保健センター 学生相談室 公認心理士・臨床心理士 並木(なみき)
「できないことは悪いこと」という思い込み
早稲田大学には、幼い頃から学業やさまざまな分野で努力をし、成功体験を積み重ねて来た学生が多く見受けられます。その影響で、「常に優秀でなければならない」「できないことは悪いことだ」という思考の癖を持つ傾向があります。また、学生生活の中で、自分より優秀だと感じる他の学生と出会ったり、SNSで華やかな学生生活を送る様子を目にしたりすることで、自分と比較し、自己肯定感が揺らぎ、言いようのない不安や孤独に押しつぶされそうになる学生も非常に多いのです。
「他の学生も悩んでいる」という視点
言うまでもないかもしれませんが、あなたが目にしている他の学生の姿は、あくまでもその学生が周りに見せようとしている姿の一側面に過ぎません。冷静なときの自分は「彼らもまた同じ学生として、不安や孤独を抱えているのだ」と頭では理解しています。しかし、やはり心がモヤモヤしてしまうのは、人間の自然な感情ともいえるでしょう。
自己肯定感を高めるためにできること
1. 等身大の自分を受け入れる
他者との比較や完璧主義を克服して自己肯定感を確立するためには、「等身大の自分を受け入れること」と「挫折体験から学ぶこと」が大切です。まずは、自分が悩んでいることや、苦しめられている思考、挫折体験などを紙に書き出し、客観的に眺めてみましょう(外在化)。
2. 自分に優しく接する
悩みや苦しみに対して、大切な親友に語り掛けるように、自分に向けて温かく優しい言葉を掛けてみてください(セルフコンパッション)。自分自身には厳しい言葉を向けがちでも、親友には、挫折を乗り越えて前へ進めるような優しい言葉を掛けられるのではないでしょうか?
3. 「自分の軸」を見つける
自分自身を客観的に見つめることは、思いの外難しいものです。そんなときは、専門家とのカウンセリングも一つの手段です。現在の自分の在り方を言葉にすることは、普段気付きにくい思考の癖や、自分自身の良さを発見する手助けになります。
多くの先輩たちもそうであったように、今の自分にできていないことを認めつつも、失敗を恐れず挑戦し続けることで、他者との比較にとらわれない、自己の経験や価値観に基づいた「自分の軸」を見いだすことができます。きっとそのときのあなたは、「完璧ではない、自分らしい自分」の魅力を受け入れられるでしょう。
悩んだときは相談を
大学は多様な価値観に触れて、自己を探求する場です。心にモヤモヤする何かを感じたときは、気軽に学生相談室を訪れてください。