シン・早稲田講義


卒業生の歩んできた“未知の道”を〈○○学〉として紐解く“知の冒険”。
開催
レポート

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ひとりからみんなへ──自分を支え、仲間を動かすコミュニケーション術

講師
花田勝彦 氏
早稲田大学競走部駅伝監督
場所
早稲田大学 GCC Common Room
定員
60名
参加対象
どなたでもご参加いただけます。
※要申込・先着順。定員に達し次第募集を締め切ります。
※早稲田大学卒業生・一般の方歓迎
参加費
無料

第1回「シン・早稲田講義」<イベント開催レポート>
「世界を見つめる問いが、未来への道を照らす──花田勝彦監督が語る
自立と信頼のコミュニケーション哲学」


早稲田大学卒業生の歩んできた「未知の道」を紐解き、そこから得られる実践知を届けていく「シン・早稲田講義」。
第1回講義の講師として、早稲田大学競走部駅伝監督・花田勝彦氏をお迎えしました。
講義のテーマは「ひとりからみんなへ──自分を支え、仲間を動かすコミュニケーション術」。
自分と向き合う力、そして他者と関わる力。
仲間と切磋琢磨し、自らの未来を切り拓いていくために欠かせない言葉と信頼の真髄を学びます。

『世界を目指そう』恩師からの言葉で早稲田大学への進学を決意

もともとは野球少年だったという花田氏。中学1年生の時に肘を痛めたこともあり、学校一番の足の速さを活かせる陸上部に転部します。しかし、中学、高校とも専門の指導者がおらず、練習の参考にしたのはランニング雑誌だったと話しました。

「中学生の終わりから、ランニング雑誌の付録を使って練習日記を書くようになりました。高校の部活でも、部費で陸上競技の専門書を買ってもらい練習メニューを作成していました。自分で練習内容を考える力は、この頃に培われたのかなと思います」

そんな花田氏が憧れたのが、当時スター選手だった瀬古利彦氏です。瀬古氏は早稲田大学教育学部出身で、在学中の箱根駅伝では4年連続「花の2区」を任され、区間新記録を樹立、さらに、オリンピックには3大会連続で日本代表に選出されるなど、日本を代表するトップランナーとして活躍しました。

花田氏は、地元で開催されたびわ湖毎日マラソンで瀬古氏の走りを初めて見た時の驚きを「すごい走りでした。正確で安定しており、精密機械のようだった」と表現しました。高校時代にインターハイに出場し好成績を残した花田氏の元には、たくさんの大学からオファーが寄せられました。その中で早稲田大学を選んだ理由について聞かれると「やっぱり瀬古さんの影響は大きかったです」と、当時を振り返りました。

「ちょうど瀬古さんが競技を引退されて、私たちが大学に入学するタイミングで早稲田大学のコーチになることが決まっていました。早稲田大学から連絡をいただいた時はやっぱりうれしかったですね。ただ、経済的な事情もあり私立大学への進学は難しいと思っていたのです」

そんな花田氏の背中を押したのが、瀬古氏の言葉でした。

「瀬古さんが家に来られて、『花田君、世界を目指そう』って最初に言ってくれたのです。これには驚きました。インターハイで活躍したとはいえ、たかが高校の選手です。世界の瀬古さんから『僕を信じて一緒にやらないか』と言われて、心がグッと動きました。また、『いくつか奨学金を借りれば、経済的な面でも心配はないよ』という話もしてくださって、進学を決意することができました」

■現役学生や卒業生などで会場は満員となりました

学生を指導する立場になった花田氏はいま、どんな言葉を掛けているのでしょうか。

「やっぱり、『世界を目指そう』ですね。瀬古さんが私たちに『日本じゃなくて世界を見据えるべき。生活も4年周期のオリンピアードを意識してコンディションを整えなさい』とよく話していた気持ちが、今では理解できるんです。世界を考えるならオリンピック出場。そのためには、『箱根での活躍』『学生トップ』『日本一』という目標をクリアする必要があります。箱根のもっと先の世界を目指そうと学生たちに伝えています」

コミュニケーションで選手の向上心を引き出す

■花田勝彦 氏|早稲田大学競走部駅伝監督

大きな夢に向かっていくには、一人の時間に自分と向き合い自己成長につなげていくことが欠かせません。選手の向上心を引き出すために花田氏が心掛けるのが、問いの投げかけです。選手とレースを振り返る際には、よかった点をしっかり褒めた上で反省点にも触れて、目標を達成するにはどうしたらいいかを考えさせます。特に、ポジティブな問いかけが大切です。

