早稲田大学では国際性と多様性豊かな大学を目指して、ICC(異文化交流センター)やジェンダー・セクシュアリティセンター(GSセンター)などが、合わせて年間数百ものダイバーシティ関連イベントを開催しています。「どんなイベントがあるのか知らない」「何をやっているのか分からないから、参加するにはハードルが高い」と思っている人も多いのではないでしょうか? 今回は、数あるイベントの中から、特色ある学内の交流イベント参加者の声を紹介。その魅力に迫ります。また、世界中の学生が集まる早稲田大学国際寮WISHの寮生限定で行っている、「SIプログラム」参加者の声も紹介します。さまざまなバックグラウンドを持つ多くの人と交流し、自身の視野を広げることのできるダイバーシティ関連イベントに、ぜひ参加してみては?
INDEX
毎年約200ものイベントを開催! ICC
▼ 異文化理解と絆を深められる 日中韓ホンネ交流キャンプ@鴨川
▼気軽におしゃべりするだけ 英語力に自信が無くても大丈夫! English Chat Club
誰もが自由に利用できる ジェンダー・セクシュアリティセンター
▼セーファーな空間で学び、つながり作りやゲストとの交流まで!
国際色豊かな学生が集う 早稲田大学国際学生寮WISH
▼寮生限定 論理的思考力・課題発見力を培うSIプログラム
毎年約200ものイベントを開催! ICC
異文化理解と絆を深められる 日中韓ホンネ交流キャンプ@鴨川

早稲田キャンパス3号館、ICCラウンジのイベント参加者寄せ書きの前で。左からザオさんと大澤さん
それぞれの国の共通点や相違点に気付き合い、お互いの絆を深められると人気の「日中韓ホンネ交流キャンプ@鴨川」。鴨川セミナーハウスに2泊3日宿泊し、スポーツや食事、宿泊部屋で過ごす時間を通して異文化交流ができ、ディスカッションで思い切り語り合うイベントです。参加した国際コミュニケーション研究科修士課程2年のザオさんと法学部3年の大澤さんに、イベントの魅力を聞きました。
国際コミュニケーション研究科 修士課程 2年 ザオ ユル
法学部 3年 大澤 百恵(おおさわ・ももえ)

2泊3日のタイムスケジュール。参加者は、朝は海辺の散歩、夜のバーベキューなどでも交流を深めた
――イベントの中で印象に残っていることを教えてください。

「バーンガ」の身ぶり手ぶりで説明をする様子(写真提供:ICC)
ザオ:初日はアイスブレークとして実施した異文化交流を理解する目的のカードゲーム「バーンガ」をしたことが印象に残りました。複数のチームに分かれて、ゲームを行うごとに1人ずつメンバーが入れ替わっていくのですが、実はチームごとに少しずつルールが異なるんです。でもゲーム中は声を出してはいけない決まりなので、ルールが違うことに気付いても、聞くことも口で説明することもできません。お互いどこまで妥協や助け合いをしてゲームを進行するかが試されて面白かったですね。
大澤:自分を助けてくれる人に出会ってうまくいくのか、出会えず失敗し続けるのかということが、何も知らない土地に行った状況にとても似ていて、同じルールを共有する難しさを感じました。
加えて、2日目のアイランド・トークも印象的でした。アイランド・トークとは、グループ(島)ごとに分かれてそれぞれ特定のテーマについて議論するものです。日中韓のイメージや話してみたいことを各自が書き出し、その中からトークテーマを選んで話し合うのですが、「恋愛観」「エンターテインメント」「文化交流」の他、日常生活では避けられやすい「領土問題」や「歴史問題」などのトピックが選ばれました。私は「教科書問題」を選んだのですが、話し合ってみると他国と比べて日本にも自国に都合の良い記述があったことが分かり、自分の中にも無意識の偏見や思い込みがあったことに気付いたんです。
ザオ: アイランド・トークを通して、自国メディアの情報は自国にとって都合の良いバイアスがかかっているかもしれない、という視点を持つことができたのが一番良かったです。また、異なるトピックを選択して数回トークをしたのですが、1回目はセンシティブなテーマである「領土問題」を誰も選ばなかったんです。でも、2回目以降はお互いが話しやすい雰囲気ができたことで、「領土問題」を選ぶ人が増えていったのも印象的でした。
大澤:大学から鴨川へ向かう初日のバスの中で席替えをしたり、その後のスポーツで汗を流したりする中で交流が深まり、時間をかけてコミュニケーションしたからこそ、普段だと気を遣って話さないような内容にも踏み込めたのだと思います。
――ICCのイベントに参加してみたいけど勇気が出ない、そんな早大生にメッセージをお願いします。
ザオ: ICCのイベントに参加している学生は、オープンマインドで話しやすい人が多いように感じるので、お互い寄り添って話ができます。イベントに参加するちょっとした勇気さえ出せれば、良い思い出ができると思います!
大澤: 今まで、友達は同じコミュニティー内で作るという固定観念があり、多くありませんでした。ICCのイベントに参加してからは、違う経験や背景を持っている人とも交流できるのがとても新鮮で、楽しくて。コミュニケーションが苦手と思っている人こそ、イベントに参加してみてほしいです!
気軽におしゃべりするだけ 英語力に自信が無くても大丈夫! English Chat Club
「English Chat Club」は、週に1回・1カ月間集まり、おしゃべりやゲームをしながら、英会話を楽しむことができるイベントです。今回は中級レベルで参加した基幹理工学研究科修士課程1年の吉村さんに話を聞きました。また、ICCの学生スタッフ国際教養学部3年のじふさんにICCイベントの魅力についてコメントをもらいました。
基幹理工学研究科 修士課程 1年 吉村 太一(よしむら・たいち)
――参加した理由を教えてください。

