保健センター 学生相談室 臨床心理士・公認心理師 篠田(しのだ)
大学生活では、いろいろな立場の人と話し合うことで、意見が対立することもあると思います。そういった場面では、自分も相手も尊重しながらコミュニケーションが取れるようになると良いですよね。そのような自他尊重のコミュニケーションを表す用語として「アサーション」という考え方があります。今回は、このアサーションを基に、気持ちの良いコミュニケーションについて考えてみたいと思います。
意見を曲げられない人と意見を表明できない人
「アサーション」では、自己表現を以下の三つのタイプに分けています。
・攻撃的(aggressive)…他の人の言い分や気持ちを無視してしまう傾向がある
・非主張的(non-assertive)…自分の考えや気持ちを表明しない、もしくは曖昧な形で表現する
・アサーティブ(assertive)…自分の意見を率直に表現しつつ、相手が同じように意見を表明することを尊重する
「あまり意見を聞いてくれない人」は、「攻撃的(aggressive)」のタイプに該当する人かもしれません。
相手は変えられない
「攻撃的(aggressive)」な自己表現の人に対しては、強くて激しい主張や、とてもテクニカルな交渉術でしか太刀打ちできないように感じるかもしれません。そして、自分がいつも折れてばかりいるというのは不公平で、相手に改めてほしいと思ってしまいますよね。しかし、人間関係において相手を直接的に変えることはできません。
つまり、相手の意見・気持ち・態度などの内面に、どれだけ強い言葉を使って迫っても、変えることはできないのです。では、どのように考えれば良いでしょうか。
客観的事実と主観的意見を分けて考える
一つのアイデアとして、相手の主観的な意見に言葉を向けるのではなく、客観的事実を整理し、その事実に対して自分の意見を述べると良いでしょう。「あなたの意見は違うと思う」ではなく、「今話し合うべきこととしてこんなことが起こっていて、あなたはこう考えている。それに対して私はこう思う」と伝えてみてください。そうすることで、自分VS相手という構図から、解決すべき事象に向かって協働する私とあなたという構図にシフトして、互いの意見を尊重したコミュニケーションにつながることがあります。
「アサーティブ」になるのはなかなか難しいことです。また場合によっては、いったんその関係性から離れた方が良いこともあります。自分だけでは対処できないと感じたときは、気軽に学生相談室に相談してくださいね。
【参考文献】
・『三訂版 アサーション・トレーニング さわやかな<自己表現のために>』平木典子(金子書房、2021年)