活動概要
訪問先:韓国 ソウル・仁川
テーマ:韓国における「歴史認識」のあり方を「現場」の持つリアリティーから考える
これまでネットやメディアなどで見聞きしたことだけではなく、実際の「現場」を体験してみてこそ
得られるもの・得られることがあるのだと感じられるようになる。
参加学生数: 10名
活動期間: 2024年 8月 27日(火) 〜2024 年 8 月 30 日(金)
活動報告
2019年にも実施されたことがある韓国のSIプログラム実地研修ですが、今回は現地の大学教員を本プログラムのコーディネーターにすることで学びの質保証を担保する形で企画されました。教員がアカデミックな視点から厳選した訪問場所を、学生と共に巡りながら歴史に関する深い解説を行いました。国際学生寮WISHの寮生9名とRA1名が参加し、日韓両国の教員から歴史に関するレクチャーを受けました。特に、日本で学んだ歴史と韓国の視点から語られる歴史を比較することで、寮生たちは国際的な視野を養い、歴史認識の多様性について理解を深めました。
■訪問場所
1日目:仁川開港場
2日目:西大門刑務所歴史館、ソウル歴史博物館、京城神社、国恥の道
3日目:DMZツアー、戦争博物館
4日目:振り返り、発表、自由時間
参加寮生の体験記
私が韓国研修に参加して学んだことは、歴史には多面性があり、偏見のない歴史を学ぶことは難しいということです。
3泊4日に渡る本研修では、仁川開港場、西大門刑務所歴史館、ソウル歴史博物館、北朝鮮との国境付近、戦争記念館など様々な場所を訪れ、韓国における歴史記憶へのアプローチを試みました。このプログラムでは10人の寮生と2人のレジデンスセンターの職員が参加しました。漢陽大学の佐藤太久磨先生と李俊榮先生は、研修を計画、引率してくださり、私たちは先生方の貴重な講義を交えながら、日本人と韓国人としてのそれぞれの立場で歴史の解説を聞くことができました。
訪れた場所の中で私が一番印象に残ったのは西大門刑務所歴史館です。西大門刑務所は1908年に京城監獄として建てられた建物で大日本帝国の支配に反抗した独立運動家たちが収監された場所です。私たちは当時の刑務所の再現モデルや様々な拷問器具を見ました。特に驚かされたのは柳寛順(ユ・グァンスン)という少女が16歳で獄死したことです。彼女は「韓国のジャンヌダルク」と呼ばれ、
今でも多くの人の心に残っているそうです。展示の方法からは日本帝国に対する強い嫌悪や抵抗を感じ取りました。私は重く複雑な気持ちを抱えました。しかし一方で、日本人だからこそ知っておくべき出来事だったのではないかと考えました。韓国が日本に併合された歴史について、日本の教科書には簡潔に示されていますが、統治の実態についてはほとんど記載がされていません。歴史は誰の目線で誰に向けて書かれているのか。書かれていないことは嘘なのか、記憶させたくない真実なのか。このことについて熟考するうちに、歴史を学ぶ上では発信者の立場や思想背景を確認する重要性と、書かれたことを鵜呑みにしてはいけないことを身を持って学びました。
実地研修の最大の魅力は、自分たちがその土地に訪れることができるということです。現地へ赴けばその国の言語に浸り、そこで暮らす人々の生活を覗き、文化を体験することができます。私は研修の自由時間で、広蔵市場の冷麺やホットクを食べたり、漢江公園の噴水を見たり、京福宮で韓服を着る体験などをしました。韓国の食事のマナーでは、お椀を持ち上げてはいけないというのがありますが、日本では持ち上げることが一般的なので慣れるのに苦労をし、習慣を変えることの難しさを実感しました。また他の魅力として、刑務所歴史館や国境付近など普段行く事のない場所へ連れて行ってもらえる機会が与えられるのも大きな長所だと言えます。
最後に、私はWISHに入寮してから盛んに国際交流をするようになりました。世界中から集まる異なるバックグラウンドをもつ人々と衣食住をともにするということはお互いの価値観に触れ合えるいい機会です。グローバル化が進む中で国と国の間を隔てるものは無くなってきています。この研修を通して、歴史の多面性を認識する為には、お互いの理解とそれぞれの地に足を踏み入れ、学び合うことが大事なのだと感じました。これからもいろんな国の友達の考えを受け入れて、自分の国のことを知ってもらいたいと思いました。
みなさんも是非WISHに入寮してかけがえのない世界中の仲間とともに暮らし、SIプログラムに参加して、視野を広げてみませんか。
(進藤 千歳)