好きな洋画を翻訳無しで見てみたいという思いから英語の勉強を始めた吉村さん。留学先のオーストラリアが気に入り、海外旅行にもたくさん行きたいと話す
2024年の2月から1カ月間短期留学に行きました。帰国後も英語を忘れないように継続して話す機会を作りたいと思っていた時に、友達からICCのことを教えてもらいました。有料のオンライン英会話を受けてもなかなか続かなかったのですが、English Chat Clubなら対面でしかも無料! せっかくなので参加してみようと思いました。
――イベントの雰囲気や学んだことを教えてください。
友達との日常会話と同じで、ワイワイとした雰囲気です。日本人3人と留学生3人のグループでしたが、各グループに1人ずつサポーターの学生が付いて話を振ってくれるので、話題にも困りません。お互いの近況を話したり、用意されているアクティビティではアプリゲームや人狼ゲームをしたりしました! 英語でうそをつき推理する人狼ゲームは難しかったですが、英語が分からないときは遠慮なく周りに聞けるので楽しめました。その他、海外では日本のように就活の型が一律ではないことや、働き方についてさまざまな考え方があることを雑談の中でも学ぶことができ、参加して良かったと思います。
――英語力に自信が無く、参加をためらう早大生にメッセージをお願いします。
気負わずに、ふらっと遊びに行き友達を作る感覚で参加してみてください。私も、周りは帰国生ばかりなのかな…と不安に思っていましたが、参加してみると、英語を話す機会が欲しいと思って気軽に来ている人や、留学前の準備として利用する人までさまざまでした。皆話をしたいという気持ちで参加しているイベントなので、お互いに助け合いながら楽しく過ごすことができると思います!
ICC 学生スタッフ じふさん
人はどうしても慣れ親しんだ環境に安心感を覚え、似た価値観や経験を持つ人々だけと過ごしてしまいがちです。しかし、それでは異なる視点や文化に触れる機会を逃してしまいます。ICCの異文化交流イベントは、新しい言語や文化に触れ、さまざまな背景を持つ人々と出会って交流する絶好のチャンスです。学生という貴重な成長の時期に、一緒に楽しく語り合うことで、これまでに無い経験をして自分の世界を広げてみませんか?
ICCでは、宿泊形式のイベントも今後開催予定。また、English Chat Clubの他にも、英語で話そう! イングリッシュ・アワーや、言語ランチのように申し込み不要で、ふらっと立ち寄れるイベントを数多く開催しています。詳しくは、ICCのウェブサイトで確認してください。
誰もが自由に利用できる ジェンダー・セクシュアリティセンター
セーファーな空間で学び、つながり作りやゲストとの交流まで!

戸山キャンパス(30号館) 学生会館GSセンター本館にて
ジェンダー・セクシュアリティセンター(以下、GSセンター)のイベント参加を経て学生スタッフとなり、現在イベントを開催する立場となった基幹理工学部2年のていさんにGSセンターのさまざまなイベントの魅力を聞きました。
GSセンター学生スタッフ 基幹理工学部 2年 てい
――GSセンターのイベントを知ったきっかけを教えてください。
入学前、入学手続きを行うウェブサイト上に掲載されたリンクの中からGSセンターを見つけました。元々興味があったこともあり、入学式後授業が始まるまでの期間に顔を出しました。
最初は不安もあったのですが、専門職員の方とたくさん話ができて、居心地の良さに驚いて。授業が始まってからも通うようになったのですが、受付や本の貸し出し対応をする学生スタッフが日によって代わり、それぞれ雰囲気が違うのも楽しかったです。学生スタッフやその他の利用者とお勧めの授業の情報を交換したり、1人で静かに自分の課題をしたり自由に過ごしていました。
――GSセンターでは、どんなイベントがありますか?

