海と生きてきた街、いわき七浜の海岸線を縦断する
文化構想学部 3年 新妻 野々香(にいつま・ののか)

いわき市勿来の國魂神社夏詣にて
私のふるさと福島県は、会津、中通り、浜通りと三つの地域に分割することができ、それぞれ特徴的な気候や異なる歴史・文化を持っています。しばしば地元民はお互いの地方のことを「他県」と冗談を言うほどです。浜通りにあるいわき市は、東北のハワイとも称されるほど一年を通して過ごしやすい温暖な気候と広大な海が魅力です。私は、数分歩くだけで着いてしまうほど海が近く、防潮堤に打ち付ける波の音が毎晩響いてくる、そんな場所で育ちました。そこで今回は、私の大好きないわきについて紹介します。
太平洋に面するいわきには、全長60キロメートルにも及ぶなだらかな海岸線があり、北から順に久之浜(ひさのはま)、四倉(よつくら)、薄磯(うすいそ)、豊間(とよま)、永崎(ながさき)、小名浜(おなはま)、勿来(なこそ)と続き、総称して「いわき七浜」と呼ばれています。いわき七浜は、毎年夏に開催されるいわき最大のお祭りいわきおどりで歌い踊る民謡の歌詞にも登場するほど、私たちいわき市民にとてもなじみ深いものです。
写真左:いわき七浜の一つ、豊間の海。近くには全国的にも珍しい登れる灯台の塩屋崎灯台があります
写真右:久之浜に位置する波立海岸。初日の出の名所として知られています
このように古くから地元に根差したいわき七浜をもとに、いわき非公式ではありますが、「いわき七浜イケメンプロジェクト」という新たなコンテンツが誕生しました。七浜を擬人化したイケメンキャラクターが、各浜をPRした漫画や地元店舗とのコラボなどを通して、いわきの魅力や魚食関連の情報を発信しています。推しのキャラクターを応援しようと七浜巡りをしたり、地元旅館のコスプレイベントに参加したりと、いわきでの観光を楽しんでいる方が多いそうです。
地元コラボ店舗では、キャラクターが描かれた色紙などの展示やオリジナルグッズの販売だけでなく、PR漫画で紹介している海産物を実際に食べることもできます。豊富な栄養や新鮮さを誇るいわきの海産物は“常磐もの”と呼ばれ、メヒカリの唐揚げやアンコウ鍋、サンマのポーポー焼き(サンマをミンチにしてハンバーグのように丸めて焼いたもの)などが有名です。
写真左:いわき七浜イケメンプロジェクトとコラボした店内。久之浜のSLOW DAYS CAFEにて
写真右:SLOW DAYS CAFEでは、地元で取れるサバやメヒカリ、アンコウ、ヒラメの日替わりおさかなプレートがあります。写真は「メヒカリの唐揚げプレート」で、メヒカリは引き締まった身と程よく脂ののったうま味が癖になる味です
2011年に発生した東日本大震災で、いわきの海岸沿いは津波による甚大な被害を受けました。しかしそれから10年後、復旧・復興事業によってサイクリングロード「いわき七浜海道」が海岸線に沿って整備されました。心地良い浜風の中、いわきの美しい海岸をサイクリングで縦断することができます。

いわき七浜海道と海。四倉を南下したところから望む景色
いわき七浜海道には数多くの観光スポットがありますが、その一つ、「道の駅よつくら港」は私のお勧めスポットです。直売所では地元の食材や手作りの惣菜が販売されており、普段あまり食べられないウニの混ぜご飯のお弁当をついつい買ってしまいます。
海に近い道の駅よつくら港は、東日本大震災による津波の被害を受けました。そのため、建物の柱には各地からの応援メッセージの陶板が、広場のベンチや滑り台には地元の小学生が描いたイラストや寄せ書きのタイルが貼られていて、とてもにぎやかな印象を受けるとともに日本各地の人々の息吹を感じることもできます。

四倉漁港内にある道の駅よつくら港。2階のテラスから太平洋を一望することができます
他にも、国宝の白水阿弥陀堂、約1,300年の歴史を誇るいわき湯本温泉、いわきの海の生態系を見ることができる水族館アクアマリンふくしまなどがあり、ふらっと立ち寄るのにもゆっくり体を癒やすのにも最適なスポットとなっています。
ぜひ、いわきに来て、二次元コンテンツを楽しみながら食や自然を体感してみてください。
◎ 福島県はこんなところ ◎
東北地方の南に位置し、宮城県、山形県、茨城県、栃木県、群馬県、新潟県に接している。人口は約175万人(2024年4月1日現在)。面積は約13,783平方キロメートルで、北海道、岩手県に次ぐ全国3位の大きさ。地形は東西に広く、奥羽山脈側の西から太平洋沿岸部の東にかけて順に会津、中通り、浜通りの三地域に分けられ、その標高差からそれぞれ気候が異なる特徴を持つ。国の史跡で有名な会津若松城、福島県のシンボルである磐梯山や美しい猪苗代湖など、歴史と自然の魅力が溢れている。