Olympic and Paralympic Project Promotion Section早稲田大学 オリンピック・パラリンピック事業推進室

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【開催報告】女性アスリート国際シンポジウム「女性アスリートのウエイトマネジメントと食事」

2018年9月22日(土)、井深大記念ホールにて、女性アスリート国際シンポジウムが開催されました。

今回はイタリアオリンピック委員会医師 ラファエラ スパダ氏、フィギュアスケート振付師 村主章枝氏、早稲田大学スポーツ科学学術院教授 広瀬統一氏、イタリアオリンピック委員会栄養士 ロレダナ トリシ氏、早稲田大学大学院スポーツ科学研究科 本国子氏、国立スポーツ科学センタースポーツメディカルセンタースポーツ栄養学グループ研究員 近藤衣美氏がご登壇され「女性アスリートのウエイトマネジメントと食事」をテーマに、専門家としての立場から研究内容やウエイトマネジメントの重要性等について発表されました。

はじめに、早稲田大学スポーツ科学学術院教授 松岡宏高氏より、「早稲田大学では2020東京オリンピックの事前合宿地として、所沢キャンパスにてイタリアチームの受け入れを行うこととなりました。それに伴い、イタリアオリンピック委員会からラファエラ スパダ氏とロレダナ トリシ氏の2名をお招きし、本シンポジウムにてイタリアチームのウエイトマネジメントの方法や栄養サポートについてお話していただきます。またこのシンポジウムは、スポーツ庁の女性アスリートの育成・支援プロジェクトの一環でもあります」と開会の挨拶がありました。

その後、ラファエラ スパダ氏より基調講演として「イタリアのトップアスリートに対する栄養サポート」についてのご報告がありました。スパダ氏は、「イタリアスポーツ医学委員会では、選手に対してさまざまなサポート行うとともに、スポーツの専門医やコーチ、スポーツトレーナーに対してもアドバイスや情報提供を行っています。コーチやスポーツトレーナーは、単なるアドバイスではなく、目的を絞ったアドバイスができるようにならなければなりません。そのための人材育成を我々が担っています。」と述べました。また、アスリートの食事について「正しく栄養を摂取することは、世界で戦うための強い肉体をつくることに直結します。そのためにイタリアスポーツ医学委員会では、自国の食生活にとどまらず、世界各国の伝統的な食生活にも近年注目しています。なかでも、日本とイタリアは食生活において共通する点が多く、大豆などの豆類からたんぱく質をはじめとする豊富な栄養素を摂取している点は、アスリートの体づくりにも効果的です。質や量、摂取タイミングを考えながらバラエティに富んだ食事し、豊富な栄養素を十分に補給することが、体のコンディションを常に良好にするのです。」とまとめました。

つぎに、元フィギュアスケーターで、現在はフィギュアスケート振付師として活躍する村主章枝氏のトークショーが行われました。村主氏は、「良い成績をアスリートが残すためには、心技体のすべてが大切です。その中で“体”をつくるのは、やはり食事。特に女性アスリートは、出産や現役引退後の人生についても考えながら、日々食事をする必要があります。しかし、年齢が若い選手ほど、体重を減らすために食事を抜いたり偏った食事をしたり、間違った食生活を送ってしまうことがあります。その逸れてしまった道を修正し、正しい方向に導くのが、指導者やサポートする立場の人間の役割です。まずは、選手の食事への意識を変えること。正しい食事の積み重ねが、アスリートの健康につながり、そして高いレベルの試合や大会で活躍できる体づくりにもつながっていきます。」と述べました。

つづいて、コーディネーターの早稲田大学スポーツ科学学術院教授田口素子が進行し、「女性アスリートのウエイトマネジメントについて考える」をテーマに4名の先生にそれぞれ発表頂き、パネルディスカッションが行なわれました。

