に再び身を置いて勉強したいと考え、国際教養学部への進学を決めたんです。
国際教養学部では、幅広い分野を自由に学べるところにも魅力を感じ、実際に、自分の興味に合わせて歴史や地理、言語、ジェンダーなどの授業を履修しています。そこで身に付けた知識や考えは日々の動画制作にも生きており、自分の表現の幅も広げることができていると実感しています。
――今後の展望を教えてください。
一番注力していきたいのはYouTubeです。今年5月に、兄とは別に自分自身のYouTubeアカウントを開設しました。初めて自分一人で動画を撮影し、編集にも挑戦したんです。日常生活を中心に発信しており、最後まで動画を見てもらえるように効果音を付けたり文字を入れたりするといった工夫をしています。現在チャンネル登録者数が4万人ほどなので、自分と同世代の大学生にターゲットを絞った動画を投稿するなどして、大学卒業時までに10万人を突破することを目標にしています。
また、ダンスはより磨きをかけて、将来は憧れの存在であるレディー・ガガやアリアナ・グランデなどの有名人と一緒にステージで踊れたらいいなと夢見ています。もっと自分の素を出すことで、より多くの人の共感を得られる表現者を目指していきたいです。
深瀬さんお薦めのダンス動画。K-POPガールズグループであるMEOVV(ミヤオ)の『BODY』を踊っている
第911回
取材・文・撮影:早稲田ウィークリーレポーター(SJC学生スタッフ)
文化構想学部 4年 浮谷 雛梨

兄のスタンさんのアパレルブランド「byXTRA(バイエキストラ)」のブレスレットを腕に着けて
【プロフィール】
フィリピン出身。知徳高等学校卒業。洋楽やK-POPなど、幅広いジャンルの音楽を聴いており、ダンスだけでなく歌を歌うことも好きなんだそう。兄に影響され、最近筋トレを始めた。マイブームは、昔流行ったポケモンのゲームで遊ぶこと。小さい頃にハマっていたことに、大人になった今再び取り組むのが面白いのだとか。
Instagram:@stw.xv
YouTube:@stewiefukase
TikTok:@stw.xv








