本ガイドラインでいうハラスメントとは、性別、社会的身分、人種、国籍、信条、年齢、職業、身体的特徴等の属性あるいは広く人格に関わる事項等に関する言動によって、相手方に不利益や不快感を与え、あるいはその尊厳を損なうことをいいます。
本ガイドラインは、大学における優越的地位や指導上の地位、職務上の地位、継続的関係を利用して、相手方の意に反して行われ、就学就労や教育研究環境を悪化させるハラスメント一般を取扱います。大学におけるハラスメントとしては、性的な言動によるセクシュアル・ハラスメント、勉学・教育・研究に関連する言動によるアカデミック・ハラスメント、優越的地位や職務上の地位に基づく言動によるパワー・ハラスメントなどがあります。ここで、大学に特有なこれら三つのハラスメントをより詳しく説明しておきます。なお、これらの定義を著しく厳格に解するよりは、できるかぎり広く異議申立てを認めることが肝要です。
(1)セクシュアル・ハラスメント
1)教育、研究、指導、助言、雇用、管理その他の大学内での活動への参加や就学就労の条件として、性的な要求をしたり、性的な言動を甘受させる場合、2)性的な要求や言動を拒否することや甘受することが、当該個人の成績評価や卒業判定または昇進昇給等の人事考課の基礎として利用される場合、3)性的要求や言動が、個人の職務遂行を不当に阻害し、不快感を与え、就学就労や教育研究環境を著しく害する場合を指します。
ただし、セクシュアル・ハラスメントは、身体的な接触や性暴力、視線や性的ジョーク等多様な形態を含んでおり、個々人の感じ方や微妙なニュアンスの違いもあって判断がむずかしいケースもあります。そこで、大学内で何が具体的に相手方の意に反する性的言動となり、就学就労環境を著しく害し、能力発揮の支障となり得るかをグレーゾーンも含めて、類型化しておかなければなりません。
セクシュアル・ハラスメントには、性的な言動に対する相手方の対応により、教育研究条件、労働条件に不利益を受けるもの(対価型セクシュアル・ハラスメント)と、当該性的な言動により就学就労、教育研究環境が害されるもの(環境型セクシュアル・ハラスメント)があります。
ここでいう性的な言動とは、性的な内容の発言および性的な行動を指しています。具体的には、性的な内容の発言には、性的ジョークやからかいを含め「性経験はあるか」、「初体験はいつか」等の性的な事実関係を尋ねたり、「派手に遊んでいるらしい」とか、性的な内容の噂を流したり、「胸やお尻が大きい」と言うことが含まれます。また、性的な行動には、「今晩付き合って」、「ホテルに行こう」等と性的な関係を強要したり、猥褻な写真や絵を見せたり、身体に触ること等が該当します。
なお、同性間におけるセクシュアル・ハラスメント、ストーキング行為および相手方の意に反するその他の性差別的言動も含まれます。
(2)アカデミック・ハラスメント
教員等の権威的または優越的地位にある者が、意識的であるか無意識的であるかを問わず、その優位な立場や権限を利用し、または逸脱して、その指導等を受ける者の研究意欲および研究環境を著しく阻害する結果となる、教育上不適切な言動、指導または待遇を指します。
例えば、教員間であれば、権限ある同僚等による研究妨害や昇任差別、退職勧奨など、教員と大学院生および学生の間であれば、指導教員からの退学・留年勧奨、指導拒否、指導上の差別行為、学位の取得妨害、就職上の指導差別、公平性を欠く成績評価などが考えられます。より具体的には、昇任審査、学位審査および研究指導において、特定の者を他の者と差別して、必要以上に厳しい条件を課すこと、指導を超えて人格を否定するような言動を繰り返すことなどが考えられます。
ただし、教育上の指導においては、指導のあり方が多様であり、また指導を受ける側の個々人の感じ方や微妙なニュアンスの違いもあって判断がむずかしいケースもあることは事実であり、また指導する側が無意識的に行っていることが少なくありません。しかし、教育においては、指導する者と指導を受ける者との適切なコミュニケーションが成立していることが必要であることを考えますと、指導を受ける者が指導する者に対して異議申立てをする機会を設けることが必要かつ不可欠です。
(3)パワー・ハラスメント
職務上優越的地位にある者が、意識的であるか無意識的であるかを問わず、その地位および職務上の権限を利用し、または逸脱して、その部下や同僚の就労意欲および就労環境を著しく阻害する結果をもたらす、ハラスメントとなるような不適切な言動、指導または待遇を指します。
例えば、「何もできないのだな」、「文句があるならさっさと辞めろ。お前の代わりはいくらでもいる」などの言葉によるハラスメントのみならず、多数の者がいるところで罵倒する、仲間はずれにする、悪意から意図的に昇進・昇給を妨害する、本人の嫌がる部署に意図的に配転する、談合など違法行為を強制する、職務上必要な情報を意図的に伝えないなどの職務権限等にもとづく行為を挙げることができます。
ただし、教育訓練の意味で職務上厳しい指導が行われることがありますが、これは、このパワー・ハラスメントとは区別されねばなりません。また、個々人の感じ方や微妙なニュアンスの違いもあって判断がむずかしいケースもあることは事実です。しかし、教育訓練の名のもとに、感情的な言動や憂さ晴らしとしての言動は許されてはなりませんし、主観的には教育訓練としての言動であったとしても、それが行き過ぎて本人の人格やライフスタイルなどを否定する結果となる可能性もあります。 |