Waseda Weekly早稲田ウィークリー

特集

早大生のエクストリーム夏休み<探検部:無人島サバイバル編>

体育各部のワンダーフォーゲル部と公認サークルの探検部は、他の追随を許さない本格的なアウトドア活動を行っていることで知られています。今回は、夏に向けて着々と準備を進めている2団体に、その“過激”な夏休みの過ごし方について取材しました。ワンダーフォーゲル部編と併せてご覧ください。

>>早大生のエクストリーム夏休み<ワンダーフォーゲル部:1カ月間の新潟野宿編>

探検部(公認サークル)

サークル在籍時に記した『幻獣ムベンベを追え』(集英社文庫)をきっかけに文筆活動を開始した高野秀行氏(1992年第一文学部卒)を筆頭に、作家や探検家を数多く輩出している1958年創設の名物サークル。登山、ケイビング(洞窟探検)、ツリー・クライミング(木登り)の他、未確認生命体(UMA)調査や辺境への海外遠征など、世界を舞台に多岐にわたる活動を行っている。Webサイト:http://wasedatanken.com/
5

無人島で着の身着のまま。過酷なサバイバル合宿

副幹事長
文化構想学部 2年 大越 森平(おおごし・しんぺい)

oogoshi
――探検部の今年の夏休みの予定は?

「無人島に1つだけ持って行くなら何を選ぶか」という質問がよくありますよね。去年の夏休みには、それをテーマにした強化合宿を行いました。5人の参加者が“着の身着のまま無人島に流れ着いた”という設定で、事前に打ち合わせをせずに、無人島に各自何か1つ持参し、そのアイテムと無人島にあるものだけで1週間生活をしながらいかだを作り、島を脱出するというもの。水と食糧は初日の分のみで、テントや寝袋はなし。過酷だったのですが面白かったので、今年の夏休みにも実施しようと計画中です。他にも、国内のさまざまな活動や、まだ詳細は明かせないのですが大規模な海外遠征も審議中です。

――「無人島生活」はテレビ番組の企画にもありますが、アイテムが限られているというのは探検部ならではですね。

舞台となったのは、長崎県・五島列島の「ツブラ島」という無人島です。ツブラ島へは、隣の有人島「椛島(かばしま)」から1kmあまりの海峡を渡って上陸しました。対馬海流に囲まれているため潮の流れが速く、椛島の地元の方には、そこを手こぎのゴムボートで渡るのも不可能だと言われました。上陸してから「せーの」でアイテムを見せ合ったところ、サバイバルナイフ、ナタノコ、もり、鍋、虫眼鏡と、見事ばらばらに(笑)。実はこの5つさえあれば、自然の中で基本的な生活はできるんです。ナイフはいろんなことに使えますし、ナタノコがあれば木を切っていかだが作れます。もりで魚が捕まえられます。鍋は水の煮沸消毒や煮炊きができる。虫眼鏡では火がおこせます。とはいえ、想像以上にものすごく大変でしたね。

e5ccfac8ef445d5c261aff1bf99f8683_s

浜辺の雑草は青臭くて食べられたものではなかった(イメージ)

ツブラ島を衛星写真で見ると、大きい池があります。池があればそこに流れ込む川があるだろうと。自然の中で生活をするときに一番大切なのは水の確保なので、水が入手できる場所を選んだのですが、実際に行ってみたら、池や川は干上がっていました(笑)。連日の記録的猛暑で、全部枯れてしまっていたんです。そこで海岸沿いをボートで巡ってみると滝があったので、そこまでくみに行くことで何とか水の確保はできたのですが、食糧確保が難しくて、サンゴ礁の海はもりで魚が捕ることが難しく、結局1週間で2尾のみ…。島に生えているマメ科の植物や、持参したわずかな食糧を少しずつ食べて乗り切りました。

大量の蚊、アブ…無人島生活の大敵は、“虫”

――想像するに、とても大変そうですね…。

0d3ffebc318bc0b6a0606fc0a68b277f_s

無人島での最大の敵(イメージ)