GSセンターのイベントでは、セーファーな空間を作るために他者のアイデンティティやバックグラウンドを決めつけない、というような「グラウンドルール」が設けられている
よく参加していたのが、お菓子を食べながら少人数でゆるく話ができる「おしゃべりラウンジ」です。参加申込者しか入室できないようになっているなどルールも徹底されているので、安心して話ができます。
他にも、ジェンダーやセクシュアリティに関する新しい知識を得られるトークイベントや、100人ほどが参加したWASEDA PRIDE PARADESにも行きました。 GSセンターのイベントは居心地が良いので、授業がたくさんあって疲れた日も癒やしをもらえるのが、私にとって一番の魅力です!
――イベントはどのように企画しているのですか?
イベントは全て学生スタッフが持つ問題意識から企画しています。準備や開催まで一貫して行っていることに、驚きながらもとてもやりがいを感じています。今後、参加者が安心できる空間を作りながら、西早稲田キャンパスに通学している自分の強みを生かした新しいイベントも開催していきたいと思っています。
――早大生にメッセージをお願いします。

学生会館のGSセンター本館と早稲田キャンパス10号館分室は、利用者と交流できるスペースと静かに読書や動画視聴ができるスペースに分かれている。写真は本館
GSセンターは、LGBTQ+の学生のためだけではなく、ジェンダーやセクシュアリティに関心のある全ての人のための場所で、何か特別な目的を持たずとも、お弁当を食べたり自分の課題をしたりと自由に過ごせます。大規模なイベント参加に不安を感じる方には、まず少人数で定期的に実施しているおしゃべりラウンジがお勧め! 顔が見えることに抵抗がある人は、おしゃべりラウンジ日英版ではハイブリッド開催をしていて、オンライン参加なら顔出し無しも選べます。参加者数の多いトークイベントや飛び込み参加OKのパレードも開催されるWASEDA LGBTQ+ ALLY WEEKSのイベントにもぜひ参加してみてください。
2024年度のWASEDA LGBTQ+ ALLY WEEKSは、11/25~12/6で開催を予定しています。詳しくは、ウェブサイトを確認してください。
国際色豊かな学生が集う 早稲田大学国際学生寮WISH
寮生限定 論理的思考力・課題発見力を培うSIプログラム
国際学生寮WISHでは、WISHの寮生で希望者のみを対象としたSIプログラム(Social Intelligence Program)を実施しています(一部、必修あり)。SIプログラムは、大学の正課で得た知識・能力を最大限に活用するためのグループワークが中心で、論理的思考力・課題発見力はもちろん、キャリア観を養いコミュニケーション力も身に付けることができます。特に長期休みには、地方や海外を訪れその地域の文化を学ぶだけでなく、その地域が抱える課題解決方法を検討する実地研修が行われます。今回は、基幹理工学部1年柴田さんに、夏休みに参加した実地研修について聞きました。
基幹理工学部 1年 柴田 梨紗子(しばた・りさこ)
柴田さん
2024年の夏に二つの実地研修に参加しました。一つ目は富士山実地研修。実際に富士山に登頂するだけでなく、環境保全の重要性を実感するために地元の高校生と一緒に青木ヶ原樹海で清掃活動を行い、オーバーツーリズムによる環境問題について学びました。また、地域の文化理解のために山梨の郷土料理であるほうとうを作りながら、少子高齢化や山梨県と静岡県との取り組みの違いなどについても学ぶことができました。二つ目は福島研修。津波の記録を巡り、原子力発電所の見学や現地の高校生と被災地をどのように復興していくのか、高校生の実際の被災後の生活について意見交換を行いました。東日本大震災による被害をいろいろな視点から直接学び、原子力発電所については特に被害にあわれた方々の苦しみを風化させてはいけないなと改めて感じました。
スチューデントダイバーシティセンターについて
早稲田大学ではスチューデントダイバーシティセンター(SDC)として、今回紹介したICCとGSセンターに加え、アクセシビリティ支援センター(ARC)と合わせて三つのオフィスで連携しています。
アクセシビリティ支援センター(ARC)とは?
修学上の合理的配慮の円滑な実施に必要な調整、教員やARCの利用学生に向けて情報の提供を行う他、障がいについての理解を広める取り組みを通じて学びへの参加(「アクセシビリティ」の確保)を支援しています。詳しい取り組みについては、こちらの動画を確認してください。
【次回フォーカス予告】10月21日(月)公開「創立記念号」