早稲田大学ラグビー蹴球部伝統の「赤黒ジャージ」が躍動する季節がやってきました! 今年の慶應義塾大学との「早慶戦」は11月23日(祝・水)に、明治大学との「早明戦」は12月4日(日)にそれぞれ行われます。
前編では、ラストシーズンに全てを懸ける4年生、相良昌彦主将(社会科学部4年)と前田知暉選手(社会科学部4年)がプレーヤー目線で早慶戦・早明戦の注目ポイントを語りました。後編では、早稲田ラグビーの「頭脳」としてフィールドの外からプレーの分析でチームを支える、アナリストの日暮大さん(文化構想学部4年)にインタビュー。スタンドで見るからこそ味わえるラグビーの面白さ、早慶戦・早明戦での見どころを聞きました。
今年は、早慶戦は100周年の節目、早明戦は9年ぶりの国立競技場での開催と特別づくし。ぜひスタンドで応援しましょう!
普段の試合以上にぶつかり合いが勝負の肝になる
文化構想学部 4年 日暮 大(ひぐらし・まさる)
アナリスト
早稲田実業学校高等部出身

早稲田大学上井草ラグビー場にて。早稲田大学ラグビー蹴球部のアナリストは、プレーの撮影から対戦相手の分析まで幅広く担っているそう。「自分の分析結果をもとにチームで決めた戦術が勝利につながったとき、大きなやりがいを感じます」(日暮さん)
――ラグビーならではの魅力はどんな点でしょうか?
他のスポーツにない点は、体重100kg超えの人間が走り回ってぶつかり合うこと。ぶつかり合うスポーツは他にもありますが、ラグビーでは「ボールよりも前方にいる味方にパスをしてはいけない」という独特なルールの下、「トライ」を目指して前進します。その中で走り回って全員が代わる代わるにボールを持ち、15人それぞれに異なる役割があるところがラグビーならではの特徴だと思います。
そういったぶつかり合い、駆け抜けていく爽快感は細かいルールを知らなくても楽しめますし、スタンドからだとフィールド全体を見渡せるので「あそこが空いている」というのがよく分かります。その空いているスペースにどうやってボールを運ぶか、という部分にチームカラーの違いが現れます。

日頃のデータ収集もアナリストの重要な業務。選手から個別にプレーに関する相談を受けた場合でも、有益なフィードバックができるよう準備しているという(2022年10月30日、早稲田大学上井草グラウンドでの慶應義塾大学との練習試合にて。写真提供:早稲田スポーツ新聞会)
――そのチームカラーでいうと、早稲田ラグビーの特徴、他大学との違いはどんな部分でしょうか?
早稲田ラグビーは「ボールをよく回すこと」が伝統的なスタイルです。長年のライバル・明治大学とは「横の早稲田、縦の明治」と比較されますが、早稲田はフィールドを横に広く使って、ボールを回して回して、相手を揺さぶりながら走り回る。対して明治は、「フォワード(FW)」と呼ばれる前方の選手たちが体格を武器に「スクラム」などの密集戦を有利に進め、縦にどんどん力強く突破してくるという点で対照的です。
回して走るという部分で、早稲田のラグビーは「バックス(BK)」と呼ばれる後方の選手たちがいつも注目されがちです。ただ、今年は相良や前田も含めたフォワードの選手たちも例年以上にパワーと重量が増しており、前線でも戦えるチームになっています。

