
活動予定・研究目標
・主な研究目的:国家の生成・生長・衰退・分裂プロセス、ならびに国家の政治経済制度の持続可能性を決定する構造的要因を、他国との相互依存関係と政治と経済の相互連関を踏まえた上で、明らかにすること。
・具体的な研究計画:
1)国際クラブ財理論の研究:クラブ財理論を応用・発展させつつ、国家や集団社会の生成・発展と衰退・分裂を引き起こす構造条件を明らかにする。特に、複数国家の併存と、国家の領域引きを生む政治経済的要因を理論的に解明する。
2)国際政治経済の協調・統合・対立の研究:従来の政治・経済統合や国家間紛争にかかわる理論を踏まえつつ、軽視されてきた統合パートナー選択基準ならびに望ましい紛争処理制度が備えるべき条件を理論的に明らかにする。より具体的には、次のようなテーマも包含する。
・国際関係の経済分析:リアリスト、リベラリストなど国際政治の分野では対立する国家関係把握のためのアプローチを、ゲーム理論的観点から統一的枠組みの中で再構成し、かつ整理する。
・経済統合の理論:自由貿易地域や関税同盟、共通市場といったミクロ的統合の理論だけでなく、各国のマクロ経済構造条件の類似・相違性に着目したマクロ的統合理論の構築。
・公共政策の国際協調の理論:環境政策や安全保障政策といった国際的な外部効果をはらむ政策を中心とした各国間政策協調の可能性や利害対立構造についての理論的解明。
3)政治的意思決定制度の有効性と経済的自己防衛インセンティブの相互連関に関する研究:政府への信頼低下・欠如が生まれたときに、充足されない要求を市場に求めることができる場合に、政治的意思決定制度が社会全体の統合維持の機能をいかに持続可能とできるかについて、政治参加制度のあり方と経済発展の相互依存の観点から理論的に検討する。より具体的には、次のようなテーマも包含する。
・政府と民間の競合:食料品や教育の質、金融サービスなどについて社会構成員が抱くニーズを充足する財やサービスの供給について、政府と民間が競合する場面において、政府が果たすべき役割を再検討する。従来の研究との関わりで言えば、混合寡占、エコラベルといったミクロ経済理論だけでなく、金融制度の設計などマクロ経済理論の応用可能性が高いと考えられる。
・政策評価の政治経済学的研究:政策決定の有効性を担保し、かつそれを高める上で、どのような政策評価制度が事前・事後において好ましいかについての理論研究。