2024年3月25日(月)と26日(火)の両日、早稲田アリーナにて卒業式が執り行われた。学部卒業生の多くは、2020年4月の入学とほぼ同時にキャンパスが閉鎖となり、1~2年生の時期にはほぼ全ての授業がオンラインで行われた。サークル活動や友人との交流も大きく制限され、学生によるコンパが解禁されたのは2022年9月であった。学生諸君の多くが大きな試練に直面し、さまざまな思いを抱いたことと思う。
過去においてこれだけの長期にわたり学生生活が甚大な影響を被った時期としては、学徒出陣から終戦までが挙げられる。戦局の悪化に伴い既に繰り上げ卒業による出征が行われていた1943年9月、文科系学生の徴兵猶予が撤廃され、12月には徴兵年齢が19歳に引き下げられた。これにより在学生が戦地に送られることとなり、「キャンパスに閑古鳥が鳴き始めた」(『早稲田大学百年史』第8編第1章)。学生たちはそれぞれの思いを胸に戦地に赴き、帰らぬ人となった学生もあった。
1945年8月、終戦にあたり、校友で東洋経済新報社社長兼『東洋経済新報』主幹(編集長)の石橋湛山は「更生日本の門出――前途は実に洋々たり」(1945年8月25日)と題する社説を掲げ、「あらゆる人為的制限は、過去現在の産物を禁止あるいは破壊する力を持つであろうが、人の頭脳の活動を禁止し、それより将来産れ出づる物に対して制限を加える途はない」と説いた。諸君が学生時代に抱いた思いを胸に、これからの人生を存分に生きてほしいとの願いを込めてこの言葉を在学生の諸君にも贈りたい。諸君の前途は実に洋々たり。
(M.S.)
第1159回