
2010年度の活動報告
2010年参院選にあわせて、その前後にパネル形式の全国世論調査を実施した(事前調査:2010年6月19日〜7月10日、事後調査:2010年7月18日〜8月16日)。本調査は、読売新聞世論調査部との共同研究の一貫として、本学が行ってきたコンピュータを用いた形式(Computer Assited Self-administered Interview:CASI)で行われた。選挙世論調査のスタンダードの確立と調査実施に伴う実践知の獲得を目標に、調査設計からデータ・クリーニングという一連の過程を通じて、一貫して研究協力者・院生協力者の参画の下に調査を実施した。具体的には、2007年参院選時・2009年衆院時の調査の質問項目を再検討・分析をし、より長期にわたり分析に耐えうる項目を構築することから始まり、調査票・プログラム設計、調査員インストラクションを全国で実施したことなどが挙げられる。
2011年秋に実施予定であるCASI調査に向けては、本年度から3つの点で準備に入っている。第1に、他プロジェクトの合同研究を視野に入れて、実験調査案をGLOPE II全体から公募した。選定された調査案については、2000サンプル規模のウェブ調査として2010年3月に実施される。これは、来秋のCASI調査のためのパイロット調査という位置づけである。第2に、栗山浩一氏による「実験政治経済学のためのプログラミング入門」(政治学研究科提供科目)を用意し、自らの手でCASI調査を設計・プログラミングできる能力を院生たちに身につけさせるようにした。本年度は6名の院生が登録した他、世論調査班のメンバーも適宜受講した。第3に、これまで栗山浩一氏を中心に開発してきたW-CASIシステムについて、データ化の際の問題点などを検討し、同システムをベースにしたデータベース化にも着手している。来秋のCASI調査は、春にパイロット調査を行った後に、この新しいプログラミングのシステムで行う予定である。
さらに、本年度は、世論調査データ公開の学術的重要性から、本学が過去に行って来た6つの選挙世論調査(JSS-GLOPE2003-04, GLOPE2005-07, Waseda-CASI&PAPI2007, Waseda-PAPI2009, Waseda-CASI&PAPI2009, Waseda-CASI2010)を東京大学社会科学研究所SSJDAに寄託する作業を進めている。それぞれのデータについて再チェックを行い、統一的な形式で公開できるようにしている。同時に、CASI独自の調査画面の公開作業にも着手している。CASI調査自体が世界的にも稀な調査ではあるが、その調査画面の公開は世界にも例のないものであり、今後のデータ・アーカイヴの先駆けとなりうる。
研究成果については、世論調査という手法の性質上、論文の公表までには時間がかかるが、調査結果を速報的に明らかにしていくことの重要性から、GLOPE IIの発行するニューズレターに分析結果を公表する連載を研究協力者・院生協力者が担当しており、本年度は4つの報告がなされた。また、本年度は、統計関連学会連合大会において「世論調査の技術革新:コンピュータを用いた調査とその展望」と題したセッションにおいて3つの報告を行い、CASI調査について世論調査方法論研究者や実務家に向けて広く紹介することができ、多くの反響を得た。