総長 田中 愛治
東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で1年延期されるという特別な状況下で開催されました。開催の是非を含めて様々な意見がありましたが、出場した選手の皆さんが持てる力を出し切って人間の限界に挑戦する姿は、世界の人々に大きなプラスの力を与えたに違いありません。
今回は、早稲田大学の学生、校友からオリンピックに30人、パラリンピックに5人の代表選手が出場しました。オリンピック・パラリンピックの開会式を見ましたが、日本選手団の旗手を、オリンピックでは須﨑優衣選手が、パラリンピックでは、岩渕幸洋選手、谷真海選手が務めました。オリンピック・パラリンピック日本選手団の4人の旗手のうち3人が早稲田大学関係者であることを大変誇りに思いました。また、フィリピン選手団の旗手として渡邊聖未選手が行進していたことも印象的でした。
試合においても早稲田大学の学生、校友の活躍はすばらしいものでした。オリンピックでは、レスリングの須﨑優衣選手とフェンシング団体エペの加納虹輝選手が金メダル、バスケットボールの本橋菜子選手が銀メダルを獲得しました。入賞者も14人を数えます。また、パラリンピックでは水泳の鈴木孝幸選手が出場した全種目でメダル(金1、銀2、銅2)を獲得するという快挙を成し遂げました。しかし、メダル獲得や入賞だけが成果ではありません。個々の選手が世界のひのき舞台で限界に挑戦したこと自体が素晴らしいと思います。
今回のパンデミック下での大会開催は、答えのない問題に挑戦するということでもありました。私が、総長になってずっと学生の皆さんに言っているのは、答えのない問題に挑戦するたくましい知性を鍛えてもらいたいということです。オリンピック・パラリンピックに参加するトップレベル選手も常に答えのない問題に挑戦しているのだろうと思います。戦う相手は常に変わりますし、気象条件、自身の体調も毎日違う。セオリーどおりにはいかない中で、自身の頭脳と肉体の限界を尽くして答えのない問題の解を探していくということをなさっている。その姿に感動を覚えるのです。
その意味で、オリンピック・パラリンピックは参加された選手ばかりでなく、選手の姿にふれた学生たちにも刺激的な機会となったはずです。答えのない問題への挑戦がそこにあるからです。
早稲田大学は、東京2020大会開催決定以来、オリンピック・パラリンピック事業に取り組んできました。オリンピック・パラリンピック教育、ボランティアの活性化、各国代表チームの受け入れ、学内アスリートの支援、学外連携・文化交流等、様々な活動の記憶をレガシーとして将来につなげていきたいと考えています。文章では語りつくせないほど多くの方たちのご尽力で、大会を無事に開催していただけて本当に良かったと思っています。
皆さま、ありがとうございました。