実は一番悩まされたのは、飢えや渇きよりも虫でした。夕方になると、ものすごい量の蚊が襲ってくるのです。火を付けることには成功し、虫よけのために煙が流れる風下で寝るのですが、テントも寝袋もなく体を覆うものは雨具のみという状態で、「プ~ン」という不快なあの音とともに蚊が顔を目指して一晩中襲い続けるので、全く眠れない。しかもその場所は石だらけの浜なので、起きると全身が痛み、寝ても疲れが取れるどころかさらに疲労するという…。

昼間は暑くて熱中症になってしまうので作業ができず、その間に昼寝をするんですが、昼間は蚊に代わりアブがやってきて、また眠れない。虫や暑さに耐えられなくなると海に潜るのですが、そこでも魚が捕れない…。つらかったですね。

ベースキャンプを張った浜。自然が豊かでのどかな景色に見える

寝所にしていた浜。のどかな景色に見えるが、日中は38度以上の酷暑で楽しむ余裕はない

自作のいかだで無人島を脱出。危機一髪の事態に

夜明けから9時までと、17時から22時くらいまでは脱出用のいかだを作っていました。水分が抜けて茶色くなっている竹をナタノコで山から切り出してきて「田」の字に組み、漂着物の網をほどいて作ったロープで固定させ、これまた浜にたくさん漂着していたポリタンクを浮力として結び付けました。完成したいかだが水に浮いた瞬間が一番うれしかったですね。

島に生えていた竹と漂着物を活用して作ったいかだ。パドルも自作した

いかだができたので、島から脱出しようと椛島に向けてこぎ出したのですが、島の角を曲がろうとした瞬間、強い海流で全く動かなくなってしまったんです。30分こいでも1mくらいしか動けず、流されてしまうから休むわけにはいかなくて、とても焦りました。このままだと救助要請をすることになり全国ニュースになってしまう…!と思っていたところ、幹事長が、行きに乗ってきたゴムボートにロープを結び付けて島まで100mほど泳ぎ、そのロープを岩にくくりつけて、いかだからゴムボートに乗り換えて事なきを得ました。

探検で一番怖いことは、死ぬこと

――危険なことも多々あると思いますが、どんな対策を行っているのですか?

探検部は、それぞれがやりたい企画を持ち寄る個人活動が基本ですが、参加しなくてはならない活動として、年2回の救助訓練合宿、読図訓練合宿などがあります。探検部では、創部62年の歴史の中で5人亡くなっています。探検で一番怖いことは、死ぬことです。活動に伴うリスクを減らすために、それらの合宿で、探検活動に欠かせないセルフレスキューや地形図の読み方などの技術を継承しています。また、それぞれが持ち寄った探検計画は部会で検討し、他の全部員の承認を得たものだけが実行を許可されます。準備やリスク対策は万全かを何度も審議し、実行可能な計画になるまで練り直しを繰り返すのです。

これまで行ってきた活動の計画書。表紙のサインは、部員の承認を得たという印

そのようなリスク対策をして向かった先では、思いもよらないものすごい世界を見ることができます。無人島の他にも、洞窟調査や未承認国家探訪など、自分の興味に合わせた他ではできない貴重な経験を自分で手に入れることができるのが、探検部の面白いところですね。

洞窟調査

>>早大生のエクストリーム夏休み<ワンダーフォーゲル部:1カ月間の新潟野宿編>

【次号特集予告】7月11日(月)公開 「早稲田の研究特集(仮)」

 

早大生のための学生部公式Webマガジン『早稲田ウィークリー』。授業期間中の平日はほぼ毎日更新!活躍している早大生・卒業生の紹介やサークル・ワセメシ情報などを発信しています。

Page Top
WASEDA University

早稲田大学オフィシャルサイト(https://www.waseda.jp/inst/weekly/)は、以下のWebブラウザでご覧いただくことを推奨いたします。

推奨環境以外でのご利用や、推奨環境であっても設定によっては、ご利用できない場合や正しく表示されない場合がございます。より快適にご利用いただくため、お使いのブラウザを最新版に更新してご覧ください。

このままご覧いただく方は、「このまま進む」ボタンをクリックし、次ページに進んでください。

このまま進む

対応ブラウザについて

閉じる