「私もいろんな経験をして知識はいっぱい持っていますが、手取り足取り教えてしまうと選手たちの可能性を狭めてしまいます。選手本人が『学びたい。強くなりたい』という向上心を持って試行錯誤することが大事です。選手から『僕はこうしたい』と意見があれば、『じゃあ、それでやってみよう』と尊重します」

学生スポーツだからこそ、目標にどう向かっていくかは学生が主体となって決めるべきだと語る花田氏。一方で、チームとしての最適解を見つけていくには、監督、コーチ、主将、選手、マネージャー、トレーナーなどさまざまな役割の人同士が、お互いの専門分野の情報をやり取りしコミュニケーションを図っていくことが大切だと述べました。

「コミュニケーションは分かり合うためにやるもの。監督の立場で言うならば指導力だと思っています。仲良くすることがすべてではなく、相手の成長を願うからこそ、時には激しい議論も必要です。嫌いだからと言ってコミュニケーションを取らなくなってしまうのが一番良くありません」

陸上競技の指導を通じて目指すこと

■早稲田大学競走部での指導風景

早稲田大学競走部は、伝統を受け継ぎながら、各種目の選手とスタッフが一体となり、競技力の向上と人としての成長を追究しています。

「早稲田大学の選手たちの進路は、社会人選手として活躍する人、スタッフとして選手を支える人、大学時代には芽が出なくても何かしらを掴んで社会で活躍する人などさまざまです。私自身は、そういういろんな花を咲かせられるようなチームをつくりたい。『世界に貢献する高い志を持った学生の育成』を目標に掲げる早稲田大学だからこそ、この理想に向かっていくことは大事だと思っています」

勝つことだけが素晴らしいのではないと話す花田氏が、陸上競技の指導を通じて目指すこととは何なのかーー。

「勝敗に関わらず、自信を持って走れた選手の笑顔ってすごく良いんですよね。その姿は、周りの人たちに感動を与えてくれます。瀬古さんも『マラソンは芸術だよ』とおっしゃっていましたが、ただのスポーツとして競技に向き合うのではなく、練習や日々のプロセスも含めて走ることを芸術に昇華させていってほしい。それが選手の未来を切り拓く力になるはずです」

プロセスに“物語”を見いだし、日々の行動を積み上げていくことが未来への推進力になる。花田氏は、そんな早稲田大学らしいコミュニケーションの流儀を提示してくれました。

次回も、授業だけでは得られない人生の学びを“早稲田から”届けます。どうぞご期待ください。


講師紹介

早稲田大学競走部駅伝監督

花田勝彦 氏

1971年京都府生まれ。1994年早稲田大学人間科学部卒業。
在学中は競走部に所属し、1993年に箱根駅伝4区区間賞を獲得。
卒業後はエスビー食品株式会社に所属し、1996年のアトランタオリンピック(10000m)、1997年 のアテネ世界陸上マラソン、2000年のシドニーオリンピック(5000m・10000m)に出場。
2004年に引退後、上武大学准教授および駅伝部監督、GMOインターネットグループ陸上部監督を経て、2022年より早稲田大学競走部駅伝監督を務める。

参加者の声のご紹介
(一部抜粋)

早稲田大学 在学生 (文化構想学部・10代)

「120%の準備をする」という言葉が一番心に残りました。陸上競技に取り組む自分にも重なり、失敗を恐れず、できなかったことより“できたこと”に目を向けて前に進もうと思えました。この考え方は競技だけでなく、人とのコミュニケーションにも繋げていきたいです。

早稲田大学 在学生 (競走部・20代)

花田監督の普段は聞けない一面に触れられてよかったです。答えのない問題に向き合うときこそ、たくましい自信が不可欠だと感じました。この学びを友人にも伝え、互いに社会で活躍できる力につなげていきたいです。

社会人(50代)

花田監督の人となりが伝わり、とても興味深い講義でした。私自身、書く仕事をしている立場として、“地に足のついた言葉”の大切さや“言葉の力”をあらためて実感しました。実生活での人との関わりにも活かせるヒントになったと思います。

社会人(60代)

早稲田らしさを大切にしながらも“大学生”という枠にとどめず、一人の人として成長させようとする指導は学生たちにとって大きな力になっていると感じ、将来への期待となりました。その指導姿勢は「早稲田」の良さを超えて、普遍的な価値として多くの場で生きるものだと思います。

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