ケース6「ドラえもんの最終回メール」

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ドラえもんの最終回

のびたとドラえもんに別れの時が訪れます。
それは、なんともあっさりと、、、。

のび太はいつものように、宿題をせずに学校で叱られたり、はたまたジャイ
アンにいじめられたり、時にはスネ夫の自慢話を聞かされたり、未来のお嫁
さんであるはずのしずかちゃんが出来杉ととの約束を優先してしまう、など
などと、とまあ小学生にとってはそれが全ての世界であり、一番パターン化
されてますがママに叱られたのかもしれません。
とにかくいつものように、あの雲が青い空に浮かんでいた、天気のいい日で
あることは間違いないことでしょう。そんないつもの風景で、ドラえもんが
動かなくなっていた、、、。

当然のび太にはその理由は分かりません。
喋りかけたり、叩いたり、蹴ったりしっぽを引っ張ってみたりもしたでしょ
う。
なんの反応も示さないドラえもんを見てのび太はだんだん不安になってしま
います。
付き合いも長く、そして固い友情で結ばれている彼ら、そしてのび太には動
かなくなったドラえもんがどういう状態にあるのか、小学生ながらに理解す
るのです。
その晩、のび太は枕を濡らします。
ちょこんと柱を背にして座っているドラえもん、、、。

のび太は眠りにつくことが出来ませんでした。
泣きつかれて、ただぼんやりしています。

無駄と分かりつついろんな事をしました。
できうるすべてのことをやったのでしょう。
それでもなんの反応も示さないドラえもん、泣くことをやめ何かしらの反応
をただただ、黙って見続ける少年のび太。
当然ですがポケットに手を入れてみたり、スペアポケットなんてのもありま
したが動作しないのです。
そして何で今まで気がつかなかったのか、のび太は机の引き出し、そう、タ
イムマシンの存在に気がつくのです。
ろくすっぽ着替えずのび太はパジャマのまま、22世紀へとタイムマシンに乗
り込みます。
これですべてが解決するはずが、、、。
のび太はなんとかドラミちゃんに連絡を取り付けました。しかしのび太はド
ラミちゃんでもどうにもならない問題が発生していることに、この時点では
気がついていませんでした。
いえ、ドラミちゃんでさえ思いもしなかったことでしょう。
「ドラえもんが治る!」のびたはうれしかったでしょう。
せかすのび太と状況を完全には把握できないドラミちゃんはとにもかくにも
20世紀へしかしこの後に人生最大の落胆をすることになってしまうのです。
動かないお兄ちゃんを見て、ドラミちゃんはすぐにお兄ちゃんの故障の原因
が分かりました。
正確には、故障ではなく電池切れでした。
そして電池を交換する、その時ドラミちゃんはその問題に気がつきました。
予備電源がない、、、。
のび太にはなんのことか分かりません。早く早くとせがむのび太にドラミ
ちゃんは静かにのび太に伝えます。
『のび太さん、お兄ちゃんとの思い出が消えちゃってもいい?』
当然、のび太には理解できません。なんと、旧式ネコ型ロボットの耳には電
池交換時の予備電源が内蔵されており、電池交換時にデータを保持しておく
役割があったのです。そして、そうです、ドラえもんには耳がない、、、。
のび太もやっと理解しました。そして、ドラえもんとの思い出が甦ってきま
した。
初めてドラえもんにあった日、数々の未来道具、過去へ行ったり、未来に
行ったり、恐竜を育てたり、海底で遊んだり、宇宙で戦争もしました。鏡の
世界にも行きました。
どれも映画になりそうなくらいの思い出です。
ある決断を迫られます、、、。
ドラミちゃんは色々説明をしました。
ややこしい規約でのび太は理解に苦しみましたが、電池を交換することでド
ラえもん自身はのび太との思い出が消えてしまうこと、

今のままの状態ではデータは消えないこと。
ドラえもんの設計者は、設計者の意向で明かされていない(超重要極秘事項)
ので連絡して助けてもらうことは不可能であるという、これはとっても不思
議で特異な規約でありました。
ただ、修理および改造は自由であることもこの規約に記されていました。
のび太、人生最大の決断をします。

のび太はドラミちゃんにお礼をいいます。そして「ドラえもんはこのままで
いい」と一言告げるのです。
ドラミちゃんは後ろ髪ひかれる想いですが、何も言わずにタイムマシンに乗
り去っていきました。のび太、小学6年生の秋でした。
あれから数年ご、、、。

のび太の何か大きく謎めいた魅力、そしてとても力強い意思、どこか寂しげ
な目、眼鏡をさわるしぐさ、黄色のシャツと紺色の短パン、静かちゃんが惚
れるのに時間は要りませんでした。
外国留学から帰国した青年のび太は、最先端の技術を持つ企業に就職し、そ
してまた、めでたくしずかちゃんと結婚しました。
そして、それはそれはとても暖かな家庭を築いていきました。
ドラミちゃんが去ってから、のび太はドラえもんは未来に帰ったとみんなに
告げていました。

そしていつしか、だれもどらえもんのことは口にしなくなっていました。し
かし、のび太の家の押入には「どらえもん」が眠っています。
あの時のまま、、、。
のび太は技術者として今、「どらえもん」の前にいるのです。
小学生の頃、成績が悪かったのび太ですが、彼なりに必死に勉強しました。
そして、中学、高校、大学と進学し、かつ確実に力をつけていきました。
企業でも順調に、ある程度の成功をもしました。
そしてもっと権威のある大学に招かれるチャンスがあり、のび太はそれを見
事にパスしていきます。
そうです、「ドラえもん」を治したい、その一心でした。
人間はある時、突然変わるものなのです。
それがのび太にとっては「ドラえもんの電池切れだったのです」。
修理が可能であるならば、それが小学6年生ののび太の原動力となったよう
でした。
自宅の研究室にて、、。
あれからどのくらいの時間が経ったのでしょう。
しずかちゃんが研究室に呼ばれました。
ぜったに入ることを禁じていた研究室でした。
中にはいると夫であるのび太は微笑んでいました。
そして机にあるそれを見て、静かちゃんは言いました。
『ドラちゃん、、、?』
のび太は言いました。
『しずか、こっちに来てごらん、今、ドラえもんのスイッチを入れるから』
頬をつたうひとすじの涙、、、。
しずかちゃんは黙って、のび太の顔を見ています。
この瞬間のためにまさにこのためにのび太は技術者になったのでした。
なぜだか失敗の不安はありませんでした。
こんなに落ちついているのが変だと思うくらいのび太は、静かに、静かに、
そして丁寧に、何かを確認するようにスイッチを入れました。
ほんの少しの静寂の後、長い長い沈黙が繋がりました。
『のび太くん、宿題は済んだのかい?』

ドラえもんの設計者が謎であった理由が、明らかになった瞬間でもありまし
た。

あの時と同じように、空には白い雲が浮かんでいました。

おしまい

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