2022年10月2日、対抗戦(日本体育大学戦)でトライを目指し前進する様子(写真提供:早稲田スポーツ新聞会)
特に今年は、ボールが外に出たときの再開プレーでのボールの奪い合いに自信を持っています。お互いのプライドがぶつかり合う場面ですし、押し合いでどちらが強いか、前に進めているか、という部分を注目していただければ、初心者の方にも楽しめると思います。
――来る早慶戦の相手、慶應義塾大学のラグビーの特徴、そのための対策はありますか?
慶應ラグビーの特徴は「魂のタックル」。特に早慶戦では分かりやすくタックルをどんどん仕掛けてきます。そのため、タックルされないためにどのように動くか、という部分で戦術を練っています。
カギを握るのは、ボールを有利に前に運ぶためのキッカーの存在です。どのチームも、10番(スタンドオフ[SO])か15番(フルバック[FB])の選手がキッカー担当です。今年の早稲田では、主に10番を着ける吉村紘(スポーツ科学部4年)、15番・小泉怜史(文化構想学部4年)のキックに注目してください。
写真左:2022年5月29日、慶應義塾大学との招待試合でプレーする吉村選手(この試合では12番(センター)で出場)。10番(スタンドオフ)は、司令塔を担うバックスの要(写真提供:早稲田スポーツ新聞会)
写真右:2022年10月2日、日本体育大学との対抗戦でプレーする小泉選手。15番(フルバック)はチームの最後部に位置する「最後の砦」(写真提供:早稲田スポーツ新聞会)
――他に、「注目しておくと面白い」というポジションはありますか?
ラグビーでは、2番(フッカー)、8番(ナンバーエイト)、10番(スタンドオフ)、15番(フルバック)が核になるとよくいわれます。野球でいえばキャッチャー、セカンド、ショート、センターといった、いわゆる「センターライン」の役割です。どのチームもこのセンターラインに主軸選手を選んでいるので、彼らがどれだけ目立てるか、という見方も面白いかもしれません。

2022年5月29日、慶應義塾大学との招待試合にて相手選手を振り切る相良選手(写真提供:早稲田スポーツ新聞会)
――早稲田の8番はキャプテンの相良昌彦選手です。
相良の役割は何でも屋というか、ディフェンスもするしアタックもするオールマイティーなポジションです。特にボールを持ったときに人一倍輝ける選手ですので、ぜひボールを持つシーンに注目してください。
――あらためて早慶戦・早明戦への意気込みを教えてください。
この10年、早慶戦では引き分けはあっても負けは一度もありません。今年も負けずに「強い早稲田」を見せられたらと思います。そして早明戦は、その先に見据える大学日本一のためにも負けてはいけない一戦です。ただ、僕ら4年生はこれまで、対抗戦での早明戦は1勝2敗。今年勝って五分にして卒業したいと思っています。アナリストとしていつも以上に分析に力を入れ、試合本番にチームが戦術面で優位に立てるよう貢献したいです。

高校時代まで選手としてラグビーをしていたが、けがを機に早稲田大学ラグビー蹴球部入部と同時にアナリストに転向した日暮さん。「プレーに関するさまざまな数値を分析して発見したことを、動画を作って選手に分かりやすく伝えるという、数値と映像の往復作業が、つらくもあり楽しいです」と語る
――特に今年は9年ぶりに国立競技場での早明戦です。
より注目の集まる舞台ですし、そういった戦いでは、普段の試合以上にぶつかり合いが勝負の肝になります。他のスポーツにはない、選手のプライドをかけたぶつかり合いを楽しんでいただきたいです。また、来年はW杯があるので、ラグビーがいっそう盛り上がることが予想されます。その楽しみ方を知るための「予習」としても早慶戦・早明戦はもってこいです。
スタジアムで見るラグビーはテレビ観戦とは違い、スタジアムの雰囲気や臨場感、そして熱気までも楽しめます。ぜひ、一緒にスタンドで応援して勝利を味わいましょう!

2022年10月30日、早稲田大学上井草グラウンドでの慶應義塾大学との練習試合にて(写真手前が日暮さん)。アナリストは試合中、監督やコーチとスタンドでプレーを見守る。試合中に監督から、ハーフタイムに選手に見せるため、前半のプレー動画を編集するようその場で頼まれることもあるそう(写真提供:早稲田スポーツ新聞会)
取材・文:オグマナオト(2002年第二文学部卒業)
Twitter:@oguman1977
試合スケジュール
【早慶戦】11月23日(祝・水) 14時キックオフ @秩父宮ラグビー場
【早明戦】12月4日(日) 14時キックオフ @国立競技場
▶ラグビー蹴球部Webサイト、Twitter(@waseda_rugby)、Instagram(@waseda_rugby)
▶チケット販売について(関東ラグビーフットボール協会)
▶観戦ルールとマナーについて
公認サークル「早稲田スポーツ新聞会」
1959年創立。早稲田大学体育各部44部の活躍を報道している、学生スポーツ新聞の先駆け的存在。取材・撮影・執筆・編集の全てを学生のみで行う。年12回(+号外)新聞を発行しているほか、Webサイトでは試合記事を日々更新。通常号の新聞は学内などで無料配布(早慶野球号のみ1部100円で販売)している。
Webサイト:http://wasedasports.com/
Twitter:@waseda_sports
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