まず、サッカー女子日本代表のアスレティックトレーナーも務める広瀬統一氏が、「ウエイトマネジメントは、選手のコンディションを把握する上で非常に重要です。マネジメントを行う上で気をつけなければならないのは、主観的なものと客観的なものを総合して分析をするということ。体重や体脂肪はあくまで客観的な指標に過ぎません。選手の体調や睡眠時間、身体の特性など、主観的な指標も含めて総合的に判断し、問題を解決することが大切です。マネジメントをする方々には、選手一人ひとりと向き合って、話し合いを重ねながら、選手が自分で正しい食事を選択できるようにアプローチしてほしいです。」との報告がありました。

つぎに、ロレダナ トリシ氏が、「階級別に分かれている種目のアスリートは、ほかの種目の選手よりもシビアにウエイトに向き合わなければなりません。マネジメントをする立場の者は、先々の試合を見越して、食事の摂取量を設定する必要があります。だからといって、主食や主菜、副菜などの食事グループの中から何かを減らすということはしません。ジャンクフードを減らしたり、アルコール飲料を減らしたり、身体にとって摂取しなくてもよいものはなるべく除くように指示し、満遍なく栄養素を摂取できるような食事を選手たちにとってもらえるよう、適切にアプローチすることが大切です。」とまとめられました。

つづいて、公認スポーツ栄養士でもある本国子氏が、「現在の大学生の女性アスリートは主食しかとっていない選手や、糖質を全くとっていない選手など、偏った食生活を送っている選手が多く見られます。そんな選手たちに向けて、私は食事の基本形を整えることの重要性を指導しています。なかには、食事の基本形をそもそも知らない選手や、自炊する時間がない選手もいるので、できるだけ手軽に揃えられる食材を勧めたり、常に食材をストックすることを勧めたりしています。また、適切なウエイトマネジメントを行なうためには、アセスメントを継続して、現状を常に確認することが必要です。必要に応じて選手自身が医師やトレーナー、公認スポーツ栄養士といった専門家に相談することで、より適切なウエイトマネジメントやコンディショニングにつながります。」と報告されました。

そして、公認スポーツ栄養士でもある近藤衣美氏は、「アスリートの減量において、ゆっくりと時間をかけて減量を行った方が、脂肪減少量が多く、良いパフォーマンスにもつながるといわれています。しかし、試合まで時間がないために、極端な食事制限で減量を行わなければならない選手も少なくありません。女性アスリートにとって急激に体重を落とす行為は、ホルモンバランスを崩し、冷え性や月経不順などにつながります。短期間での急激な減量を避けるため、普段から目標値に近い体重を維持することが理想的です。私たちマネジメントをする立場の者は、科学的根拠に基づいた減量方法を選手とともに考えながら、目標体重と減量計画をしっかりと立て、食事の内容を調整するように指導することが求められます」と指摘されました。

その後のパネルディスカッションでは、アスリートたちの目標体重の決め方について、広瀬氏は「選手一人ひとりの体調や現状を考慮して決めています。怪我をしている選手については、怪我をする前のベストパフォーマンスができていた時期のコンディションも考慮しながら、目標体重を設定しています。」と説明されました。また、スパダ氏から「イタリアの場合は、正確に身体の組織や体格を計測し、一定の体脂肪率を保つように目標体重を設定しています。もちろん、体重自体も最低ラインは保つように心掛けています。」との話がありました。

つづいて、選手の食事のアプローチについて、広瀬氏は「ポジティブな効果とネガティブな効果の両方を正しく伝えるようにしています。自分の食事を変えることで、パフォーマンスがどう変わり、チームがどう変わるかを的確に話しています」とのお話を頂いた。また、本氏は、「食事はプライベートな部分でもあります。アスリートに寄り添い、一緒に考えることを大切にしています」と述べました。

最後に、田口氏が「数値に振り回されることなく、適切なアセスメントをしながら、アスリートのサポートを行っていくことが大切ですね。マネジメントにおいて、他国の方法や文化を知ることは、自分たちの活動を見直すきっかけにもなります。そして、私たちは自らの活動や成果を発信する立場も目指していかなければならないでしょう」と結び、閉会しました。

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